こんにちは、久田和弘です。今回も前回に引き続き『海街diary』の魅力について考えていきたいと思います。
(ちなみに今回でこのテーマは最終回です!)

そんな、香田家の「慌ただしい三姉妹」に新たに妹として加わったのが、この物語の主人公でもある「すず」です。
1話では、父親の再々婚相手である義理の母親がオイオイ泣き崩れているのを励ましつつ、実の父親の葬儀中だというのに気丈な態度で振る舞う「中学生らしからぬ」すずが描かれています。
周囲に弱い人間ばかりがいると、自然と責任を背負ってしまう・・・幸もすずも、どうやらそういう性質のようです。
―――しかし、幸が帰り際に言いはなった「あるひと言」がキッカケとなり、やっとすずは「普通の少女時代」を取り戻せました。

映画版『海街diary』では、すずが鎌倉での暮らしに慣れるまでの様子が丹念に描かれています。ちなみに原作は、慣れるまでの経緯よりも、その後の生活の方にフォーカスされています。こうやって書き出してみると微妙な違いを上手く説明できずもどかしいですが、原作1巻と映画を両方観て比較してみると色々と興味深いので、是非どうぞ!

そういえば、映画版で幸の恋人がとても印象深いセリフをくちにします。「すずは周りの大人に”子供時代”を奪われてしまった」と言う幸に対し、恋人が「それはさっちゃんも同じでしょ。だからすずちゃんと一緒に、ゆっくり取り戻してください」と答えるシーンです。

苦さも、辛さも、幸福も、「人生」という時間を抱え込んで、この「街」で生きていく、無限ではないからこその豊かさを、『海街diary』という作品は教えてくれるのかもしれません。

(久田和弘)