こんにちは、久田和弘です。今回も前回に引きつづき『BANANA FISH』の魅力について考えていきます!

自身の目の前で死んだ見知らぬ男が最期につぶやいた「BANANA FISH」という言葉が、最愛の兄をベトナム戦争時に廃人になるまで精神的に追い込んだ「要因」であるという事実を掴んだアッシュは、謎を追いかける決断をします。ところが、孤独な戦いだったはずが、英二を含め、マックス、伊部、ショーターと、じょじょに仲間が増えていく最中、彼の中に「大切なものを守りたい」という想いが芽生え始めます。
元々、敵に対しては冷酷で容赦がない側面があるものの、本来は野心とは無縁の優しく穏やかな少年のため、ストリートチルドレン時代も仲間から大変慕われていたようです。しかし、「奪われるだけだった人生」に英二という唯一無二の友を得たアッシュでしたが、だからこそ「失った時の悲しみ」に耐え切れず、恐怖を抱えたまま巨大な「謎」と対峙せざるを得ません。

敵にはどこまでも冷酷になれるというのに、自分が愛するものは決して傷つけたくないため、全てをひとりで抱え込み、ひとりで戦おうとする、そんなアンバランスな精神を抱えた美少年が、『BANANA FISH』の大きな魅力かもしれません。男子的にはマフィアと国との癒着や抗争といった部分に惹かれるのでしょうが、きっと女子的には「通常は抱え切れないくらい大きく重たいものをひとりで抱えることに”耐える”少年の姿」にグッとくるのでは。

アッシュと英二、ふたりの「性別を超えた」絆が、物語で魅せる「生と死」をよりいっそう輝かしく、そして暗く冷たく、読者にアンビバレンスな感情を呼び起こさせてくれる、久田和弘にとって『BANANA FISH』はそういう物語です。