こんにちは、久田和弘です。今回も前回に引きつづき、『となりの怪物くん』の魅力について考えていきます。
(ちなみに今回でこのテーマは終わりです!)

春と出会うことで、勉強一筋だった高校生活に少しずつ人が集まるようになり、また素直な夏目や思い切りのある大島の行動に突き動かされ、自分のなかの強さや弱さ、過去など、今まで蓋をしてきた感情と対峙した雫は、やがて春への恋愛感情を認識するようになります。
・・・しかし、ここでひとつ問題が。春が抱えているトラウマが、意外と重いということ。例えばこういった場合、最近の少女漫画だと「じつは王家の血筋で~」だの「右手に闇の力が封印されていて~」だの諸々の闇を抱えた少年がヒロインとメロドラマを展開するというという流れが見られる一方、「となかい」はひたすら現実的で、問題はキャラクター自身の中にしか存在しないのです。

春の場合、「周囲の期待に応えられない」というのを極端に気にしていることが、人間関係に亀裂を生じさせる原因なのかもしれません。昔から天才肌ゆえ強く期待されてきたものの、それらにちゃんと応えたいとは思いつつも、内心では拒否をしているからこそ、ついそれが「暴力」に出てしまうのでは・・・。

「壊すこと」でしか自分の心をあらわすことが出来なかった春が、他人の感情の動きにはじめて触れることで、それまでただ好意をぶつけるだけだった雫に対し「大切にしたい」と思うようになる。
「となりの怪物くん」は、そんな不器用な人たちが「恋」を通して変わる様を描いた物語です。

(久田和弘)