こんにちは!では、今回も『under the rose』の魅力を語るべく、さっそく前回に引きつづき「久田和弘的”あんだろ”登場人物紹介」を進めていきます。

次は、グレゴリーの弟、アイザックについて。アイザックもウィリアムと同様、第一部の「冬の物語」での存在感は非常に薄いです。彼が目立ちはじめるのは、第二部の「春の賛歌」になってからで、ここからはある意味「アイザックのために用意された物語」といっても過言ではありません。
「春の賛歌」では、アイザックの「末っ子」ならではの無邪気さが全面に押し出され、彼が周囲から大切にされて育ったのと同時に、他の兄弟の年不相応な態度とどうしても比較されてしまいます。そんな彼も、二部から登場する家庭教師、レイチェルの優しさと熱意、そしてライナスの覚悟を知ることで、自分で考え、感情を押し殺すことの重要性に気付きはじめます。

・・・ここまで、ロウランド家の兄弟、つまりアーサーの「4人の嫡子」を紹介してきました。次に、彼らの「産みの母親」であり、アーサーの「正妻」、アンナについて考えてみましょう。

アンナとアーサーの関係性は、物語がはじまってすぐに「冷え切っている」ことが理解できるものの、ではその温度は20年間の結婚生活の間にどれほど下がってしまったのかが、ある意味この物語の大きな鍵を握るのかもしれません。
アンナは、アーサーとほぼ会話をせず、ロウランドの状況は僅かな侍女とウィリアムを通してしか知ろうとしません。彼女は夫を忌み嫌っており、それは自分以外の女性と関係を持ったことではなく、アンナの出自と性格に大きく関係しているのですが、アーサーだけではなく、自分の子供に対しても容赦なく怒りをぶつける妻を、果たして夫はどう思っているのでしょうか?

(久田和弘)