こんにちは、久田和弘です。今日も『娘の家出』の魅力について語ります。
志村貴子氏が描く作品の特徴は、大きく分けて2通り、「初志貫徹」と「ジェンダー」だ。
初志貫徹は、たとえば「放蕩息子」の場合、主人公の「女の子になりたい」男の子は、見事にその夢を叶えている。だからといって、心までも女の子になりたいという訳ではないようで、その証拠に、中学時代から親交のある美少女と、大人になってから恋愛関係を復活させている。
ジェンダーについては、志村貴子の十八番と言ってもいいだろう。なんせ、この人は「バリバリのBL」も描く人なのだから(笑)
なので、一瞬「あぁ・・・いわゆる”そっち系”が好きな人ね”」と思わせておいて、女子同士の恋愛もちゃんと描き、かと思えば、『娘の家出』のようなオムニバス系の作品にも、ちゃんと同性のカップルを登場している。しかも、全員自身の性について悩み、人生と真っ向から向き合った上で、折り合いをつけるための努力を行っているのだから、「LGBTの人たちとノンケって、本質はそこまで変わらないのではないか」と考えるキッカケを与えてくれる。
『娘の家出』に登場する、女子グループとの仲違いにより不登校になった女の子の姉は、妹以上に酷いイジメに遭ったため引きこもってしまい、しかしある年上の女生とつき合いはじめることで、イッキに外の世界への足がかりを得る。また、しんちゃんの姉、「働き者」の加代さんは、元後輩で年下の、じつは意外とタフな女の子に助けられることで、はじめて肩の力を抜いた生き方を知る。
志村貴子氏の作品の特徴は、それこそ「自由に読んで欲しい」という、読者側に「あとは任せたよ」と、すべてを委ねてもらっているところではないだろうか?そういう「自由」に触れると、自分の人生も豊かになったような、そんな気分にさせられるところが、志村貴子作品の魅力だと、久田和弘は思うのだ。