★★★☆☆

あらすじ

実は連続殺人犯だった誰もが信頼する介護士(松山ケンイチ)と、それを追い詰める検事(長澤まさみ)が、老人介護に真っ向から向き合う話。

 

みどころ

自分の殺人を救いだと揺るがないひとりの介護士の正義と、誰もが直面する老人介護にどう向き合うかの描き方。

 

私の娘がですね、公務員で介護福祉課にいるんですよ。そこで漏れ聞く話がまたすさまじくて、糞便まみれの(おそらく垢で)真っ黒なおばあちゃんが、なぜか全身に湿布を貼って徘徊しているから何とかしてくれっていう通報で、役場が福祉士と一緒に慌てて駆けつけるらしいんですね。

娘は、介護士の方には本当に頭が上がらないって言ってましたが、そういう方の多くが、実は家族と一緒に住んでいて、家の中で完全にネグレクト状態で、通報によって発覚し、やっと施設の預かりとなるんだそうです。

でも、娘が一番闇が深いと言っていたのは、お年寄りをそこまで放置していた家族に限って、なぜか施設に入れると帰してくれと何度も迫ってくるのだそうです。

ある意味、この映画よりもトンデモ話で、事実は小説より奇なりを地で行く世界ですが、映画はここまで極端ではないです。

そういう意味では、映画の中の展開やキャラ造形なんかは、わりと想像の域を出ない定番な気がしました。

とんでもない事案を作品として扱えっていうことではなくて、なんかもっと現場の人にしか出てこないセリフや展開があっても良かったんじゃないかって思ったんですよ。

そういう意味では、ある意味平凡な作品だなって思ったので★三つです。

なんか、娘の老人介護の向き合い方ってすごくドライなんですけど、根幹で温かいんですね。わが子ながら、その姿勢がすごいなと思いました。さすが現場知ってる人は違う、みたいな。

 

でもまぁ、それはそれとして、

この作品のテーマは、本当に誰もが直面する問題で、どこででも聞くエピソードの数々だからこそ、共感しやすいんだと思うんです。

もちろん私も他人事じゃないです。もはや介護される側として。

しかもさ、柄本アキラに脳梗塞のぼけ老人の役演られたら、凄みと説得力ありすぎて、うあああって言いながら目が離せないっつーの。

つたない口調で絶え絶えに「殺してくれ」って言われたら、涙なくしては見れないっつーの。

親として、息子に罪を犯させるわけにはいかないが、自分が長く生きれば生きるほど、息子を追い詰めるこのジレンマたるや。

なんという救いのなさなんでしょうか。

松山ケンイチは自分の犯罪を「救い」だと言います。

でも、長澤まさみ(世間)は「身勝手」だとののしります。

どっちが正しいと思います?

誰かこの問いに答えをくれ思いました。

最後に長澤まさみが自身の父親のことについて、すでに刑務所にいる松山ケンイチに告白します。

この展開はよかったと思いました。

あーいやでも、自分も当事者なんですよっていう告白でしかないのかなぁ。

だからなんだっていう話ですもんね。

どこからどう切り込んでも難しい……。

 

それはそうと、松山ケンイチをリスペクトしてた福祉士のお嬢ちゃんがいきなりあのグレ方はなんなんだよ。