★★★☆☆

あらすじ

脳梗塞などで重い麻痺が残り機能しなくなった四肢を切断することで、本人自身の負担や介護者の負担を減らす処置をした医師とその医療現場の話。

 

みどころ

タイトルだけで震え上がるほど重いテーマなところ。

医師である原作者久坂部羊氏の体感から着想を得た物語なので説得力があること。

 

まず最初に言っておきたいのは、このような医療処置は実際の医療現場ではまだ起きてません。

「廃用身」という言葉も、原作者の久坂部氏が作った造語で医学用語ではないみたいです。(似た言葉はあるそう)

で、

私のタイトルで書いた監督変えて……というのは、

監督・脚本の吉田光希監督がダメだという意味ではなくて、

この映画、演出や脚本を変えれば全然違う見え方するんじゃないかと思ったからです。

全体的に暗いトーンの舞台で意味深なお芝居やセリフ運びで構成されてましたが、

演出変えれば全然違う雰囲気の作品になってたんじゃないのかな。

原作があるので、大きな流れを変えるのは難しいかもしれませんが、原作通りのあのオチはないだろうと思いました。

堂々と問題提起すればよかったのに。


私の娘夫婦が役場勤めで、今は部署変わってますが一時期福祉にいたんですね。

娘も婿も専門家ではなく役場の職員なので、一番大変な役回りは福祉の専門家のみなさんなんですが、それでもほんの少し漏れ聞く話だけで震え上がりました。

まったく世話をされないまま、部屋に閉じ込められているとか、

汚れと垢で真っ黒になったおばあちゃんが役場に駆け込んでくるとか。

でまた、そういう人に限って、なぜかご老人を施設に入れたがらないとも言ってました。

介護虐待されているご老人の話は実際、凄まじいものがあります。

でも、これだけの高齢化社会ですから、誰もが他人事じゃありません。

そもそも私だって四捨五入したら百歳ですし、つい先日手術したばかりですからそんなに先の未来でもないんですよ。

 

テーマは難しいです。

こういう処置が本当に医療現場で認められるには、相当な時間と議論が必要だろうと思います。

そして認められたところで、自分がいざ当事者になったとき、この決断ができるかどうか自信がないです。

いったん切断した四肢は元に戻りませんからね。

でも、最新のロボやAIがあればなんとかなるんでしょうか???

 

少し毛色が変わりますが、昔調べ物をしていて、不妊治療の多胎児問題にぶつかったこと思い出しました。

体外受精で受精した卵子を母体に戻す際に、双子どころか三つ子五つ子が授かってしまうというケースです。

(現在は確か、母体に戻す受精卵の数に規制があったはず)

みんな健康に生まれてきてくれればいいですが、母体も危険な上に産まれてくる子はみんな超未熟児で、重い脳性麻痺を抱えているケースが実際にあったんですね。

そこで、当時長野県にいたとある産科医が、母体に無理のない範囲で減胎手術をしたんです。

この医師も世間からめちゃくちゃ叩かれてました。

また、

上の子の病気を治すために、HLDを選んで人工授精で産まれる救世主ベビーも実際にいます。

今はデザインベビーっていうんですかね?

医療倫理の問題ですね。神の領域です。

技術だけが独り歩きしちゃうんですね。

 

私はこのお話もこのケースと同じだと思うんですよ。

解決しない医療倫理の話はまだいくらでもあります。

だからこそ、この作品の医師自殺はダメですよ。

必要以上に暗いトーンに落とし込むとか、逆に軽々しく持ち上げるとかもイヤですけどね。

エンタメだからってセンセーショナルな展開に持っていったのがこの作品のダメなところだと思いました。

答えなんか出ないのはわかってますが、エンタメだからできることもあると思うんですよ。

逃げずにもう少し頑張ってほしかった。