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あらすじ
「海街diary」のすずが置き去りにしてきた義理の弟・和樹が二十歳になったときのお話で、小さな温泉町を舞台に織りなす人間模様。
マンガのレビューです。
今日、ふっと、そういえば、吉田秋生の新作チェックしてなかったなぁと思ってチェックしたら、すでに三巻まで発売されておりましたよ。
本屋に通っている頃はそんなことなかったのになぁ。
私が勤めていた本屋も潰れちゃいました。
そして、めちゃくちゃ悩んだ末に、電子で買いました。
普段は、読み捨て漫画を電子で買うことはあったんですが、
大好きな漫画家さんの新作を電子でガッツリ買ったのは初めてです。
でもまぁ、お陰で拡大縮小自由自在。
すげえ、読みやすい。
目が悪いのですごく助かりました。
でも、ネットじゃなければ電子書籍買えないんですよねえ。
本屋がないから新刊本のチェックが遅れるのに、
本屋じゃ買えない本があるってすごい時代です。
それはそれとして、今回のテーマは吉田秋生の描く「弱い女」。
これってあれですよあれ、
善意の疫病神。
無神経で想像力の欠落した価値観を平気で人に押し付け、
それに文句を唱えようものなら、「あなたのためを思って言ったのに!」と、
こちらを非難しながら、自分こそが最大の被害者であるという立場を決して決して手放さない女たち。
これが男だと、自分のやったことは棚に上げて「俺はこんなにも頑張ったのに」って成果を誉めろ言う人いますね。
言ってるだけで鳥肌立つんですが、
いませんか?こういう人。
もう無敵ですよね。
この作中の和樹の母がそうですし、
ヒロインの妙ちゃんの母もそうです。
別マンガですが、「凪のお暇」の主人公凪の母がそうですし、
萩尾望都の描く多くの母親がそうです。
ついにで言えば、私の母もそうでした。
自分が清廉潔白で無垢な被害者でいるためには、事実を平気で自分に都合よく捻じ曲げ、わが子の頭も平気で踏みつけます。
最近、広告でよく見るざまあマンガで、
主人公をやたらといじめる意地悪な悪役令嬢とか見かけますが、
あんなのよりこちらの方が何万倍もリアルなんですけどねえ。
あんなあからさまな意地悪するやつって私は見たことがないし、
いたとしたら、周囲の人に嫌われまくりの異常者だと思いますけどね。
人ってね、誰だって自分のことを嫌な人間だとは思いたくないものです。
確信犯で人に意地悪できる人なんてそうそういません。
でも、善意と信じて平気でえげつないことする人は多いです。とても。
こういう人と闘うのしんどいです。
この漫画の若者が闘っているのは、そういう善意の疫病神とどう付き合うのかという話でした。
少し自分の話になりますが、最近職場で、他部署の社員に
「あなたはいつも幸せそうだねえ。少しは分けてほしいよ」と言われまして、
ふっつーにガチギレしちゃいました。
気づくと、
「あらそう見えます? 八年前に娘亡くしてるんですが、それじゃまだ不幸足りないですかね? まだ足りなければ他にもまだドン引きするレベルのがいくつかありますけど聞きます?」って言ってましたね。
なんかね、私がいつもへらへらしてるからだと思うんですが
幸せそうだねえと言われて、今までの辛いことばーっと思い出しちゃったんですよ。
じゃあ、私の人生代わってくれよ思いましたね。
四捨五入したら百歳のおばはん相手に、同年代のオッサンが吐くセリフじゃねえだろ思いましたね。
この年になりゃ色々あるよ誰だって。
若いからって苦労してないとは限らないしね。
そんなこともわかんないぐらい、平穏無事にその年まで生きてきたのかおまえはって思ったんですよねえ。
この作品の登場人物もそれぞれです。
いろんな不幸抱えて生きています。
「海街diary」の四姉妹もみんな色々です。
この作品で描かれているのは、派手な事件やトラブルは殆ど起きないし、
小さな温泉街で登場人物はそれぞれの日常を生きています。
それを読みながら、なんか上記のむかつく社員のこと思い出したんですよね。
それは、吉田秋生が描き出す人物が、それだけリアルで地に足の着いた人としてきちんと描かれているからだと思いました。
この世界にしっかり引き込まれながら読んでいました。
というわけで、他人にうかつに「幸せそうだね」なんて言っちゃいかんというお話でした。
あれ、違うな。