20 | hon ~コメディな小説をば~

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【清田正和】
190cm、90kg。右投げ右打ち。大阪府出身。36歳。
『球界の番長』と呼ばれる人気プロ野球選手。
高校時代は怪物と言われたスラッガー。甲子園出場はなし。
意中の球団からのドラフト指名ではなかったが、パ・リーグ球団に入団、プロの道へ進む。
1年目でレギュラー三塁手となり新人王に。

以後10年間で本塁打王4回に輝き、リーグ優勝3回に貢献。
FA取得後は、念願のセ・リーグ在京球団に移籍。当時最高額の6年20億円の大型契約を結ぶ。
移籍後1年目は本塁打王に輝きリーグ優勝に貢献するも日本一は逃す。
2年目オフに左膝じん帯損傷。以後は怪我に悩まされ主だった活躍はできず、6年契約終了年、シーズン終了を待たず戦力外通告を受ける。
パ・リーグ在阪球団に拾われる形で、2年2億円で移籍。
移籍後はDHで活躍するも、怪我の再発によりリーグ途中で手術、リハビリ。
移籍2年目は進退をかけ、1軍復帰を目指しリハビリに励む――。


岸本さんが調べた資料には、こう書いてあった。
他にも年度別の成績表なども見せてもらった。
「この人は、なかなかすごいの?」
「ああ、すごいな」
「ふーん」
スポーツ音痴の三井さんには、清田のすごさは伝わっていないようだ。


清田の魅力と言えば、ホームランだ。
その豪快なフルスイングで観客を魅了し、エースピッチャーとの真っ向勝負で数々の名場面を生んだ。
その美しい放物線を描くホームランから、ファンの間では『浪花のホームランアーティスト』と名高い。
そして、生粋の大阪人である清田は、キャラクターも一際目立ち、話題に事欠かなかった。
数々の豪快なエピソードは、もはや都市伝説のようで、テレビやインタビューでも引っ張りだこであった。
怪我で満足な働きができなくても、誰もが気になる存在。それが清田正和だ。


「他にも、こんな資料があるんだ」
岸本さんがもうひとつ資料を取り出した。
そこには、得点圏打率や、長打率、決勝打点、犠飛成功率、盗塁成功率、併殺率、失策率、など一般的な選手成績には表記されていない事細かな成績が書かれてあった。
「便利なもんだよインターネットは。世の中にはこんなことまで調べてるファンがいるんだよ」
「暇なんだな」
三井さんが身も蓋もない一言でぶった切る。三井さんに掛かれば、ノーベル賞を取った学者の研究もきっと「暇なんだな」で片付けられるだろう。それぐらい自分の興味ないことには無関心な人だ。関心があることと言えばプロレスぐらいか。
「清田がすごいのはわかったけど、これと今回の件と関係あるんですか?」僕は素朴な疑問を岸本さんへぶつけた。
「あぁ」と、岸本さんは簡単に答えながら資料の何箇所かに丸をつけだした。
「このへんの数字が参考になるかな」
丸がつけられたのは、三振、四球、得点圏打率、失策率、そしてDHという言葉。
「まだもうちょっと調べないとだめだがな」
僕にはこの丸の意味がわからなかったが、不安はなかった。

むしろ今回の『ミイラ』が、なぜ、あの清田正和なのか?そこが知りたかった。
「でも、何で清田なんですか?」
「実は偶然、2週間ほど前に出会わせたんだよ、清田と」
「どこで?」
「北新地の飲み屋でな」
「くぅー、やっぱ医者は違うねえ、新地なんかに飲みに行っちゃってさ。俺らなんかもっぱら十三だよ、十三。なぁ、大沢」
三井さんが僕に同意を求めてきた。確かに北新地には行かないが、三井さんと一緒にされるのは何かいやだ。

「世界の盗塁王の福本豊だっけ?あれに似てるらしい大将のいる焼き鳥屋だよ。なぁ、大沢」

ホントどうでもいい。そんな情報。

「なぁ?なぁ、なぁ?」

「・・・」

「なぁ?なぁ、なぁ?なぁ、なぁ、なぁ、なぁ?」
「・・・はい」
しかも同意するまで許してくれない。
「付き合いだよ」岸本さんは軽く受け流す。
「でもやっぱ、プロ野球選手と、やしきたかじんは新地に飲みに行くんだな」と、なぜか納得気な三井さん。どんな常識だ。
「で、清田とは接触したんですか?」
「いや。たまたま隣の席だったから聞き耳立ててたら、いいこと聞けてな。どうやら清田は相当なギャンブル好きみたいなんだよ」
「そこで、われらが岸本様がひらめいた!と」
「まあな」
三井さんがおどけて言うのに対し、岸本さんはクールに返す。
ウーロンハイを傾けながら、岸本さんが続けて「9割の確率で取れるだろう」と言った。
僕は岸本さんが言う『取れる』という言葉を聞く度に鳥肌が立つ。いつものことだ。
『取れる』とは『落とせる』ということ。
つまり、これから僕たちが『清田正和を落とす』ということ。
すなわち、清田正和から大金をブン取るってことだ。