駅からバスに乗ろうとした。
バスが来た。
私の前に、同じくらいの歳のおばさん、
乗り込む前に「〇〇寺、行きますか?」と聞く。
運転手さん、「行きますよ」と応えた。
私も、乗り慣れない(引っ越してから乗るようになった)バスなので、
「ヤオコー行きますか?」と聞いた。
「行きますよ」の声に、乗り込むと、
〇〇寺を聞いたおばさんが、
「えっ?!ヤオコー?ヤオコーあるんですか?」と私に聞き
「ええ、〇〇寺の先にありますよ」と応えた。
するとおばさん
「じゃ、どこにあるのか、あなた教えて!
ね、教えてね!」と言う。
え、今日?と言うと、「今日じゃなくてもいいから!」、、って、
あの、
私、あなたと今はじめて行き合ったんですけど、、と
心の中で呟いたが、なんだか「良い人そう」なおばさんに
バスのシートに座ってから、
「ヤオコーは、〇〇寺の先なのよ。
バスだと2つ停留所分くらいあるけど、
お天気の良い昼間なら、お散歩ついでに歩いていけるわよ」と
足は大丈夫そうなおばさんに言った。
なんでも、引っ越して来たばかりで、(〇〇寺のそばに)
ヤオコーがあればなぁと思っていたから、近くにヤオコーがあって嬉しいらしい。
そして
「今日は悪いことがあって、ガッカリしていたんだけど、
あなたに会えて、ヤオコーのことも聞けて良かった!」と言う。
「えっ?悪いことって?」聞いちゃ悪いかな?と思いながら聞いてしまった。
「あのね、お財布落としちゃったのよ!」
「〇〇ランドのお風呂に行ってきたんだけど、
〇〇ランドの送迎バスで駅まで来て気付いたらお財布がないの!」
「それで、今交番に行って届けて来たの。
〇〇ランドにも電話してみたんだけど、ないっていうの」
「見つかったら連絡しますって言われたんだけど、
引っ越したばかりで、電話番号も言えないのよ」
財布には、お金のカードは入ってないはずだし、
お金もたいして入ってないんだけど、
「マイナカードと、診察券が入ってる。
再発行がめんどくさい」と。
「えっ?じゃあバス代は?」と聞くと
フワフワ素材の丸い小銭入れみたいなのをチャラチャラ振って、
「これ!これがあったから!」と笑う。
なんだか、最悪の状況のはずなのに、
ほのぼのする。
そして「あー、、よかった!あなたと会えて!」と何度も言う。
お財布忘れていなかったら、このバスには乗らなかったみたい。
「いやなことあったけど、あなたと話ができて、
なんだかスッキリしちゃった!」と笑顔。
「あなた、こんなふうに人の話をちゃんと聞いてくれて、いい人ねえ!」と。
「やだ、だって良い歳して、
ひとの話くらいちゃんと聞かなきゃ、、」と私。
「良い歳って、あなたおいくつ?」
ワタシ「今年77になります」と、心の中では
きっと、このおばさん私より年下だわ、と思いながら言った。
「えっ?そんな!60代と思った!」と、、お世辞?
「いやだわ、じゃあマスクはずせないわ!」と言いながら
「おいくつ?」と聞き返した。
なんと、「私?89才!」と言う。
え、え、
じゃあ、おうちで待ってるという「ご主人は?」と聞くと
「95才」と言う。
びっくり!
本当に若い!
この歳になって、ご主人と2人で引っ越ししてきたらしい。
詳しいことは聞かなかったが、
「年取って引っ越しは本当に大変だった」と言っていた。
私は「私の方が今日はお会いして元気いただいたわ!」と言い、
「長生きしてくださいね!」とつい言ってしまった。
すると「はい!長生きしますよ!」と元気な声で。
決して、汚らしい年寄りではなかったけれど、
と言って、金ピカにおしゃれして上から目線の婆さんではなかった。
本当に、良い性格が滲み出ている普通のおばさんだった。
60代って褒められたから言うわけじゃないが。
そうして喋っているうちに〇〇寺に着いた。
お互いに名前も聞かず、次また会えるかどうかわからないけど、
「じゃあ、さようなら!またいつか会えるといいですね!」と言い合って、
おばさんはバスから降りるため、運転手さんの横に立った。
すると、私たちの喋り声が聞こえていたのだろう、運転手さんが
おばさんに「あのー、ヤオコーはここから2停留所です。
歩いても行けますが、急な坂道になっていますから
歩く時は転ばないように気をつけてくださいね」と
後ろに降りる人が並ぶのに、丁寧に言っていた。
なんだか、おばさんじゃないけど
今日のこのバス、出会ったおばさんも、運転手さんも、
本当に良い人で、
みんながこんなに優しかったら、世の中平和になるのになあ、、とつくづく思った。
バスを降りたおばさん、窓の外から私を見ながら手を振ってくれていた。
私なら財布落としたあと、こんなに明るくいられるかしら?
素敵な出会いだった。
ベネズエラに乗り込んで、大統領(いくら悪者の大統領でも)を捕まえるなんてことする
トランプに、あのおばさんと運転手さんの爪のアカでも煎じて飲ませたい。
いつも行く珈琲屋の帰り道のバスでのひと時でした。
