wowowプラスで、夕方から「松本清張」三昧。
「鬼畜」「疑惑」「砂の器」。
原作、小説は三作品とも、映画化前に読んでいる。
なんと言っても、映画になっても
原作がしっかりしているためか、
本人が「映画にするにしても、自分がしっかりチェックして、
原作に沿わない物は出さない」と言ったせいか、
どの作品も素晴らしい出来だ。
もう何度も観ているのに、また新たな涙を誘う部分があったりして、
数少ない日本映画の秀作の中で、松本清張作品が占める部分は多い。
また、配役が豪華で、
松本清張作品以外に出演の時は「大根」の役者でも、
監督が良いのか、実に演技も素晴らしい。
まず「鬼畜」、、
"涙を誘う"と書いたが、この人の作品は
誰が可哀想とか、誰が憎たらしいとか、
そういう「涙」でなく、
こんな「事件」を起こす羽目になってしまう、
「運命」が、、そこにいる人々の力ではどうにもならない流れが
"哀しい"と思い、ただ静かに涙が出るのを止めることが出来なくなる。
松本清張小説は、たとえ短編であっても、殺人事件を起こす犯人の「ただどうにもならずに」
「気付いたら大変なことを起こしていた」という、
日常に潜む、誰にでも起こり得るようなことが描かれているので、
ミステリー小説としては、自分と、かけ離れた遠い世界の出来事ではなく、
だから余計に
「怖い」と言ったら、これほど「怖い」ことはないと思うのだ。
気の小さい、人の良い夫と
小さな印刷屋で、その、人の良い夫を支えて真っ黒になって働く女房、
この妻には、子ができない。
ある日「あなたの子よ」と言って、3人の子供を連れたアバズレ風な女が来て
3人の子を置いて去る。
この3人の子に、「鬼畜」のような妻と、
それを止められず、自分も「鬼畜」に落ちる夫。
鬼畜でないのは、3人の子供だけのような気がしてくる。
鬼畜でない「子供」の純粋さ。
「こんなところに生まれてきた子供」
「父の鬼畜を知りつつ、ボクはこの人を知りませんと言う子供」
大人が思う以上に、子供はなんでもわかっている。
ただ、真っ白な柔らかい心を持つ、
「鬼畜」とは無縁の子供に
大人が色をつけて行くのだと思う。
鬼畜の大人になってしまう前は、
ひとを思いやることができ、多少の辛いことは我慢をする純粋な人間なのだ。
「お父さん!」と言ってしがみついたら、
父が、自分を殺そうとした「鬼畜」であると
周囲にわかってしまう。
だから「知りません」と言う。
涙をこぼして、父と引き離される子供。
人間って、なんなのだろう、、そこまで考えてしまう良い作品だ。
岩下志麻、緒方拳、好演。
疑惑、、
これは実際にあった「別府3億円保険金殺人事件」がモデル。
荒木虎美の事件で、逮捕される前から、テレビなどを賑わせ、
誰の目から見ても、怪しく、妻と子供達を乗せた車を海に沈め、自分だけ助かった話だ。
死刑判決を上告するも、被告「荒木」は、上告中に亡くなったので、
最終的に判決は覆らなかった。
この映画は、何度もリメイクされているが、
桃井かおりと岩下志麻の(最初の作品)が良い。
桃井かおりがうまい。
この話も、「欲」に生きる女(本当の事件は男だが、
この作品では「女」になっている)の
世間に信用されない、色眼鏡で見られているどうしようもない女なのに
なぜか、世の中の「敵」のなかで、
自分を強く持ち、なんならインテリの女弁護士を
「あんたみたいな嫌な女になりたくない!
アタシはアタシのやり方で生きていく!」と言ったりする。
なんだか、言いようのない「哀しみ」にとらわれる。
長くなったので、
「砂の器」の話はまた明日にします。
「砂の器」は、私が(読んだ&観た)すべての小説&映画の中で、
一番好きな作品です。
根気がなくなって、針仕事も長続きせず、
良く考えてみれば、頭痛の元だから
針仕事「嫌い」なのだが、頭痛と相談して
少しずつ、端切れ布で髪を結わく「シュシュ」
を作っている。
驚くほど仕上がりが遅い。

