「3匹のこぶた」のお話では、
3番目の弟が建てたレンガの家が一番丈夫だった。
物語でなくとも、レンガと聞けばずっしり重たくて硬くて丈夫というイメージが浮かぶ。
しかし。
私が住んでいたホーチミン市界隈ではでは木造の家というのは見かけなかった。
建設中の家やビル、どこを見てもレンガ造りだ。
しかし、レンガと言ってもレンガ色の直方体の中は空洞だ。
軽くて扱いやすく、すぐ欠ける。
私の住んでいた長屋も、そのあとに引っ越した家も、
釘を打ちたいからとちょっとほじればすぐに穴があくし、
壁のひび割れや穴からどんどん蟻が出てくるのは、
レンガの空洞が蟻の巣になっているからだろう。
貧しい地域では、トタンだけの家、壁も屋根もヤシの葉でできた家などもあったから、
それらに比べればずっとずっと丈夫には違いないけれど。
ある日、トイレを拝借しに街の中心部近くにある五つ星ホテルに入った。
ゴージャスなつくり、壁はすべて大理石だろうか。
汚い格好でゴメンナサイと思いながら、トイレの個室に入り、
ふと足元に目をやると、壁の大理石が欠けて穴が開いている。
大理石って欠けるんだ?とよく見ると、そこには見慣れたあの薄オレンジ色のレンガ。
穴の断面はレンガの上に5mmほどの大理石が張ってあるものだった。
職場の12階建てのビルもおそらくそのレンガだし、
高層ビルの建設があちこちで始まっていたが、
どこもきっとあのスカスカのレンガだ。
大きな橋もレンガだろうか。
ベトナムは地震がほとんどない国なので、耐震などの発想も必要なかったのだろう。
数年前に地下鉄が通ったと聞いた。
地下の天井もあのレンガなのではないかと思うと、地下に入る勇気が持てない。


