たとえば、フォーの店に入ると。

席に着くと、冷えたおしぼりがままごとのようなプラスチックの皿に乗せられて出される。

ベトナムのおしぼりは必ずと言っていいほど香水の香り付きだ。

頼んだフォーのどんぶりが置かれる。

前回でも述べた通り食べ放題のフレッシュハーブの山盛りが置かれ、

レモンと唐辛子モリモリの皿も出てくる。

汁に浸して食べるプレーンな揚げパンも出てきて、

食べ終わる頃にはバナナの葉に包まれた餅菓子も置かれる。

 

わあ、至れり尽くせり、こんなについてるんだ!

と思うなかれ。

なんてサービスのいい店なんだろうと気をよくして、

お金を払おうとすると、

テーブルに会計に来たおばちゃんはブツブツと数字をつぶやきながら計算している模様、

そしてフォーの値段よりも高い金額を請求される。

えっ、なんで?ぼったくり?

すると

「あんた、おしぼりも使ったしデザートもたべたでしょうが」

と言われる。

先に言ってよね~。

 

だいたいどこもそうだった。

おしぼりは別会計。

テーブルに置かれている食べ物も、ハーブや調味料以外は別会計。

もちろんそんな説明はないし、金額が書かれているわけでもないが、

暗黙のルールというやつらしい。

 

さて、食後にコーヒー飲みたいな、と思う。

でもここはフォー屋さん。

コーヒーは置いてない。

すると同席しているベトナム人が叫ぶ。

「アイスコーヒーふたつ!」

すると店先にいた店員さんが道路に向かって叫ぶ。

「アイスコーヒーふたつ!」

しばらくすると向かいのカフェからアイスコーヒーを持ったおじさんが

バイクの群れをすいーっと渡ってやってきて私の前にコーヒーを置いてくれる。

ベトナムでは、持ち込み飲食は当たり前なのだ。

屋台で買ったバインミーをカフェで食べる人、

ごはん屋さんに隣の店からチェー(デザート)を持ってきてもらう人、

よくある光景だった。

 

そういえばどこの道端でも食べ物を運んでいる人を見かける。

お店は基本的にドアがなく、前面には壁もない。

どこもオープンスペースだからできること。

お互い様、助け合いの意識がどこに行っても自然にあることが、

新鮮であり心地よかった。