例えばふたりで食堂やカフェに行くと、
カウンター席なら隣に、テーブル席なら向かい合わせで座るのが一般的だろうか。
これが、ベトナムではお互いの関係によって座る位置が変わる。
テーブル席でも親密な関係ならば必ず並んで座るのが鉄則だ。
夫婦、恋人、親友あたりは必ず並んで座り、
向かい合って座ることがあるなら、ただならぬ問題が起きていることは間違いない。
一緒に食事をしたりお茶をしたりすることでお互いの距離が縮まるというのは、
きっと、世界共通の感覚なのだろうか。
向かい合って座ることを想定していない店も多く、
丸いテーブルで必ず隣同士に座れるパターン、
もしくは奥行きの短いテーブルにイスが二つ並ぶ、
といったところが多かったように思う。
はじめは、店内で皆同じ方向を向いて座っていることに違和感を感じていたが、
何年も暮らせばその感覚は当たり前のものとなる。
向かい合って座るのは、大学の先生であったり、職場の先輩であったり、
誤解を生むとややこしいことになりそうな異性くらいのものだった。
帰国してまもなく、仲のいい親戚のお姉ちゃんと一緒にカフェに行ったのだが、
すごく混んでいて相席になり、私たちは並んで座った。
そこまではよかったのだけど、
時間が経つにつれお客さんもまばらになり、相席の方たちもいなくなった。
するとお姉ちゃんは
「私向かいに移るね」
と言ってスルッと向かい側に座ってしまったのだ。
えっ、機嫌損ねた?
いやいや、そうじゃない、これが普通だったよね日本では。
と頭ではわかっていても、ものすごく距離を感じてしまい
失恋にも似たショックを受けている自分をどうすることもできず、
今ショックを受けていることとそのいきさつを話したらゲラゲラ笑われた。
少しは気持ちも軽くなったが、
結局しばらくは誰との間にも距離を感じて寂しい日々を送る羽目に(笑)
感覚として身についたものを手放すのはなかなか簡単ではなかった。
