高校時代、夏目漱石から芥川龍之介、そこから堀辰雄に辿り着いた。

昨年から何かと堀辰雄に再度目が行った。野村英夫さん作品を購入してから再度燃え上がった。最近では「風立ちぬ」の復刻版を読んでいる。昭和13年発刊、神奈川近代文学館?の限定版を元に複製したもの。この手の複製本は何冊かは持っているが、近代文学館?の経営を相当助けているらしい。多分、数十年前「ほるぷ」から復刻出版されたものの一冊で、私としても重宝している。元本は買える訳も無く、内容は変更なしの旧かな使い・旧漢字を使用。私たちの年代ではまだ旧漢字は何とか読める、分からなければ緩和辞典に当たる。発刊当時のままが読めるのが良い。

復刻版だから、細かい処まで再現してある。「購入後はこの外箱は処分してくださるようお願いします」なんて、堀辰雄さんの意向迄そのまま残してある。(当然、私は外箱は捨てはしないが。)

 この堀辰雄の選んだ「風立ちぬ いざ生きめやも」が誤訳では、とか堀辰雄は国文科卒なのに国文を知らないとの厳しい批評さえある。まあ、こんな細かい事は気にしないし、堀辰雄さんの意向は尊重しよう。恋人を病で亡くし、そんな時、「さて 私は生きていかねば」の感覚に捕らわれたに違いない。これが堀辰雄さんが当時思ったこと。本来は反語的な「生きて行こうか、どうしようか(いや、やめようか?)」が原文の意味らしいが、私はこの堀辰雄の選択がぴったり合うと思う。

 がそんな時、「風立ちぬ」のアニメが出た。一度テレビで再放送を見たが、主人公は小説家のはずが何故かゼロ戦の設計者・堀越さんになって居たり、一式陸攻の設計者で友人の、本庄さんが出たり、やりたい放題!まさに本来の「風立ちぬ」への侮辱。何ともやるせない。今回はちょっとね!

それでも、京都府の「浄瑠璃寺」へ行き、住職さんに当時の女学生のその後を聴いたり、軽井沢の「堀辰雄記念館」にも行った。終の住処がそのまま記念館となっている。離れた場所に建てた「書庫」は随筆にある通り、使われないまま其処にある。

 

 

外箱は処分して下さい、との著者の要請

「この箱は単に書物の汚損を防ぐための、、、」と。

 

   限定500部の表紙

 

内部に掲げられた、ポール・バレリーの詩

裏に「風立ちぬ」の表題が透けて見える。

私には、Le v ent  l' eve  風が起こり

a faut tenter de vivre  生きて行かねば

この程度しか理解が出来ない。

                        

復刻版の、奥付。

日本近代文学館、小田切 進 さんの懐かしい名前が。

 

限定版には「著者印」が無い!らしい。

限定500部のNo.231を復刻したものらしい。

昭和13年当時は売価 2円?