愛すべきクラブはホームで久々の勝利をおさめた。
しかも劇的だった。
先制をゆるした場面はとにかく前半で追いつくことを祈り、それはすばらしいゴールで叶った。
後半、相手のオウンゴールでリードし、さぁこれからと言う場面で新加入のFWを送り込んだ。
勢いそのまま追加点を狙っていると一発レッドでの退場があった。
10人になってから、コマオの体感時間は1分が100秒にも200秒にも感じられ、防戦一方、ただひたすら試合が終わるのを願った。
しかし、それは叶わなかった。
愛すべきクラブは相手の攻撃に耐え続け、さらに相手選手に一発レッドでの退場があったが、後半ロスタイムのコーナーキックで同点に追いつかれた。
やはり、ロスタイムとセットプレーにはもっとも注意が必要であると思い知らされる。
コマオはゴール裏に居ながらもはや声が出せなくなっていたが、着用していたレプリカユニフォームのエンブレムをギュッと握っていた。
前半、18歳の至宝のゴールで追いついた場面で、コマオはエンブレムを握りながら応援していたからである。
何か起こるという予感はまったくなかったが、一生のお願いだから何か起こってくれと祈っていた。
するとどうだろう、愛すべきクラブは相手を真っ二つにするような楔のパスを縦横に繋ぎ、最後はやはりあの男がネットを揺らした。
コマオらは嫁、友人、知人など関係なく、その場に居合わせた多くの人とハイタッチや抱擁で喜びを分かち合った。
勝利ひとつはこんなにも大変であると、喜びが教えてくれた。
これだから、コマオは愛すべきクラブのフットボール観戦をやめることが出来ない。