コマオは休日を利用し、車で2時間ほどの場所にある温泉を訪ねた。
午前の10時過ぎに寝床を出発し、途中、道の駅でねぎスープを飲み、高速道路の出口を間違えたりしながら目的地周辺に辿り着く。
すでにお昼を過ぎていたのでお昼ご飯を食べようと飲食店を探すが見つからない。
国道を道なりに進むと何となく美味しそうな店構えをした焼肉屋さんを発見する。
昨夜、相方は珍しく肉を食いたいとおっしゃっていたので焼肉は都合が良い。
コマオはせっかくだし少々高くてもいいと思い、その暖簾をくぐった。
国道の交通量から想像はできたが、お昼時のお客さんはおらずコマオと相方のみであった。
少々高い焼肉屋さんを貸切にしたコマオらはタン、上ロース、バラ、牛刺し、クッパをそれぞれ一人前ずつ注文して分け分けした。
どれもが美味しかったが、取り分け牛刺しは群を抜いて美味しかった。
「今まで食べた牛刺しの中で、一番の牛刺しでした」
相方はご満悦である。
腹に栄養を蓄えたコマオらはさらに道なりに温泉を目指す。
焼肉屋さんから10分ほどの山奥に秘湯があった。
夏場をシャワー浴でやり過ごすコマオらは本当に久しぶりに湯船に浸かった。
もちろん別々に。
身体を洗ったコマオは真っ先に露天風呂へと向かう。
平日の昼間から好天の中、露天風呂に浸かる。
何と言う贅沢だろうとコマオは思う。
コマオ以外の入湯者は中高年の方が3~4名程度であり、非常にゆったりとしていた。
露天風呂に浸かるコマオはすることもないので空を見ていた。
雨除けか日除けわからないが屋根があり、辺りは山の木々に囲まれているため空は狭い。
狭い空からは途切れ途切れに雲が移動していた。
雲はとても速く現れては消えて行った。
湯あたりを避けて半身浴していたコマオは、その湯に濡れた身体にあたる風と雲を動かす風が逆に吹いていることを知る。
ふと目のやり場を移すとオニヤンマの夫婦が産卵場所を求めて露天風呂を訪ねていた。
しかし、その水が湯であると知るとどちらからともなく立ち去った。
また、周囲の砂利では若いトカゲが散歩をしていた。
日差しはまだまだ強いが涼しい土地柄と風の強さもあり、トカゲに日陰を求める様子は見られなかった。
空に目をやると大きな鳥が狭い空を旋回していた。
コマオにとっては名前も分からない大きな鳥は獲物を求めているのか、縄張りを監視しているのか、旋回を繰り返していた。
ぼうっとしていたコマオはふっと我に返り、備え付けの時計を確認する。
相方との約束の14時前になっていたので露天風呂を後にした。
帰宅前にお城の跡があったのでコマオらは立ち寄ってみる。
結構な距離の山登りをしたコマオらはせっかく風呂に浸かったのに汗をかいていた。
しかし、城跡から見下ろす町並みや田畑に満足し、車を寝床へと走らせた。