コマオと相方は夏をゆるりと過ごしている。
人でごった返したサンチカですら、誰一人とぶつかる事なく二人は子どものようにすり抜けていく。
あまり軽やかに駆けていくので、誰も二人に気づいていない。
後に残るのは互いのシャツの色が残像である。
残像は現れては消える。
決して全てが順調ではないが、コマオらは今年の夏を楽しんでいた。
先日、コマオらは大丸元町の二階、かるてぃえにて証を受け取った。
コマオが今までに買った物の中で車の次に高級な品物であったが、相方の笑顔が間違いではないと証明してくれた。
12月まで待てないのは分かっていたが、帰宅するなり包みを解き、証を装着しあう。
ずっと着けていたい気持ちを堪え、相方は証をケースに戻す。
その後、レイトショーを利用して近場の映画館に『Hachi』を観に行った。
到着するなり気付いたのだが、この映画館、『Hachi』は吹替えしか上映していなかった。
下調べは相方に任せていた。
相方は地道な作業をおろそかにする癖がある。
あえて言うなら、上映開始の時間すら大幅に間違っていた。
しかし、コマオは冷静に事態を受け入れる。
付き合いたてなら怒っていたかもしれない。
こういった相方の失態は十分起こりうることとして、コマオの脳内で処理される。
でも、少しはカチンときている。
逆もまたしかりである。
人と接することで成長の速度は変わるのではないか。
仮に相方がいなければ、コマオは未だに小さいことで文句を言うお馬鹿さんであったはずだ。
コマオは成長したいと強く願う。
そして、いつの日か、Hachiのような犬がコマオを主人として選んでくれれば良い。