コマオは黒髪にこだわりを持っていた。
学生時代に浮かれ気分で茶髪にしたものの、すぐ髪の毛の伸びることで経済的に維持が困難になり、ここ何年も髪の毛に色を入れることはしていない。
他人、特に年配の方からよく思われたいという裏心もあり、せめて髪の毛だけでも黒く、真面目な雰囲気を出しておこうと決めていた。
先日、コマオは相方と万博にて約束を交わしていた。
今年のレプリカユニフォームを二人分購入する代わりに、相方の希望するコマオの茶髪計画を実施するという内容である。
コマオはこの約束をあまり重視していなかった。
なんやかんやと理由をつけ、逃げに逃げ切るつもりでいた。
しかし、相方は本気でいた。
寝床には相方が使用し損ねたブリーチが1本残っていた。
かれこれ、数ヶ月前から置いてある。
相方は時としてもったいない精神の塊を発揮する。
当然、このブリーチを捨てるのはもったいないと思われる。
そんな時にコマオと上記の約束を交わしたものだから、ブリーチを使う用意があった。
コマオは知っている。
ここで相方との約束を反故にすれば、コマオらには数日から数週間の無言状態が続く。
今までの経験から、コマオは知っていた。
しなくても良い約束をしたコマオにも非がある。
コマオは昨晩、数年ぶりに頭が明るくなった。
薬液の塗布から5分と経つか経たないかのうちに洗い流したので、他者から見ればほんのり色が着いた程度である。
しかし、コマオにとっては大変な衝撃であり、もう二度とバカな約束はしないと胸中で反芻した。