影二つ |  とある尼さんの誰にも言わないお話
今夜の寒行は、
日中の吹雪が
嘘のように晴れ、
星が輝いた下で
務めてまいりました。




途中、風が強く吹き、
網代笠が
瞼に強く押し付けられたせいで
コンタクトがズレてしまい、
夜道を歩いて行くのが
困難に…。

止むなく、
寒行托鉢ルート上の自宅に立ち寄り、
玄関先の鏡で
コンタクトを直すことにしました。



持鈴(じれい)を鳴らし
玄関先で経を読みながら
インターホンを鳴らし待ちましたが、
母はなかなか出て来ません。



二度目のピンポンで
漸く玄関まで出て
何か興奮した様子で
鍵を開けた母の第一声が


『ふわ~!!!お父さん来たと思ったっきゃあ~***』



…?




…!

…どうやら
ワタシの声が
父の声に聞こえた様です
(笑)






『おまえの声、お父さんの声とソックリだったんだけもの~***』




…まてまて。



普段の声は
そう低く感じない
私の声ですが、

経を読むと
地声がかなり低くなり、
知らない人が聞くと
男性だと思われることも…

実際、葬儀の後に
喪主家の親戚などに、
『おっさま(お坊さんのこと)、
声だけ聞くと男みたいだし、
見てみるどちちゃこい(小さい=身長152)し、
どっちだがわがんね(判らない)け~ハハハ♪』

…てなコトを、
何回か言われてますし、
母の勘違いは
解らなくもないですが~。

…にしても、
自分の夫と娘の声を間違えるなんて…
(息子ならいざ知らず)

ねえ?



思わず
『お父さんが
迎えに来たと思った
とか言わないよね~
(ボケたんじゃないだろねっ)?』
と言っちゃったワタシでしたが…





そうは
言いつつも、



母に父と間違えられた事が
何だか無性に嬉しくて、

ズレたコンタクトを直し
寒行を再開した
ワタシの足どりは
妙に軽やかなんでした。。。