王妃からのありがたい提案に、ウンスはさらに婚儀が待ち遠しくなった。

以前の自分が今の自分を見たらどんなふうに思うだろうか。

あり得ないとか、信じられないとか、きっとすぐには受け入れることなどできないだろう。

ウンスは過去の自分を思い返して「ふっ」と笑いをこぼした。

 

その様子を不思議そうに見つめてくる王妃に、ウンスは「ちょっと昔を思い出して……」と口を開いた。

 

「私、天界にいた時は結婚する気はなかったんです。開業して、ひとりで生きて行こうって思ってて。それなのにまさか自分が一人の男性(ひと)を好きになって、その人と結婚することになるなんて思ってもみなかった。人って変われば変わるもんだなって思ったんです。あの人がいない世界なんて今では考えられない」
「そのお気持ちよくわかります。私もずっと王様を想うておりましたゆえ、王様が居らぬ世界など考えられませぬ」

 

そうだった。
この王妃も生まれた国や家よりも愛する人のそばで生きることを選び、その身一つで嫁いできたのだ。

王妃の王へ対する深い愛をウンスは改めて実感した。

そこまで二人を結びつけるものは何なのだろうか?

二人が想い合っている夫婦であることは知っているが、二人がどうやって出会い、想い合うようになったのかは知らない。


「王妃様。もしよければ王様と王妃様の話を聞かせてくださいませんか?」

 

王妃は少し逡巡した後、昔を回想するように話し始めた。

 

「王様と出会うた日のことは今でも鮮明に覚えております。あれは、私が11の時。満月が浮かぶ秋の晩でした。夜市を歩いていた私は乳母とはぐれ、何者かに攫われたことがありました。山車に押し込まれ、このまま薄汚れた者たちに辱めを受け家の名に泥を塗るくらいならばと、死をも覚悟しました。その時、外で荒々しい物音がして山車が止まりました。何が起きているのかわからず恐怖に震えていると、山車の中に誰かの手が伸びてきて私の腕を引っ張り外に出してくれたのです。その人は私の縄を解いた後、優しく手を握ってくれました。どこの誰ともわからぬ人なのに、この人ならば信じられるとそう思い、私はその手に導かれるまま走り出しました。夢中で走る中、満月の光に照らされその人の顔が見えました。その手の持ち主は私と同じような背丈の少年だったのです」
「まさか、その人が王様だったんですか?」
「はい」
「素敵!」
「その時から私は一日たりとも王様を忘れたことはありませぬ。次に王様とお会いしたのは私が16の時。私は一目で気づきましたが、王様は……私をまったく覚えておりませんでした。そしてちょうどその頃、父から嫁ぎ先が決まったと告げられました。相手は元の貴族。私は絶望しました。王様以外の男に手を握られ、衣服の下の肌を見せるなど考えるのも悍ましく、到底耐えられるものではありませんでした。気がどうにかなりそうで自ら命を絶とうと池に入ったこともありました」
「そんな……」
「王様以外の人と連れ添うなど私には考えらず、私は父に何度も訴えました。王様でなければ嫌だと、王様以外の男に嫁ぐくらいならば命を絶つと。頑なな私に折れた父が王様との縁談を整えてくれ、王様の元へ嫁ぐことができました。ですが、それからも王様と私はすれ違うばかり。己の気持ちを抑えてきた時が長すぎて、それを伝える方法も、言葉も、わからなくなっておりました。とても辛く、悲しく、想いを伝えられないことがもどかしくありました。王様が高麗の王となられてからも辛き事も悲しき事もありましたが、共に戦うていく中で心を通わせることができました。ゆえに今は幸せです」
「ええ、王様は王妃様のことを深く想っています!でもお二人はこれからもっと幸せにならなくちゃ」
「王様と心を通わせることができたのは医仙のおかげです」
「私は何も……」
「天界の情報を教えてくれました。王様が私を想うてくれていると。ゆえに私は王様をそれまで以上に信じることができました。そして『愛』という素敵な言葉も教えてくれました」
「王様にお伝えしましたか?」
「まだです。王様に慶事があった折にお伝えすると約束したのです。大護軍が北方の地を奪還し、医仙も戻られ、お二人の婚儀も決まりましたゆえ、時機を見てお伝えしようと思います」
「ラブラブですね」
「らぶ、らぶ……?」
「お互いに深く愛し合ってるってことです。すごく仲良しってこと」

「はい」

 

ウンスの言葉に、微かに頬を染め照れたような仕草を見せながらも王妃はしっかりと頷いた。
そこへ、まるでタイミングを見計らったように女官が王様の訪れを告げ来た。

「ではお邪魔虫は退散しますね」

 

ウンスはそう言うと、そそくさと王妃の居所を後にした。

 

 

 

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今回は王妃様と王様のお話しも絡めてみました~

二人の出会いは小説で詳しく描かれていますが、この二人もなかなかじれったいロマンスでしたね(笑)

てか王様は人材に恵まれてるよね。王妃様にヨンに医仙であるウンスに。

何か持ってるよね。だから王様になれたんだろうけど。ってなぜか王様語りになってしまった(^^;)