全然手加減してくれなかった……
 

重たい身体を引きずりなんとか出仕したウンス。

そんなウンスの姿は傍目から見ても疲弊しているのがわかるようで、チャン侍医をはじめトギや他の医員までもがウンスの体調を案じて休むように声をかけてくれた。

ありがたいことだが、原因が原因なだけにウンスは大丈夫としか言いようがない。

 

お手柔らかにってお願いしたのに!

あの人ったらしれっと「手加減はしました」なんて!!

日頃から身体を鍛えている武士の体力と一般女性の体力を一緒にしないでほしいわ。

これでも同年代の女性よりも体力はある方だと思うわよ?

特にこの1年は毎日あの丘を行ったり来たりだったもの。

それでも体力気力ともに漲ってるあの人と比べたら高が知れてるわ!

ま、まあ、あの人に強く求められると、ずるずると受け入れてしまい、すぐにわけが判らなくされてしまう私にも問題ではあるかもしれないけど。

それにしたって何事にも限度と言う物があるわ。

……………………幸せだったけど。

 

薬の調合をしながら、昨夜のことを思い出し、憤慨したり顔を赤らめたりと、ウンスが百面相をしていると、王妃の遣いの女官が訪ねてきた。

何かあったのだろうか?とチャン侍医に断わりを入れ、ウンスはその女官に付いて行く。

 

女官に連れて来られたのは王妃の居所である坤成殿ではなかった。

ウンスが初めて訪れる場所、その中の一番大きな殿舎へと案内される。

殿舎の中には、色鮮やかな生地が並び、各部屋にはお針子と見られる宮女たちが何やら縫物をしているようだった。

ウンスはしげしげと興味深げな様子で建物の中を見回しながら、女官の後を付いて歩く。

こちらでございます、と案内された部屋には王妃様とチェ尚宮、そして数人の女官がウンスを待っていた。

 

「医仙、お待ちしておりました」

「王妃様、ここは……?」

「ここは針房、宮中で針仕事を受け持つ部署にございます。昨日伺うた天界の婚礼衣装の仕立てのためにお呼び立て致しました」


王妃は針房と繍房の尚宮を含む数名の女官を呼んでいた。

王妃に紹介された女官たちが頭を下げるのを見て、ウンスも慌てて頭を下げた。

 

「王妃様より天界の婚礼衣装の仕立てについて伺いました。つきましては天界の婚礼衣装について詳しく教えていただきたくございます」

「ええ、はい。でも専門ではないので作りがどうなってるかまではよくわからないんですけど……」

「はい、医仙様のご存知の範囲で結構でございます」

 

ウンスは王妃に話したのと同じように下手なイラストを使ってドレスの概要を説明し、自身が知り得る限りのドレスの構造やデザインなどを伝えた。

 

「ドレスなるものの概ねのことはわかりました。それではまずはどのような形にするのか形状を決めましょう。医仙様は何かご希望はございますか?」
「私、あまりヒラヒラとかフリフリは好きじゃなくて……」
「では、裾はあまり膨らませないように致しましょう。医仙様は背丈もおありですからそちらの方が優美に見えるかと存じます」

 

「じゃあそれでお願います」

「首回りはいかがいたしましょうか?」

 

そうねぇ、とウンスは考えた。

ビスチェとかオフショルダーが可愛いと思うけど、あまり肌の露出はよくないわよね?
腕や脚をちょっと出しただけでもすごい顔するのに、肩とか胸元を丸出しにしたら……何を考えているのです?って、ものすごい剣幕で怒られそうだわ。

それどころか人前に出させてもらえなさそう。
お目出度い席で言い争いなんてしたくないし。

と、ウンスはいろいろ思考を巡らしながら、最終的に首回りは首までを覆う形で、肩から袖の部分は透け感のある生地で製作してもらうこと決めた。

デザインが決まったら次は生地選びだ。
王妃から事前に知らせを受けていたのか、白の絹生地が幾種類も用意されていた。
皇宮に納められていることだけあって、どれも最高級の絹であることがわかる。
ウンスは色味や肌触りをひとつひとつ確かめた後、さほど迷うことなくその中から一つの生地を選んだ。
純白で真珠のような優美な光沢と滑らかな艶にしなやかな肌触り。
ウンスは一目見たときからこの生地だと直感で決めていた。

そして最後に採寸に移った。

失礼します、と上着を脱がされ、肌着に1枚になった状態で測定が行われる。

メジャーなどない時代、測定は紐で身体の長さを測り、鋏で切っていくという作業の繰り返し。

背丈、肩幅、腕の長さや腕回り、首回り、バスト、腰回り、スカート丈など体のあらゆる箇所の長さを測られた。

 

こうして、とんとん拍子に事が進み、すぐさま仕立てに取り掛かることになった。

 

「ではこれより仕立てに入らせていただきます。不明な点がありましたら医仙様にお尋ねすることになるやもしれませぬが」

「もちろんです。私も時間があればこちらに顔を出すようにしますね」

「ありがとうございます」

「婚礼衣装を仕立ててもらうのは私の方です。こちらこそよろしくお願いします」

勢いよく頭を下げるウンスに女官たちは困惑したように顔を見合わせた。
それもそのはず。

高貴な身分の方が頭を下げることなど滅多にない。

医仙と称される方が一介の女官に頭を下げたことに驚いたのだ。
その困惑からいち早く立ち直った針房の尚宮だった。


「大層なお役目を仕りまして恐悦至極にございます。力の限り、務めさせていただきます」

 

尚宮が深くお辞儀をすると、他の女官も尚宮に倣った。

 

 

 

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***

 

おまけの小話。

 

女官たちから見たウンスのお話。

 

「初めて、医仙様をお近くで拝見したけど素敵な人だったわね~」

「ええ、すごく美しい人だったわね!」

「それに見た?あの肌の白さ!」

「見たわ!本当に羨ましいくらい白かったわよね」

「それにどことなく色っぽいというか……他の女人とは違った雰囲気があったわよね?」

「貴女もそう思った?実は私もそう思ったの」

「大護軍様がお見初めになる気持ちもわかるわ」
「大護軍様も美丈夫な方だし、お二人が並んだらさぞお綺麗でしょうね」
「さっき、医仙様の採寸をした時に医仙様のお肌が見えたんだけど、首筋とか胸元、あと手首にも所々に赤い虫刺されみたいなものがあったの」
「虫?この時期に?」
「きっとアレよ。アレが噂に聞く接吻の痕に違いないわ」
「ええ?!」
「しっ、声が大きいわよ」
「本当に?」
「間違いないわ!思わず想像しちゃったわよ。大護軍様が医仙様に接吻してる様を」
「というかとは、もうお二人は男女の仲なのかしら?」
「「(//∇//)」」

そんな二人の女官のやりとりを、柱の影から聞いている人物がいた。
宮中にチェ尚宮ありと言われたその人。
(まったく!あの色ボケが!)