王が出席する御前会議。
チェ・ヨンら軍部の将校が集められ、高麗の防衛や外敵の動きやついて報告がなされていた。

「元国内では紅巾軍はさらに勢力を拡大しております。もはや元に抑える力は残っておらぬでしょう。紅巾の勢力はこれからも拡大し、次に標的となるのは高麗です」
「戦への備えが必要だな」

ヨンの報告に王は答えた。

「それから倭寇も油断できませぬ」

「頭が痛いな。都巡慰使にこれらの情報を繋ぎ、国境軍の強化をするように伝えよ。それから南は海岸沿いの巡察を強化させよ」
「はっ」

王の声に将校たちが一斉に返事をし、御前会議はお開きとなった。

 

「チェ・ヨン」

 

宣仁殿を出たところで呼び止められる。

ヨンが振り返るとそこに立っていたのは。

 

「アン・ジェ」

 

ヨンとアン・ジェは並んで回廊を歩き出した。

 

「紅巾に倭寇に、まこと頭が痛いな」

「ああ、だが奴らは必ず攻めてくる。そう遠くないうちにな。油断していると高麗は一気に呑み込まれるだろう。それほど紅巾の数は尋常ではない」

「ああ」

「国境軍だけではなく、中央軍からの派兵も必要になるだろう。中央軍の強化もせねば」
「わかっておる。ところで……」

 

不自然に言葉を切ったアン・ジェにヨンが視線を向けると、アン・ジェはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。


「なんだ?その顔は」
「聞いたぞ」
「何を?」
「ついに嫁を迎えるそうではないか」

「……」

「北方の地より戻ったその日に王に申し出たらしいな。相手は4年前に姿を消したあの医仙だと。天界の女人を娶るとはやはり大それた男よ。で?いつ会わせてくれるんだ?」
「……何故お前に会わせぬといけぬのだ」
「お前の奥方となられるなら今後も長い付き合いとなるであろう?」

「それはない」

「会わせぬというのならこちらから会に行くぞ。典医寺におるそうだな?」

ヨンはアン・ジェを凝視した後、アン・ジェの頭を殴ろうとする。
が、アン・ジェはヨンの拳が飛んでくることを予測していたかのようにヨンの攻撃を避けた。

「おお~怖っ」
「勝手なことをするな」
「明後日はどうだ?馴染みの酒幕に席を設けておく」

「……」

 

勝手に話を進めるアン・ジェには答えず、ヨンは背を向けその場を後にした。

 

「明後日だぞ!忘れるな!」

 


 


役目を終えたヨンが典医寺を訪れると、侍医とウンスが熱心に頭を突き合わせて何やら議論を交わしているようだった。

 

侍医はチャン・ビンの弟だけあり背格好も似ている。後ろ向きで話している姿はまるであの頃の二人に見えた。

 

ヨンはふと足を止めて、4年前に思いを馳せた。

あの方を高麗に連れてきて当時、典医寺に、チャン侍医に預けた。

それが一番安全だと思うたからだ。

チャン・ビンはこの皇宮で信頼できる数少ないうちの一人だった。

だが正直、二人の仲に妬けたこともあった。
チャン侍医の胸で幼子のように声をあげて泣いたあの方。

あの方が夜毎魘されているのを先に知ったのも侍医だ。

医員同士、通ずるものもあったはず。

一番の友だともあの方は言っておった。

この高麗であの方の信頼を誰よりも得ていたのは侍医だった。

 

俺の胸で泣いてほしいなど、胸の内を話してほしいだの、その当時言えるはずもなかった。

ましてや側にいて欲しいなどと攫ってきた自分にはそんな資格もなかった。
だが、今は違う。

 

そんな思いを巡らせていると、ふとウンスが振り向いた。

 

ウンスは嬉しそうな笑みを一瞬浮かべたが、昨夜のことを思い出したのか、すぐに笑みを消し顔をしかめた。

そんなウンスの変化がおかしくて、ヨンは内心笑みを浮かべた。

それを表には出さす、平然を装いウンスに声をかける。

 

「イムジャ、お迎えに参りました」

「では、ここまでに致しましょう。片づけはこちらでしておきますゆえ、今日はお帰りください」

「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えてお先に失礼しますね」

「はい、お大事に」

 

侍医の言葉に、ヨンはウンスを注視するが特に変わった様子はなさそうだ。

ウンスは荷物を持つと、ヨンを一瞥しただけで、特に声をかけることなく、すたすたとヨンの前を通り過ぎていく。


「イムジャ、具合でも悪いのですか?」

「ええ、誰かさんのおかげでね!」

「……」

 

ウンスは足を止め、ヨンに向き直った。

 

「手加減してってお願いしたのに!今日は散々だったわ」

「だが、イムジャもよろこんで」

 

ウンスは慌ててヨンの口を手で抑えた。

 

「こんなところでなんてこと言うのよ!」

 

口を押さえているウンスの手を外し、ヨンは聞いた。

 

「嫌だったのですか?」

 

ウンスはきょろきょろと周囲を見渡し、近くに人がいないことを確認すると声を潜めて言い返した。

 

「い、嫌とは言ってないでしょう?」

「ならば、よかったですか?」

「な、な、な……」

 

ウンスは顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。

 

「なんてこと聞くのよ!今はそんなこと話してるんじゃないわ!限度の話よ。昨日みたいな調子で毎日……そういうことされたら、いつか倒れちゃうわ。私が倒れちゃってもいいの?」

「それは困ります」

「でしょう?だから、お役目がある時は少しは手加減してね」

「わかりました、少しは自重します」
「少し?」
「…………できるだけ」

 

そんなヨンにウンスはふっと笑った。

 

「もう、しょうがない人ね。今回は許してあげるわ。お腹空いたし、早く帰りましょう」

 

ウンスはヨンの手を取り、チュホンが待つ馬房へ向かった。


「チュホン~」

 

ウンスの声に、耳をピンと立て、嬉しそうに尾を振るヨンの愛馬。

ウンスはチュホンに駆け寄り、その顔に頬をすり寄せた。

 

「私の癒しはあなただけだわ」

 

日に日に仲良くなりつつある愛馬とこの方。

主人である俺よりも好待遇ではないか?

チュホンが初めからこの方を気に入っておったのは知っておるが、些か気に食わぬ。

そんなことを思っていると、ふとウンスが振り向いた。

 

「どうしたの?変な顔して」

「いえ、やけにチュホンと仲が良いと思うただけです」

「もしかして私の方がチュホンと仲良いから妬いてるの?」

「違います」

「じゃあ、チュホンに悋気?まさかね~」

「……」

「え?本当に?だって馬よ」

「雄であることには変わりありません」

「え?」

 

一瞬絶句したウンスだが、ふて腐れたような表情のヨンがなんだか可愛く思えて、ぷっと笑ってしまう。

ヨンはそんなウンスの背を押し、チュホンに載せる。

チュホンの背に揺られ、帰途につく二人。

 

「イムジャ、明日の夜に付き合うていただきたいところが」
「どこ?」
「酒幕に」
「酒幕ってことは居酒屋よね?珍しいわね、貴方がお酒なんて」
「イムジャに会いたいという者がおり」
「誰?」
「取るに足らぬ者です」
「何それ。ま、貴方が一緒なら心配はないんだろうけど。お酒飲んでもいいの?」
「ほどほどなら」
「やった!」

 

 

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副題:お前の女を紹介しろ!

です(笑)

ドラマの中ではウンスに会わせてもらえなかったアン・ジェさん。

ついに医仙に相見える時がきた?