「え?あの人が!?」
「今のあやつからは想像できないでしょうが、昔は意外とやんちゃだったのですよ」
それでそれで?と、盛り上がる二人の元へヨンが戻ってくる。
楽し気に話す二人の姿に、なんとなく面白くないヨン。
「お前は果報者だぞ。このような良い女人を娶れるのだからな!大事にしろよ」
「言われるまでもないが、何の話だ?」
「ふふ、秘密よ」
私もちょっとお手洗い、とヨンと入れ替わるようにウンスが席を立ち、その場はむさ苦しい男二人きりになる。
「何の話しを?」
「医仙様が秘密と言うておるのに俺が言うわけにはいかぬな」
「……」
まあ座れ、と突っ立ったままのヨンにアン・ジェが声をかける。
ヨンの杯に酒を注ぎ、自分も手酌で注いでしみじみ言った。
「まさかお前が嫁を取る日が来ようとは。以前のお前からは想像もできん」
「……」
「だが、実にめでたい」
アン・ジェはぐいっと酒を煽った。
ヨンもアン・ジェに倣って酒を煽る。
「で?」
飲みながらにたにたと笑うアン・ジェ。
「あ?何だその顔は」
「もう情は交わしたのか?」
ぶっと噴き出しそうになり、すんでの所でなんとかこらえる。
「お前酔うておるな」
「ともに暮らしておるのであろう?あのように美しき女人がそばにおればのう……抑えきれまい?」
ニヤリとアン・ジェが笑う。
「飲み過ぎだ」
「このような時しかお前を揶揄えぬのだ。このくらい良かろう?お前の顔を見ればわかる。男振りが一段と上がっておるし、さぞ良い女人なのであろうな」
「……まあな」
素直なヨンにアン・ジェは笑った。
「先日の重臣たちとのやり取りも聞き及んでおる。天界の女人はなんとも大胆不敵であったと」
「大胆なのか、怖い物知らずなのか。何を考えておるのか見当もつかぬ。何をしでかすか毎回気が気でない」
「大護軍ともあろう者が女人一人に振り回されるとは。高麗最強の男も惚れた女人の前では形無しか」
予測はできぬが、ウンスの行動は全て己のためだということは知っている。
俺のために泣いて、笑って、怒って。それが只々嬉しい。
ヨンは知らず知らずのうちに頬を緩めていた。
「何をニヤニヤしておるのだ。いやらしいやつめ」
そこへタイミングが良いのか悪いのか、ウンスが戻ってくる。
「何なに?なんの話?」
「こいつがいやらしいことを考えて笑っておったのです」
「えっ、そうなの?!」
「違います」
「ま、男の人だものね。そういう想像もするわよね……」
「イムジャ、俺はそのようなことはしておりませぬ」
「さすが、天界の女人は心も広い」
「アン・ジェ!誤解を招くようなことは言うな。イムジャ俺はっ」
「わかってる、わかってるわよ、ヨン」
何がわかったのです、というヨンの言葉を聞こえないふりをし、ウンスはおかわりくださーい、と酒の追加を頼んだ。
「あまり飲み過ぎませぬよう」
「固い事言わないでよ。久しぶりのお酒なんだからこれくらい良いじゃない」
「そうだ、良いではないか」
「アン・ジェさん話がわかるわね~!この人ってばいっつも、ダメです、なりませぬ、ばっかりなのよ」
ヨンの口調を真似したのだろうが、まったく似ていない。
「それだけを医仙様が大事なのでしょう」
「それはわかってるのよ?これで最後にするわ」
追加できた酒を嬉しそうに飲むウンスを見ながら、ヨンは心の中で小さく息を吐いた。
お酒が入ったウンスは普段以上に陽気になる。
その上、酒精のせいでウンスの服から覗く白い肌は淡く桃色へと染まり、どことなく艶っぽい。
自分の女の、そのような姿を誰が他の男に見せたいと思うだろうか。
一刻も早く屋敷に連れ帰りたい。
お酒をたらふく飲み、腹も満たされ、そろそろお開きの時間。
「アン・ジェさん、私たち婚儀の後に普段お世話になってる人を招いて祝宴をするの。アン・ジェさんも都合があえば宴に来てほしいわ」
「イムジャ、こやつを誘うことなどありませぬ」
「医仙にそう言われちゃ行かぬわけにはゆかぬな。ぜひ伺わせてもらおう」
「それじゃあ詳しい日時はまたご連絡しますね」
「楽しみにしております」
「今日はとても楽しかったです。また色んな話し聞かせてください」
「某が話せることならいくらでも」
「それじゃ」
「ヨンがおるから平気でしょうが、お気をつけて」
「イムジャ、参りましょう」
酒に火照った頬に秋風が気持ち良い。
「風が気持ち良いわね~」
「アン・ジェと何を話されていたのです?」
「気になる?」
「……あまりにも楽し気でしたゆえ」
「やきもち?」
「別に」
「貴方のどこがいいのかって聞かれたの」
「俺の?……イムジャはなんと?」
「知りたい?」
「ええ」
ウンスはヨンの唇にちゅっと口づけ、ひみつ、と指を口に当てて笑った。
「今日はすごっく楽しかったわ。貴方の昔の話しも聞けたし」
「俺の話など聞いても面白くないでしょう」
「そんなことないわ。好きな人ことならどんなことでも知りたいわ」
「好きな……人」
ウンスの好きな人という言葉に頬が緩む。
「そんなに俺が好きですか?」
「ええ、好きよ。どうしようもないくらい。何よ悪い?」
己が揶揄ったつもりが、まさかこのような反撃を食らうとは。
「照れてるの?耳真っ赤よ」
「これは、ちと酒に酔うただけです」
「本当かしら?まあそういうことにしておいてあげるわ。今は最高に気分が良いの」
久し振りにお酒を飲んだためかウンスの足元はおぼつかず、時折ふらりと身体を揺らす。
そんなウンスが危なっかしくヨンはウンスの肩を抱き寄せた。
ヨンの温もりが嬉しくて、ウンスはふふふと笑った。
「久しぶりのお酒だからちょっと酔っちゃったかも」
「……」
とろりとした瞳で見つめられ、
ほんのり桃色に艶めいた頬はまるで情事の後のようで。
赤く濡れた唇からは甘い息が漏れる。
そんなウンスにヨンはごくりと喉を鳴らした。
ヨンは二度と外で酒を飲ませまいと心に固く誓った。
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私事ですが、10/7~11までハワイ旅行のため
その期間は更新が遅れるかもしれません( ;∀;)
ちなみにハワイで誕生日(10/9)を迎えます![]()
