婚儀に向けて着々と準備は進む。
ウンスは典医寺の医員としての役目に勤しみながら、時間を見つけては針房に顔を出してドレスの出来具合を確認したり、屋敷に戻れば女中頭のミンスや他の使用人たちと祝宴当日の屋敷内の設えや料理などについて打ち合わせをしたりと慌ただしく過ごしていた。

以前友人が結婚式の準備が死ぬほど忙しいと愚痴を零していたのが思い出される。

当時はただのノロケじゃない!と思っていたが、これが中々どうして忙しかった。



優秀なお針子たち総出で取り掛かっていた天界の婚礼衣装、ウェディングドレスが仕上がったとの知らせを受けたのは、婚儀を1週間後に控えた日。

ウンスが針房を訪れるとそこには既に王妃とチェ尚宮の姿があった。

 

こちらです、と案内された部屋の中央、衣桁に掛けられたウェディングドレスは圧倒的な存在感を放っていた。

 

完成したドレスを目の当たりにしてウンスは感嘆の声を上げた。

「素敵……」

真っ白で、艶のある滑らかな絹地。
肩口から袖にかけては花の刺繍があしらわれており、幾重にも糸が重なりあった刺繍は鮮やかで美しく、一針一針心を込められていることがわかる。

 

「ご試着されますか?」

「良いんですか?」

「ええ、勿論です」

「じゃあ、お願いします」

 

ウンスは別の部屋に案内され、女官数人でウンスの着付けを手伝う。

袖を通したドレスはウンスの身体にぴったりで、裾も長過ぎず短すぎずで丁度良い。

部屋に用意されている大きな鏡の前に立ってその姿を確認する。

現代にあるような姿見がないのは残念だが、ぼんやりとした鏡の中に映る自分は悪くないとウンスは思った。

 

「どうですか?」

 

王妃たちに見せる前に念のため着付けを手伝ってくれた女官たちに感想を求めてみるが、少しの間をおいてからぽつりと「素晴らしいです」という声が漏れただけだった。

他の者もその言葉に頷くばかりで、ウンスは少しばかり不安になった。

 やっぱりあまり似合ってないのかな?と多少の不安を抱えたまま、王妃たちの前に出ると、その場には一瞬にして静まり返った。

 

その反応にウンスは内心焦った。

 

え、なに?

やっぱり、この時代には相応しくなかった??

 

焦るウンスとは反対に、その場にいる者たちはその美しさに見惚れて声を出すこともできなかった。
真っ白な衣装を身に纏った美しい女人はまさに天女。

誰もがそう心の中で思った。

「それが天界の婚礼衣装なのですね。とてもお美しいです。このように美しき方を娶られるチェ・ヨンは大層な果報者よ。のう、チェ尚宮?」
「左様にございます」
「王妃様、ありがとうございます」

 

それから我に返った女官たちも口々に「お美しいです」、「お綺麗です」とウンスを褒めたたえた。

「とっても素敵なドレス、ありがとうございます」

「お気に召していただけましたでしょうか?」

「もちろんです!本当にありがとうございます」
「我々こそ、このような大役を仰せつかり、まことに光栄にございます。大変貴重な機会をくださったこと感謝申し上げます」


現代のウェディングドレスと比較しても遜色のない想像以上に素晴らしい出来栄えの衣装にウンスさ心を躍らせた。


あの人、どんな反応するかしら?
驚くかしら?喜んでくれるかしら?


 

*

 


一方のヨンは康安殿にいた。


「今なんと申されましたか?」
「其方達の婚儀に参列できぬかと聞いたのだ」

話があると呼び出され、御前にあがったヨンは、王の口から出た言葉に頭を抱えた。
一臣下の婚儀に王が参列するなど前代未聞だ。
それがどういうことかわかっているのだろうか?

ヨンの心の声が聞こえたかのように、王が言った。

「余とてわかっておる。だが王妃に言われてしまってはな……。其方もよくわかるだろう?医仙に頼み事をされたら無碍に断ることなどできぬであろう?」

楽しそうに婚儀の準備をするウンスを見て、王妃も二人の晴れ姿を見たくなったのだという。

祝ってくれるのはまことにありがたい。
王でなければぜひ婚儀にも参加していただきたいところだ。
あの方もそれを望んでおるし、喜ぶであろう。

だがこれは当人たちだけの問題ではない。
王の存在とは、この国そのもの。

個であり個でないのが、王の宿命だ。
その王が一人の臣下に肩入れすることは色々な意味でよくない。

名誉や権力などには全く興味はないが、ヨン本人にその気がなくても、王から寵を受けているとみる者も当然出てくる。

今でさえ王とチェ・ヨンの関係を面白く思っていない輩はいるのだ。

そしてその小さな火種は、野心や嫉妬心に火をつけ、火が大きくなれば政権の派閥闘争に繋がり、さらには汚職や政治腐敗に繋がり、やがて国を燃やし尽くす。

危険な芽が出る前に、相手に付け入る隙を与えぬに越したことはない。


それゆえ王からの頼みだとしても、今回は簡単には頷けない。

「お気持ちは大変ありがたく存じます。ですが一臣下の婚儀への参列というのは賢明ではないかと」
「で、あろうな。ではこうするのはどうだろう。寺で婚儀を挙げたあと、二人で参内してくれまいか。医仙は元はと言えば余の客人であり、かつては王直属の立場の者だ。報告に来るのが筋というものであろう?」

王にそう言われてしまっては否と言えるはずもなく、ヨンは渋々頷いた。

「わかりました」
「楽しみにしておるぞ」


屋敷に戻り、参内の件をウンスに伝えると、ウンスの反応はヨンが想像していたものとは違ったものだった。

「なんだか嬉しそうですね」
「私と貴方が出会えたのは、理由はともあれ王様と王妃様のおかげじゃない。お二人には貴方と私が夫婦になることをちゃんと見届けてほしいと思ってたの。だから、当日に挨拶できるだけでも良かったなと思って」


それに、とウンスは言葉を続けた。


「婚礼衣装のまま参内したら、皇宮の人たちや偉いおじさんたちに宣言できるでしょ?この人は私のものなのよ!手出さないでね、って」


そう言って笑うウンスにヨンは「あ〜まったく!」と、えも言われぬ気持ちになった。


この方には一生敵わぬ。




 

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***

 

高麗時代にウェディングドレスはどうかな〜?作れるかな〜?と考えましたが、キ・チョルの屋敷で着てた白い服とか王妃様からもらった黒い服とかを参考にしたらなんとかいけるんじゃない?と思いました。
当時の風習を調べていたら白はあまりよくない色みたいなことを見たこともあるのですが、実際チョルさんとかチョヌムジャとか白い服着てるし、なによりシンイという作品そのものが「フュージョン史劇」
ゆえに許してくだされお願い

あと、コメントとかメッセージありがとうございます!めっちゃ嬉しいです!!
確認はしてるのですが、なかなか返信する時間が取れず💦 なるべくお時間ある時に返そうと思いますが、ほとんど帰国後になるかもしれません( ;∀;)