屋敷に戻った主夫妻を使用人たちが頭を下げて出迎えた。
恭しく馬車の扉が開かれ、礼服を纏った主人が先に降りてくる。
それから中にいる女主人へと手を差し伸べ、大事なものを扱うような優しい物腰で、女主人が馬車から降りるのを手伝う。
馬車から降り立った晴れ着姿を纏い並び立つ二人に使用人たちは目を瞠った。
恵まれた体格の美丈夫である主は、いつも以上に威風堂々とし、普段から美しい女人ではあったが婚礼衣装を纏った奥様は更に美しかった。
華やかな衣装を纏う女主人をうっとりと見つめる主人の眼差し。
そしてその眼差しに女主人も微笑み返す。
晴れて夫婦になられても、相変わらずの仲睦まじさだと使用人たちは思った。
*
宴会場であるチェ家の客間には招待客が続々と集まっていた。
初めて足を踏み入れるチェ家の屋敷に興味津々の者もいれば、迂達赤の隊員や手裏房のチホやシウルは目の前に運ばれてくる豪勢なご馳走や酒に目を輝かせている。
招待された者たちは、二人が姿を現すのをそわそわしながら今か今かと待ちわびていた。
程なくして空気が変わる。
客間の入口の扉が静かに開かれる。
まず姿を現したのはチェ尚宮。
招待客に一礼し、しずしずと会場を入ってくる。
そして、その後に続いてヨンとウンスが姿を現し入場してきた。
眉目秀麗で凛々しい花婿と容姿端麗な花嫁に会場から感嘆の声が漏れる。
背丈がある二人は並ぶと絵のように美しく、居並ぶ人々は一様に見惚れた。
「此度はチェ家当主 チェ・ヨンと医仙 ユ・ウンスの婚礼披露の宴にお越しいただき誠にありがとうございます」
チェ尚宮の言葉を引き継ぎ、ヨンが朗々と宣言する。
「我々は本日、婚礼の儀を済ませ夫婦と相成った。今日という日を迎えられたのはお前たちにおかげだ。感謝している。これからもこの方共々よろしく頼む」
今日の日を祝ってくれる招待客たちへ、二人は深々と頭を下げた。
「それでは乾杯の音頭は恐れながら、某 ぺ・チュンソクが行わせていただきます。
大護軍、医仙様、この度はご婚礼、誠におめでとうございます。チェ家の益々のご繁栄とお二人の末永いご幸福を祈念致しまして、乾杯!」
良く通るチュンソクの声が響き渡り、後に続いて全員が声高らかに唱和すると会場から歓声と拍手が沸き起こる。
「大護軍、医仙様、おめでとうございます~!!」
「酒と食事は十分に用意してある」
「みんな、たくさん食べてね!」
「はい!!」
宴が始まると、招待客は主役の二人の元に次々と祝いの口上を述べに行く。
二人の元に真っ先に酒を注ぎに駆け込んでくるのは、ヨンの直属の部下であるトクマンを始めとする迂達赤たち。
もちろんその中にはテマンも混ざっている。
皆、酒杯を手に怒号のような祝いの言葉を叫ぶ。
「「「大護軍、医仙様、此度はおめでとうございます!」」」
誰もが我先にと競い合うようにヨンの杯に酒を注ぐ。
1番手を獲得したのは弟分のテマン、惜しくも2番手に甘んじたのはトクマンだ。
次にチョモが、今後はテオが、迂達赤の面々が、最後にチュンソクがヨンの杯に注ぎ、ヨンはそれを飲み干していく。
「チャン先生、トギ、今日は来てくれてありがとう。楽しんでってね」
「ありがとうございます」
トギも大きく頷く。
次はウォル、ヨンシを始めとしたウンスを護衛している武閣氏たち。
「医仙様、大護軍様、此度はおめでとうございます」
「とてもお綺麗です!」
「ありがとう。これからもみんなにはお世話になると思うけどよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします!」
続いて・アン・ジェ。
「ヨン、医仙、此度は心よりお祝い申し上げる」
「ああ」
「ありがとう。アン・ジェさん」
「それにしても迂達赤たちの若い奴らはすごいな」
「……どこもあんなものだろう」
そしてマンボ兄妹、チホ、シウル、コサ(白い人)
「めでてぇな、ヨンよ」
「ヨンも天女も幸せになるんだよ」
「ああ」
「「チェ・ヨンの旦那、天女、おめでとう」」
「二人ともありがとう。白いお姉さんも」
「あたしは祝ってないわっ!!!」
皆に取り囲まれ祝福の言葉を受け、代わる代わる勧められる祝いの杯を重ねる。
この日を待ち望んでいたのはヨンとウンスだけではない。
二人を見守ってきた者たち皆が待ちに待った日でもある。
主役への挨拶を終えると各々談笑するもの、祝いの膳に舌鼓を打つ者、酒を酌み交わす者、様々だ。
そんな中、ヨンとウンスのそばにいるのはいつもの面々。
「本日はお招きいただきありがとうございます」
「チュンソク、お前にはいつも世話になっておるな」
「もう慣れました。15年近く共にいますから」
「これからも頼んだぞ」
そこへ、隊長ばかりずるいですよ〜とトクマンが話に割り込んでくる。
「大護軍、いつになったら俺のこと一人前って認めてくれるんですかぁ?俺だって長い間大護軍の元にいるのに未だに頭叩かれてばかり。少しは優しくしてくださいよぉ~」
「何故お前に優しくせねばならぬのだ。頭を叩かれるようなことばかりしておるからだろうが」
「そんなあ〜」
そんな二人のやりとりにどっと笑いが起こる。
「テマン、飲んでおるか?」
「少しだけ。酒を飲むと……」
「周りが死ぬのだろう?」
「はい」
「今日くらいは良かろう」
ヨンがテマンの杯に酒を注ぐ。
「お前にやられるようじゃあいつらもまだまだということだ」
「はい」
ウンスはそんなやりとりを隣で微笑ましく見ていた。
いつも必要最低限のことしか口にしないヨンがいつになく饒舌で楽しそうで、ウンスは胸がいっぱいになった。
*
飲めば飲むほど、酔えば酔うほど、宴は賑やかに盛り上がっていく。
目出度い席となればなおのこと、嬉しさや喜びが膨れ上がる。
ウンスは迂達赤の面々が面白おかしく話してくれる「大護軍自慢」に耳を傾けていた。
大護軍が如何に強いのか。
自分たちが如何に大護軍を尊敬しているのか。
男たちがまるで自分のことのように熱く口々に語る。
酒が入れば、当然口が軽くなり、つい要らぬ事まで話す輩も出てくる。
そう、大護軍が如何に女にモテるのか。
若い女たちは大護軍を見るとほぉっとため息をつくのだとか、飯屋に行けば大護軍にお茶や食事を出す係を女たちが争うのだとか。
「へえーそう。モテモテなのね」
「モテ?」
「女の人に人気ってこと」
「俺はそのようなこと知らぬ」
「もちろん大護軍は気づいておらぬでしょう。なんせ、大護軍は医仙様一筋!医仙様以外の女人には興味ないでしょうから!!!!」
「殴られたいか」
トクマンはいつもの癖で頭を防御する体勢を取り、ウンスはぷいっと顔を背け頬を膨らませる。
「良かったわね。若い女の人にモテモテで」
「俺はイムジャが一番です」
その言葉に「うぉー!!!」と野太い歓声が湧きおこる。
それを見てウンスが笑う。
ヨンが笑う。
それを見ていた回りの者も笑い、宴は笑いが溢れた。
そんな中、ウンスはヨンにそっと耳打ちをした。
「ちょっと外すわね」
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比翼の鳥は72、3話で終わると
つぶやきでお伝えしたんですけど
全75話になりそうです(^^;)
完結までもう少しお付き合いくださいませ~
