深夜、釣りに出かけた。
福山市の箕沖町にある波止。
この日は大潮で夜10時過ぎが満潮だった。
シーバスを釣る用意をして臨んだのだが生命観の無い海面に違和感を覚えながらも準備を進めた。
風は時おり強まることはあるが、後ろから吹いてくるのでルアーのキャストにはむしろ都合が良かった。
通称「鉄板ルアー」をこの風に乗せて投げるとPEラインがすべて出てしまい、危うくルアーのロストどころか、何10mものラインを海に流してしまい漁民の方に大変な迷惑をかけるところだった。
にしても超遠投の利くルアーだということを知ることが出来、あの遠いポイントを攻略するのにう~む、ふむふむ・・・
ま、ところが全くアタリがないのであらゆるルアーをとっかえひっかえ投げては巻いてを繰り返していた。
潮はどんどん満ちてきて足元から1段下がったところは潮に洗われている。
「大きい奴を掛けたらここに持ってきて、そのままスロープに引きずって捕獲だな」
満潮ならではの簡単取り込みを妄想してついニヤケてしまった。
ふと、潮止まり間近の50m先の海面に目をやると何かがスーッと移動している。
まるで発泡スチロールの塊が風に押されて流れていく感じだ。
ところが進んでいる方向は、風とは逆の方向。
沖を左から右へと移動していたのが突如こちらに向かってきた。
「なんじゃ!なんじゃ!なんかきたどぉ!」
あっという間に波止の付け根に泳ぎ着き
「ぷふぉー!ぷふぉーしゅるる!」と音を立てている。
「やった、潮を吹いとるんか!鯨?いやイルカ??でもぷふぉーとは言わんよなぁ~?」
ワシは夜釣り用のヘッドライトのスイッチをいれ、その音の主の真上に行き照らした。そのライトに浮かび上がった姿を見てびっくり!
暗いし慌てているので撮影も出来なかったが、ロッドの先でソイツをつつきながら
「こぅらぁあ!おみゃぁはこんぎゃぁなところでなんしょぅるんならぁ!ウリウリ!」
と通訳の要りそうな言葉でヤツを罵倒した。
イノシシは相変わらずワシの足元から1m程のところで立ち泳ぎ(かどうかイマイチ検証出来んが)しながら「プフォー!」を繰り返している。
どうやら陸に上がるところを探しているようだがヤツにはヘッドライトの装備も無く工場の明かりや波止場の明かりを目指して渡ってきたもののここからどうしようかと、右へ左へと前足を石垣に掛けようとしている。
何処から来たのか知らないが、鞆の浦、田尻にしても数Kmを泳いできたヤツの目は
「逝ってる!」
尋常じゃない。
ところがワシの心の深いところににある「外道釣りの権化」が頭をもたげ、
「さぁどうやって・・・。」と考え始めている。
そりゃぁ今までにラジコンヨットやヌートリアまで釣ったワイ。
ここで勝負せにゃぁ・・・。
と、ここで状況が一変。
波止の先端方向に向いてヤツが移動し始めた。
何kmも泳いできたのにその泳力はハンパ無い。
北島君も入江君も絶対かなわない速度だ。
波止場の先端を回ると1段低くなって潮に洗われているプラットホームが有り、スロープは今自分がいる所に通じている。
いわゆるこれが本当の使い方であるところの「YABAI!」
ワシはすぐにすべての釣り道具を抱え車まで猛ダッシュ!
ゼイゼイと肩で息をしながら車に乗り込み、ドアを閉め、ドアロックを掛け(ん?要らんか)一目散に逃げ帰ったのであった。
その後、ヤツが上陸したかどうかは知るよしもない。
