こんにちは
心理カウンセラーの吉田亮介です。
前回の続きです。
クライアントの井口さん(仮名)は20代女性でしたが、カウンセリングで扱った悩みというのが、同僚に異常に腹が立つというものでした。
そして、常に「異物を排除したい」という感覚があるそうなのです。
今回はこの異物が何だったのかというところをお話したいと思います。
僕は、この「異物」が何を指しているのだろうかと考えて、さらにお話を伺って行きました。
すると、井口さんが急に思い出したようで、そういえば、小学校1年生の時にホームレスのおじさんと仲良くしていたということを思い出しました。
小学校の帰り道にいつもいて、一緒に遊んでもらったり、パンを分けてもらったりしていたそうです。
そして、ある時、それがお父さんに知られた時、お父さんに相当激しく怒られたそうです。
井口さんにその時のことをじっくり思い出してもらいました。
そうすると、お父さんに怒られた怖さと、それ以上にお父さんに言われたこんな一言が井口さんにとって強い恐怖となっていたようです。
その一言とは
「そんなホームレスなんて社会の底辺の人間と付き合っているとダメな人間になるぞ!」
というものでした。
まだ小さい井口さんにとって、「自分がダメな人間になってしまうかもしれない」というのはとても怖いことでした。
その恐怖をしっかり感じてもらいました。
そうすると落ち着いて来ました。
そこで次に、お父さんのイスを用意してそこに座ってもらいお父さんの立場にたってもらいました。
※よくわからない、もっと詳しく知りたいという方はコチラをお読み下さい。
そして、お父さんの立場になった、井口さんに聞きました。
「何で、娘さんにそんなことを言ったのですか?」
井口さんがお父さんの立場で、お父さんとして答えます。
「あのホームレスは、うちの工場のネジの削りカスを勝手に拾って、売っていた。それも2回は注意したのにやめない。あのホームレスは働きもしないでとんでもないやつだ!あんなヤツは社会の底辺だ!」
こんなことを言いました。
今度は井口さんに小さい頃の自分自身になってもらい(催眠などではなく単純に気持ちとして半分くらいなってもらうだけです。)、「お父さんにそう言われたらどう感じる?」と聞いてみました。
「そうなんだと思います。」とのこと。
そこで、お父さんでも自分自身でもなく、第三者としてこのやりとりを外から他人ごとのように眺めてもらいました。
そして、どう思いますか?と聞くと、井口さんは、こんな風に答えました。
「お父さんの方は、工場の削りカスを盗られたことで、必要以上に怒っているように感じます。」
そこで僕は聞きました。「お父さんは、その怒りをあなたにぶつけているわけですよね?その必要はあったんでしょうか?」
井口さん「その必要はないと思います。ただ、知らないおじさんと一緒にいたことを怒っているのは誘拐の危険もあるし、当然のことだと思います。」
僕「そうですよね。だから、知らないおじさんと一緒に遊んだらダメだよと教えてあげればそれで良かったんですよね?」
井口さん「そうだと思います。」
ー 中略 ー
こんなやりとりを繰り返して、井口さんには、お父さんの注意は、適切な小さい娘への注意と個人的な怒りとが混じった状態だったことを理解してもらいました。
そして、それをしっかり分けて考えてもらいました。
・知らないおじさんと遊ぶのは危険だからよくない→受け入れる。
・働きもしないで、工場の削りカスを勝手に拾って生計を立てているホームレスは社会の底辺だ!→個人の感情が差別的に入っているので受け入れない。
という整理をしました。
そして、気持ちを込めて、「たとえお父さんが怒ったとしても、私は人を差別しません!」という決意をしてもらいました。
そうした結果、井口さんの中で最初に言っていた同僚への「異物を排除したい」という気持ちは半分以下になったようです。
残りの半分は、話を聞く中で違うところにまた原因があるようだったので、それはまた次回扱うことになりました。
この件については、次回もお話したいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございます。
心理カウンセラー吉田亮介