【童子さんの部屋】
文羽さんちのやまはちゃんが、童子さんの家に泊まりで遊びに来ました。
やまはちゃん「童子ちゃん、パソコンがあるのにいつも年賀状はこれで作ってるの?」
童子さん 「版画みたいな絵にできるから、私はこっちのほうが好きなの」
【簡易孔版印刷機「プリントゴッコ」】
やまはちゃん「私も美術の授業で版画を作ったけど、童子ちゃんは上手でいいなー」
童子さん 「これは版画っていっても、ペンで絵が描けるからずいぶん楽でいいわよ」
童子さんの前にある黄色い箱は、1977年に発売された家庭用簡易孔版印刷機「プリントゴッコ」です。
理想科学工業が1977年に発売したもので、原理はガリ版(謄写版)印刷機と同じものと言えばわかりやすいでしょうか。
え?ガリ版印刷のほうがわけがわからないって?
むー、確かにそうかも(;^_^A
昔は学校のプリントなどで使われていた印刷機で、蝋(ロウ)が塗られた目の細かい網目の原板(メッシュ)に、先端が鉄の針の鉄筆でガリガリと文字や絵を書くと、そこだけロウが削り取られて、原板の裏に粘り気の強いインクを乗せると、削り取られた部分だけインクが通り、文字や絵だけが下に敷いた紙に写されるというもので、この原板をドラムに巻き付けてガッシャンガッシャンと用紙に印刷していくというものでした。
鉄筆でガリガリと文字を書くので「ガリ版」です(^-^)
鉄筆で文字や絵を描く代わりに、黒いペンで書いた紙の下に原板を置いて、上から強い熱線(赤外線)を当てると、黒く書かれた部分だけ加熱されて原板のロウが文字や絵の形で溶けてインクを通すことができるようにしたものがこのプリントゴッコです。
「ピカッと光る」というキャッチフレーズでCMが流れていましたが、写真用ストロボを熱線用光源としていたので、この原板を作る時にバチッという音とともに閃光が走りました。
プリントゴッコの原板に色々な色のついたインクを乗せることでカラフルな年賀状を作ることができ、また、色ごとの原板を代えることで多色刷りもでき、上手な方は本当に綺麗なイラストをプリントゴッコで作成していました。
【プリントゴッコの時代の終焉】
1990年以降、カラー印刷のできる日本語ワードプロセッサが登場し、PC用の家庭用カラーインクジェットプリンタが低価格化したことで、年賀状の製作にワープロやパソコンが使われるようになりました。
それでもプリントゴッコで作った味わいのある絵を好む方も多く、しばらくはプリントゴッコが販売され続けていましたが、PCやプリンタの低価格化が進み各家庭に普及したことや、使い勝手のよい年賀状作成アプリが登場したことでその販売台数は減少の一途となり、2008年に製造終了、2012年に消耗品も終売となり、プリントゴッコはその役割を終えることになりました。
プリントゴッコは原板を熱線で溶かして文字や絵を印刷していましたが、レーザーで直接原板に文字や絵を書き込むことで印刷用原板を作ることもできるので、理想科学工業はデジタル印刷機「リソグラフ」を発売し、謄写版印刷ならではの低コストでの大量の文書印刷用にオフィス用印刷機として製造販売しています。