ドクター今川の『イタリア旅日記』 | ヨコ美クリニック院長今川の学会報告/旅行記

ヨコ美クリニック院長今川の学会報告/旅行記

25年以上の実績を持つ植毛・自毛植毛専門のヨコ美クリニックの今川院長が、海外の学会報告や旅行記を紹介していきます




6月下旬、イタリアへ行ってきました。ただのノンキな旅ではありません。目的は「第15回イタリア毛髪学会」への出席と講演。1995年にローマで開催された第1回目の学会から参加しています。数年前には二人のナースも同行し、ワークショップで植毛のデモ手術も行いました。

今回会場となったのは、シチリア島(シシリー島)のシラクサ(Siracusa)という街。実は2001年にも一度訪れているのですが、その時は亡くなった妻も一緒でした。ですから個人的にシラクサへの旅は少しばかり辛く、学会出席へもためらいがありました。そんな時、友人でもあるタイの植毛医D・Pから、
「僕はイタリアに行った事がないんだ。治安がわるいと聞いているので君が行くなら一緒に行きたい」
と連絡が入り、それならば…と思い切って出席を決めたわけです。


◆タオルニーナでリゾート気分を満喫!


トルコ航空でイスタンブールまで行き、空港内のラウンジでD・Pと落ち合うことに。イスタンブール空港のビジネスラウンジはとても立派でしたね。バーやリラクゼーションルーム、図書室、シャワールームなどが充実していて、これほど大きなラウンジは今まで見たことがないと思えるほど。快適な時間をそこで過ごした僕らは、飛行機でシチリア島東部にあるカターニャの空港へと向かいました。

せっかくのイタリア旅行だったので、学会前に少しでもリゾート気分を味わいたいと思い、すぐにシラクサへは入らず、タオルミーナというヨーロッパでも有数のリゾート地で2日間を過ごすことにしました。タオルミーナは、映画『グランブルー』の舞台にもなった場所。前回訪れた際、映画に登場するサンドメニコパレスホテルの前を通ったのですが、そのホテルのエントランスに一目ぼれ! 
一度は泊まってみたいと思い続けていました。そこで今回イタリアへ行くと決まるや、思い切って予約を入れてみると、たまたま一部屋だけ空いていると。ついに念願叶ったというわけです。






ホテル近くには、ギリシャ遺跡などの観光名所も多くありますが、膝の調子が芳しくなかったため、現地の旅行代理店を訪ね、長距離を歩かないで済む気軽なツアーを探しました。薦められたのは毎晩火柱がたつというストロンボリ島。6つの火山島を巡るというものでした。いくつかの島に降りながら、最後にストロンボリ島へ。とても小さな島ですが、火口まで3時間ほどかかると言われ、やむなく断念。観光地でもあるこの島には、カフェなどの店も多く、火山が爆発したらどうするんだろう…と思っていると、80年代に避難騒ぎがあったと聞きました。やはり危険なのですね。日本だったらたぶん許可されないでしょう。






戦後すぐの映画に、イングリット・バーグマン主演の『ストロンボリ』という作品があります。撮影中、バーグマンと、ロベルト・ロッセリーニ監督が一緒に住んでいた家が、今も街中で大切に保存されていました。映画好きな僕はぜひとも入ってみたかったのですが、D・Pといったら、まったく興味を示しません。結局入り口で記念撮影をしただけ(笑)。

タオルミーナから直接シラクサに行くのも面白くなかったので、タクシーの運転手におすすめスポットを尋ねると、シラクサの近くにあるノート(Noto)という街が良いとの答え。そこは“バロックシティ”と呼ばれ、17世紀の建物がそっくりそのまま残っている、人口2万人ほどの小さな街でした。昼下がりにも関わらず、人影はほとんどありません。しかしメインストリートに立派なオペラ劇場を発見! 4階建ての馬蹄形の劇場で、客数は3~400人程度。やや小ぶりな劇場ですが、こんな小さな町に、こんな立派な劇場があるなんて! やはりイタリアにはオペラ文化が根づいているのだなあと、改めて感心しました。

空腹を覚えた僕らは、劇場近くに見つけたイタ飯屋でランチとしゃれこみます。軽めに、シーフードのオードブル盛り合わせ、スパゲッティーを二つ、ワイン1本をオーダー。ところが運ばれてきた料理を見てビックリ! イタリア料理の量の多さは知っていましたが、ひと皿にオードブルだけで5種類も。ビジュアルだけでお腹いっぱいです(笑)。しかしスゴかったのはここからです。

ワインを飲み、一段落している僕らの元に、バケツのような容器に入ったムール貝が運ばれてきました。店員に「これは頼んでないんだけど?」と尋ねると、「これはセットになっています」と言う。すると今度は、ボリューム満点のイカのフリッターが、続いてシシリー特産というライスコロッケが登場し…。結局オードブルの量が多すぎて、メインのイカスミスパゲッティーにはほとんど手をつけられませんでした。皆様、イタリアで食事をする際はどうぞ慎重になさってください(笑)。

しかしこの内容で、日本円で7000円ちょっと。安さにも驚きです。


◆学会では各国のドクターが自分のテーマを発表 
夜はホストの家で大パーティー!


タオルミーナで観光をし、充分にリフレッシュした僕らは、ようやくそこから150kmほど離れた学会会場・シラクサへと向かいました。シラクサは、シチリアの東海岸(イタリア半島)のエトナ火山を南下したところに位置する、シチリアで3番目に大きな街。世界遺産にも登録されています。かつて、地中海で一番栄えたギリシャの植民地でもあり、数学者アルキメデス生誕の地としても有名です。また、旧市街の中心にはドゥオーモ(大聖堂)」があり、“イタリアの宝石”と称されている女優、モニカ・ベルッチ主演の映画『マレーナ』の舞台にもなっています。幼い子供が美しい奥さんに憧れるという、なかなかいい映画だったと記憶しています。シラクサは、我々日本人にもなじみ深い、太宰治の『走れメロス』の舞台でもあるんですよ。

学会は、ドゥオーモ(大聖堂)に隣接する宮殿で行われました。天井にフレスコ画が描かれた歴史ある建物で3日間、各国のドクターが自分のテーマを発表していきます。今回、僕が持参したテーマは“眉毛の植毛”。これに関しては、当クリニックのホームページでも詳しく解説しています。
http://www.yokobikai.or.jp/beauty.html






今回の大きな話題は、FUTとFUEの他に、低出力レーザーとPRPで、これについて多くの発表がありました。いつか僕もHPで詳しく論じるつもりです。

会場の中庭ではヨーロッパやアメリカの企業ブースが立ち並んでいますが、特に目に付いたのは
・「マイクロピグメンテーション」という一種のタトゥーのデモ
・レーザーのデモ
・メイドインイタリーの育毛剤、特に塗り薬のデモ
でした。「マイクロピグメンテーション」は、「FUE」の白い点状の瘢痕の修正にも有効だとわかったので、早速マスターするつもりです。


学会というと、堅いイメージを持つ方も多いでしょう。僕が参加したイタリア毛髪学会には、ブラジル、イスラエル、アメリカ、タイなど、昔からの友人たちが大勢出席していました。各国のドクターが順番に発表し、それを聞き、意見を言う。例えればNHKの“のど自慢大会”みたいなもの(笑)。今回もブラジルのドクターが、ヘアラインのことを話した際、興味を持った僕は「あなたの発表、僕は好きですね」と伝えると、彼は照れていました。こんな感じで、イタリアの学会は堅苦しさがなく、昼間からワインを飲みながらリラックスムードで進められます。

学会が終わると、夜は会員たちと街へ繰り出します。今回のホスト役であるイタリアのドクターが仕切ってくれ、海岸沿いの有名なイタリアン・レストランなど、さまざまな所を案内してくれました。そして最終日は、ホスト宅でパーティー。彼の家は島のメインストリートに建つマンションのペントハウス。屋上はさらに2階建てで、おそらく100坪以上はあったでしょう。山も海も臨める素晴らしいロケーションでした。ワイワイと飲み食いしながら、他のドクターの悪口などを言い合って…と、それは冗談。






メンバーの中に、アトランタ在住のアメリカ人で、FUEで有名なJ・Cというドクターがいるのですが、この男がとにかく話し好き。僕が「最近どうしてるんだい?」と聞くと、手術はそこそこで、カリブ海でカジキマグロを釣っただの、猟で鴨を100羽穫っただのと、自慢げに話し出します。僕は内心「殺生が過ぎるんじゃないかな」と思いました。(笑)パーティーのハイライトは賞の授与式。司会役のドクターが流暢なジョークを飛ばしながら、一人一人に賞を与えます。私も「優秀賞」をいただきましたよ。






今回のイタリア旅行は、僕にとって日頃の疲れを癒すことができ、また各国のドクターたちと情報交換もできとても有意義な旅行だったと思います。


そうそう、今回の旅でイスタンブール空港から、ずっと一緒だったD・P。彼とは1週間以上も同じ部屋で寝泊まりしましたが、彼は大イビキの持ち主なんです。私は耳栓を持参したので、睡眠不足は避けられました。D・Pも眠れないことが時々あるらしく、私に「お前はよく眠れるなあ~。何か(薬を)飲んでいるのか?」と聞かれましたが、耳栓のことは内緒にしておきました(笑)。
そんな彼ですが、今年10月に開催される国際毛髪外科学会のプログラムチェアを務めます。植毛の臨床で高名な医師に与えられる「ゴールデンアウォード(黄金賞)」の受賞経歴を持つ名医なんですよ。彼の名誉のために付け加えておきますね。