近くにコストコがオープンした。
事前に会員になり、初日も混雑覚悟で行ってみた。
案の定、交通渋滞。八風街道から八日市インター交差点を曲がったのが失敗だった。なぜかその道からは入れなくなっていて、愛知川超えてずっと先まで行って迂回して戻ってくるというとんでもないルートになっていた。1時間半もかかった。
渋滞は店の中でもあった。
人の渋滞だが、みなあのバカでかいショッピングカートをひいて歩いているものだから身動きが取れない。事実上、渋滞になっていて、前に進めない。おまけに反対側からもカートが押し寄せてくる。道路のように車線も決まっていないので、みな右往左往している。
ただ、僕が一番がっかりしたのはその後だ。渋滞はある意味想定済み。
他の客のカートの中身を見ていやな予感はしていたのだが、そのいやな予感が的中していた。
ろくな商品が置いていない。
ここはドンキホーテか。
ただ量が多いだけで、僕にとっては無価値な代物だらけ。
ようやくたどり着いた冷凍食品コーナー。あったあった、ブルーベリーだ。しかしオーガニックとは書いていない。オーガニックのブルーベリーが置いてあると聞いていたんだけどな。そう、コストコのパンフレットに載っていた。
「すみません、これってオーガニックじゃないんですか?」近くの店員に訊いてみる。
「オーガニック?」はっ、という顔をしている。まあ、よくあることだが、おまえコストコで働いているんだろう。オーガニックも知らないのか。
「あるとしたらここだけです」と店員は言うが、そこにはブルーベリーは2商品しかなく、両方ともオーガニックではなかった。
やれやれ。でもまあ、僕の本命は別の物。
ということで精肉売り場を目指す。目指すというが本当に移動するのが一苦労だった。
精肉売り場の前に魚売り場があったので、アラスカの天然サーモンを探す。ない。どこにもない。ノルウェーやチリ産の養殖ものばかり。そんなの普通に平和堂に売ってるわい。ようやく見つけた天然の塩じゃけはアメリカ産だったが、アラスカ産というわけではないそうだった。値段的にも平和堂のロシア産とほとんど変わらない。
でもまあ、魚は困っていない。アラスカ産天然サーモンがなくても、天然サバやイワシが平和堂に売っている。
問題は肉だ。
そう、グラスフェッド肉はどこにも売っていない。平和堂にもイオン系スーパーにも業務スーパーにもない。マックスバリューなどのイオン系スーパーにはそこそこいい肉が売っている。抗生物質不使用の鶏肉やタスマニア・ビーフ。しかし、平飼いや放牧ではない。
グラスフェッドビーフとは、放牧牛のことで、草を食べているという意味。後で説明するが草を食べているというのが鍵なのだ。
コストコにはグラスフェッド牛があるはずだった。というのもアメリカのコストコではそうだからだ。健康系ユーチューバーの多くがコストコのグラスフェッド肉を紹介している。
ところが、東近江倉庫店には、なかった。
えっ! 嘘だろ。そんな馬鹿なことが。何のために会員になったのかわからない。
「すみません。グラスフェッド・ビーフはないんですか?」
「グラス……何?」案の定の反応。横文字だっていうのはわかるよ、でも日本語にしたってどうせわからないでしょ。「放牧牛のことです」
「放牧牛?」
ほらね。
結局、より詳しい人を呼んできてもらった。
「今はないですね」
「今はってことはいつだったら入るんですか?」
「今の所入ってくる予定はないです」
はっ?「どうしてですか?」
「グレイン・フェッドのほうが人気が高いですからね」
グレイン・フェッドって穀物を食べて育った牛のことだよね。トウモロコシとか麦とか。つまるところ普通の牛肉。
さて、ここでグレイン・フェッドとグラス・フェッドの違いを説明しよう。グラスフェッドは放牧され、牧草を食べて育つ。グレイン・フェッドは狭い宿舎に閉じ込められ、運動せず、エサとして牧草ではなく、穀物が与えられる。ほとんどが工場式畜産方法で育てられている。つまり、狭い所にぎゅうぎゅう詰めなので、病気予防に抗生物質が投与され、エサの穀物も多くが遺伝子組み換え穀物。
最近、穀物牛という名で売られているのでいかにも新しい商品のように聞こえるが、結局は普通の牛なのだ。
つまり、グラスフェッドは、抗生物質が投与されず、遺伝子組み換え飼料も食べていない健康な牛だ。
それだけではない。そもそも牛は草食動物で、牧草を食べることが牛の生態に一番適している。草というのはその土地の様々な微生物によって支えられて育っているので、牧草を食べることで牛はそれらの菌も取り込んでいく。牛肉が栄養豊富と言われるゆえんはここにあって、穀物牛の場合、それがすべて変わってしまうのだ。
アメリカではケトジェニック・ダイエットなど、低糖質、高脂肪、高タンパク質ダイエットが人気だが、肉食の比率は高い。だからこそ、ビーガンとの間でよく論争が起きるのだが、彼らの食べる肉とはグラスフェッド・ビーフや平飼いチキンなどが一般的。
ところが、日本でケトジェニックもどきをやっている人の多くが普通の肉(工場式畜産肉)を食べているので、栄養的に本家本流とは大きな違いがある。
そして、なぜ日本でそんなことになっているかというと、グラスフェッドが手に入らないからだ。
つまり、この売り場にグラスフェッドが置かれないということは、「コストコ、おまえもか」という一大問題なのだ。
「グレイン・フェッドじゃ意味ないです。グラスフェッドがあると聞いたから入会したんです。それがないんだったら会員になった意味がないです」
「会員はいつでも解約できますよ」とその精肉売り場の担当者は言った。自分の持ち場のことしか頭にないあるあるの対応。
まあ、彼と話しても埒が明かないだろう。
結局、このバカでかいカートはほぼ空っぽ。こんなことならカート持たずに入店すればよかった。よほど歩きやすかっただろう。
やれやれ。本当に何のために会員になったのかわからない。
もっとも、オーガニック商品にこだわるのは少数派だろうから、大多数の客にはこれでも満足なのだろう。
いや、本当にそうなのだろうか。カートの中身がドンキホーテとそっくりと言ったが、量の多さで言えばドンキもそうなので、わざわざコストコに来なくてもいい。むしろ、コストコほど多くないドンキのほうが大多数の日本人にとっては使い勝手がいい。
業務スーパーという手もある。業務スーパーのほうが値段的には安い。最近日野にも業務スーパーがオープンして水口まで行かなくても済むようになった。
野菜なら平和堂にも地元野菜コーナーがあり、最近は農薬不使用野菜が増えている。ブルーベリーはオーガニックではないが、ストロベリーはオーガニックだ。牛乳も遺伝子組み換え飼料不使用の低温殺菌牛乳が売っている。
オーガニック商品はイオン系スーパーが一番充実している。マックスバリューもいいが、ベストは近江八幡のイオンモール。オーガニックコーヒーから、オーガニックめんつゆ、オーガニック高カカオチョコレートまで売っている。
そうなのだ。ほとんど他の店で事足りるので、わざわざ年会費を払ってまで来る人がどれだけいるのだろうか。
しかもあの渋滞。
帰りにマックスバリュー東近江店に寄った。グラスフェッド・ビーフが手に入らなかったから抗生物質不使用チキンを買う。チョコレートの棚に行くと、あった。オーガニックの高カカオチョコレート。めんつゆの棚に行くとあった。オーガニックめんつゆ。
実は、この二つはマックスバリュー八日市店にはなかったのだ。それで遠いけれどわざわざ近江八幡のイオンまで行っていた。
コストコはマックスバリュー八日市店と東近江店の中間にある。
八幡のイオンモールにはオーガニックのブルーベリーは置いてなかった。
ダメ元で、冷凍食品コーナーを除いてみる。あったあった。オーガニックのブルーベリーがあるではないか。しかもオーガニックのミックスベリーまである。
マックスバリュー東近江店なら八幡より近いので、ここに来ればいい。あとはこの店と交渉してグラスフェッドビーフを入れてもらうか。
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