朝、いつも通りに起きる。

特に不調は無い。良く眠れた。軽いストレッチの後で朝食のシリアルに無調整豆乳をかけていただく。

食後、シャワーや髭剃り、歯磨き等を済ませ昨日用意した荷物を持って車に乗る。


今日は初めての化学療法の為に医大へ向かうのだ。

場所は母が生前に癌で入院していた頃から、現在の僕の病気に至るまで何度も何度も行き、通い慣れているが、あえてスマホをカーナビにして道案内させた。

天気はあいにくだ。ここ数日はずっとどんよりとした曇り空。気が重い僕の心境そのものだ。


カーナビの道案内だと、通い慣れた道と違う順路で向かう事になった。案内されるがままに、出勤時間帯で混み合う街中をより信号の無い山道を走る。初めて通る道だったが、これが最短ルートらしい。見慣れない、急カーブの多い山道だが、信号も無いし結果的にはいつもより早く到着した。


と言っても、やはり入り口が混む。

北海道でも中々に大きな病院だ。僕がそうだが他の街から、遠方から来る患者も多い。

朝一だからこそ出入り口が混む。何台もの車が交差点をウィンカー上げて待つ。信号が切り替わっても数台進むのがやっとだ。


ようやく敷地内に入ると今度は駐車場の確保だ。混み合うとは言え、朝一なので割と駐車場は余裕がある。出入り口とは別の方の出口近くへ止める。ここの方が帰りが楽になる。


病院に入り、入退院受付があくまで少し待つ。

主治医に書いてもらった石綿救済の書類の受け取りと、最後に入院した際の保険の書類を書いて貰う為だ。

石綿関連の書類はCD-ROMと一緒でそこそこ量が多い。昨日、書類ケースを用意して大正解だった。

保険の書類は次回の化学療法時に受け取るらしい。また書類関連で3週間待たされるが、元々郵送でもそのくらい時間が掛かるので、受付のお兄さん曰く寧ろ丁度良いらしい。


今日は最初に採血がある。

最初に体調不良で市立へ入院後、大腸に腫瘍が見つかりこの医大へ転院し、その腫瘍を取る手術とその後3週間の入院。つい先日のCVポートを入れる為の手術と入院で、始めは迷路の様に思えたこの医大も、どこに何があるのかも大体把握した。おかげで迷わずスムーズに採血室まで行ける。


採血自体はサクサクと進みそれ程待たなかった。

血液検査後に内科の診察があるので、そこで約1時間待たされる。

診察室の前の椅子が空いていたのはラッキーだった。

そして、ただじっと待つ。


ワイヤレスイヤホンで音楽を聴いたりしていたが、医者の呼び出しアナウンスの声が小さ過ぎる為、聴こえないといけないので音楽を聴くのをやめる。


iPhoneを取り出しKindleアプリで電子書籍を読む。

「森川智之 声優 声の職人」だ。



TVアニメ「鬼滅の刃」の産屋敷耀哉やハリウッド俳優トム・クルーズの日本語吹替などを担当している人気声優の書籍。

僕は声優が好きだ。それも洋画吹替を担当する声優が好きだ。何なら洋画吹替にはちょっとしたこだわりも持っており、今はディズニーの20世紀FOX買収ですっかり廃れた「吹替の帝王」シリーズ(20世紀FOXの洋画のTV放送時の吹替音声を収録したパッケージソフト)も全部では無いが持っている。


この本はそんな森川智之さんの自身の半生、なぜ声優になったのか、どう言う経験や価値観を持っているかなど、文章は少々歪だが読み易く面白い本だ。

入院中に途中まで読んでいたが、次の通院時の待ち時間の為に続きを残しておいた。

それも待ち時間で読んでしまった。面白かったが、まだ呼ばれない。


暫くして、そろそろ尿意を覚え始めた頃にアナウンスが掛かる。

血液検査の結果と、改めて今日受ける化学療法と次回以降の予定を告げられる。同意書にサインし、診察はあっという間に終わる。


すぐさま外来化学療法センターへ向かう。

診察券と予約票を出してトイレで用を足す。


少し待ったところで、受付のおじさんから「かなり待つ事になるので、お昼等済ませて来られては?」と告げられる。この時点で午前11時を回っていた。

前日のうちに買い出しを済ませ、事前に受けた説明通りなら投薬中に食事も出来る筈なので、構わず待つ事にした。

仮に投薬中の飲食はダメと言われても別に問題は無い。後で食べれば良い。それはどちらでも良かった。


そしてまた、ひたすら待つ。待ち続ける。

今日のここまでの日記も、この待ち時間に書いている。ここまで書き終えてもまだまだ呼ばれない。


再びワイヤレスイヤホンで音楽を聴く。呼び出しはスピーカーではなく、声の大きな看護士なのでイヤホンをしていても聴こえる。


永い永い待ち時間の末、1時38分、ようやく呼ばれる。

入室前にもう一度トイレに行かせてもらう。

用を済ませ、入室。2番の個室と言われた。

ベッドの個室だ。壁とカーテンで仕切られた狭い個室。荷物と上着をカゴに入れ、靴を脱いでベッドに腰掛ける。

少し待つと検温の為に看護士が体温計を持って来る。36.7℃なんて事はない平熱だ。検温後もかなり待たされる。


14時4分、ようやく名前と生年月日、血圧を測る。初回なので医者呼ぶと言って看護士は出て行ってしまう。また、待ち…だ。


14時11分、医者が来て僕のシャツをまくる。CVポートを入れた箇所を消毒し、針が刺される。痛みはほぼ無かった。



いよいよ始まる…と思ったがまだ待たされる。点滴は30分の3本との事。終わってお会計を済ませて帰ったら夜だ…。


14時30分、ようやく1本目の点滴が始まる。

ベッドに横になり看護士らが管を繋ぎ確認を行う。

僕はワイヤレスイヤホンで音楽を聴く事にした。

座っての点滴なら、ダウンロードした映画でも観ようかと思ったが、寝た姿勢で腕を上げてスマホを持ったまま1時間半過ごす勇気は無かった。


点滴が始まり少しして薬剤師からの説明があった。お約束の副作用やトイレの注意点の説明だ。そうこうしてるうちに最初の一本オプジーボが終わる。


次は生理食塩水を30分。その次にヤーボイだ。



特に不調無く点滴は落ちていく。その間、僕は寝た切り状態だ。だが上手いこと昼寝が出来ない。出来ればもっと時間が短く感じるのに。


結局、終わったのは16時20分。

そこから会計があり、薬局へ行き抗生剤を貰う。またまた待たされ続ける。


時間が時間なので会計は空いていたが、会計と支払いで別々に待たされる。

会計順だから仕方ないが、自分の番号に近づいたとやっとかと思ったら、飛ばして遥か後の番号が表示されるとイライラする。


クレジットカードで支払いを済ませ、治療出来ているので駐車料金をタダにしてもらい、薬局へ赴く。

時間が時間なので流石にこちらも空いていた。

少し待ち、抗生剤を出してもらう。


再度、クレジットカードで清算をしようやく帰路に着く。


今日はこの後でPCのデータ整理に必要な周辺機器をヤマダ電機に買いに行く予定だ。他にも買い出しがある。


家に着く頃には19時を過ぎるだろう。

何とも長い1日だった。


明日は明日で、病名が出るまで出せないと言われていた保険関係で市立病院へ行かなければならない。


さて、どの程度の副作用が出るか。


終わった後、前の職場へ電話する。傷病手当の書類がようやく出来たので、後日持って行く為の連絡だ。

共済会からお見舞金も出るらしい。

明日、行けたら市立へ書類を出すついでに向かおうと思う。


後数回、化学療法と副作用の様子を見て、今後を決めて行く。