トライアングルのように
難破して漂流するボートの前に、
不気味な大型の船が現れるという構図は
海洋サスペンスのひとつの図式ですが、



80年代ホラーの中にも、
そっくりのシチュエーションで話が始まる
眠れる奇品があります。



その名も「ゴースト/血のシャワー」、
後々「デスシップ/ゴースト 血のシャワー」というタイトルに
変更されましたが、まあそのあたりはどっちでもよくて
元々の邦題からして、実はピンボケしているタイトルで、
良い意味でB級ダマシイが炸裂してますネ。



この物々しいタイトルの作品は、
文字通り幽霊船が登場するコッテリ感漂うホラー映画です。






●Death Ship(1980・カナダ=イギリス)
監督:アルヴィン・ラーコフ
脚本:ジョン・ロビンス
音楽:アイヴァー・スラニー♪






・まず断っておきたいのは
この監督さんは、とにかく演出が下手。
めちゃくちゃ下手なので、緩急のバランスが
よろしくない。



編集もがさつなので、つながりの悪い唐突な流れと
意図不明のフラッシュバック攻勢が、
幾度と無く観る者を戸惑わせる。



しかしながら、
すべては幽霊船の仕業なりと、それなりの帳尻をつけて
しっかり逃げ切って見せるところは、
いかにも当時のカナダ映画のテイスト。
大目に見るしかない。





夜の北大西洋上を航海する客船に、
貨物船風の巨船が突っ込んできて、客船が沈没。





生き残った乗客数名がボートで漂流している…
と、そこへヌーッと姿を現す黒く錆びついた貨物船。
ここから、急展開でドラマの調子が上がってくる。



貨物船に乗り込んだ御一行が、
人気のない船体の胡散臭さに徐々に気付き始めるものの、
怪異そのものの厄介な事態が次々と襲いかかってくる…。



主人公らが船の通信設備を見て
「こいつは40年以上前の古い装置だ」
というセリフが出てくるのだが、

この1980年度の作品の40年前…
ここいらに貨物船にまつわる謎のキーワードが隠されている。



…とまあ、こんな展開のホラー映画なのではありますが、



この船の中で何が起こって、いかなる顛末が待ち受けるかに
一応釘付けにはされてしまうので、
そうそう文句ばかりも言っておられない。





貨物船の正体が明かされていく中盤以降の流れまでは
おおむね良好で、見せ場のひとつらしき血のシャワーあたりから
監督の迷走が加速し始める。





僕が見たところ、

フィルムが足りなかったのか?
撮った映像が使い物にならなかったのか?
尺が長すぎると、ぶった切られたのか?



クライマックスに至る流れは魔物に取り憑かれているとしか
言いようがない破綻の連続。



もしもこれを計算づくで見せたとしたら、
破綻を逆利用した芸術映画の領域に達していると言ってもいい。



ただ思うに、これがハリウッド映画ならば、
資金を注ぎ込み、撮り足してつじつまを合わせるところ。



されど、
どうみても万事休すの色合い濃厚なクライマックスの編集は、
苦し紛れの監督の暴走となっていて、
ここがまた「ゴースト/血のシャワー」という作品の
途方もない愛嬌と言うべきか、忘れ得ぬ魅力にもなっている。



VFXが一箇所も使われていない、手作り感満載の
アナログホラーであることも付け加えておきたい。

僕は、こんな時代のゴワゴワしたハンドメイドホラーが好きだ。




客船の嫌われ者の船長を演じるジョージ・ケネディが
ねじれた人物を好演、いい味を出している。





★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。














東南西北、諸兄姉の皆々様、おひさしぶりでございますしっぽフリフリ


最早、どなた様にも相手にしてもらえないくらい
永きにわたってサボりましたがうお座
仕事がどーしたとか、体調がこーしたとか、何か変異が起きたとか、
その類じゃなくて、許し難き本格的な「サボり」です。m(_ _;)m…雷



正直、駄文に文字をダラダラと連ねることに
少々飽きてきたこともありましたが、
ただひたすらサボっておりました。



お気づかいを賜りました皆様におかれましては、
厚く御礼申し上げますと共に、
小生、ひたすら深謝の極みでございます。
申し訳ございません。







かくして
気温上昇と共に、ヌケヌケとリターンして参りました。
泥遊びの好きな亜熱帯の爬虫類みたいな野郎ですね。




不在の間も、映画好きに終止符はあろうはずもなく、
新旧分け隔てなく大層な量で観ておりまして、

…ただですね、新作群がチョッと…

今年は例年になく秀作がズラリ並んだかと思いきや
目星を付けていた作品が案外ミドル級ばかりで、
前回の新作推奨からここまで、
チョッと身を乗り出したのは、以下の2本くらいです。

サラっと寸評を記しておきますと、



●アデル、ブルーは熱い色
La vie d'Adèle-Chapitres 1 et 2(2013・フランス)
監督:アブデラティフ・ケシシュ
★★★★
・息を呑むようなという言葉が適切かどうかは、
観る方の年齢にも左右されると思われますが、
素人っぽい若き女優ふたりの裸祭りによる
セックスシーンの容赦ない見せっぷりは圧巻です。



凡庸な恋の芽生えと切なき愛情の戯れを
女と女の情愛として瑞々しい感性で見せます。
俗物とアーティスト、正統と異端という距離感を
丁寧に描きこみながら、
「性」と「心」の置きどころと関わり合いを語ってしまう
覚えにくい名前ながらケシシュ監督の美技とセンスは見事。



3時間もかけて見せる話じゃありませんが、
観終えてみると、あっという間の3時間でもあり、
甘酸っぱい良質の清涼感が残ります。






●グランド・ブダペスト・ホテル
The Grand Budapest Hotel(2014・イギリス=ドイツ)
監督:ウェス・アンダーソン
★★★★

・ウェス・アンダーソンの色彩感覚がかつてないほど
炸裂していて、ホテルというエレガントなステージを
存分に生かしためくるめく人間絵巻と映像感覚に酔わされます。



毎度のことながら、この監督は登場人物の見せ方には、
コーエン兄弟と似て、かなりクセがありますが、
ゾロゾロ登場する曲者だらけのオールスターキャストは必見!



伝説のコンシェルジュが、殺人事件に巻き込まれて
すったもんだ…というストーリー展開は、いい加減ながらも、
語り口の妙と芸達者なオッサン、オバサン俳優陣が
すべてをカバーして、奇妙なコメディに仕上がっております。






ま、そんなわけで、昨年同様、夏場にリターンする時の
常套手段ですが、海洋映画でスタートしたいと思います。

支持派の多いスリラー映画「トライアングル」。
ホラーの香りプンプン、不条理感ユラユラ、
衝撃度ガンガン、これは手ごわい作品です。

不快指数の高い日にはうってつけの一篇ですネ。





●Triangle (2009・イギリス=オーストラリア)
監督・脚本:クリストファー・スミス
音楽:クリスチャン・ヘンソン♪








・シドニー・ポラック監督の「雨のニューオリンズ」という作品で
映画館から出てきたヒロインのナタリー・ウッドが、
ロバート・レッドフォードに言うセリフ。

「悲しい映画を観ると、もう1回観たくなる。
 次はハッピーエンドになる気がするの」

観終えた後、こんなメロドラマのセリフを思い出してしまった。



人生にも、リセットしたくなるものは山ほどある。
映画「トライアングル」は、
嵐で難破したヨットの男女が通りかかった客船に避難して…という
糸口以外、ストーリーは何一つ話せない作品だが、





数多あるホラー映画の直線的な展開とご都合主義を、
あえてひっくり返してみせたアイデアが秀逸。
あまりにも強引な展開には引き込まれずにはおられない。



実のところ、これ以上作品については語れないのが
この作品のややこしい部分で、そして究極の見どころになっている。

思わず不条理な流れにツッコミを入れたくもなるが、
小説ではご法度でもある「主観の移動」という大胆な試みを、
ギリギリのところで映画として成功させていることは確かで、
それが冷たい衝撃を生む。



ホラーまがいの描写もあるので、苦手な方もおられましょうが、
観る側は、ひたすら引っ張り回されるくらい作品の出来は良く、
以上の理由により、映画ファン必見の1本とさせていただきます。



さて、後味については、
冒頭の「雨のニューオリンズ」のセリフにループして、
本文を再読されたし。ハロウィン





★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。




『かくなる次第で、
まるで何事も無かったかのような出戻りの絵姿、
破廉恥な奴ですね、我ながら。

されどまた次のサボりまで、時速8キロで、
ユル~く走りたいと思いますので、
何卒、お手柔らかによろしくお願い申し上げます。』m(_ _ )m
















・ここんところ観てばかりで書いておりませんので、
これぞ世に言う“サボり”ですね。ハロウィン

いつものことながら、皆様の所へも長いことお伺いせず、
申し訳ございません。わんわん

しっかり忙しいのは、おめでたいこととして、
消費税改正とも何の関係もありませんが、
今はすっかり観る人になってしまっていますネ。

ま、本日は自分のための備忘録としまして、
この2月後半~3月後半までに観た新作のタイトルを、
★印のマーキングと手短な感想と共に並べておこうかと思います。





ウルフ・オブ・ウォールストリート



・世の中、すべて銭でっせ、という理念で描かれた
傲慢で豪胆な男のマネーゲームの夢と堕落と失墜の軌跡を、
スコセッシ&ディカプリオの黄金コンビが派手に見せる。



山あり谷ありを描くドラマでも、この作品が強調している
山頂部分は、偽善なしで
麻薬ありセックスありの欲望まみれの俗物主義で興味深い。

ディカプリオの演じる揚々たる主人公は見事、
役者としてと言うよりも、ディカプリオの存在感として
また一皮剥けた感がある。
「J・エドガー」や「ギャツビー」より、遥かにヨロシイ。



金に魅入られた人物のお話しは、不愉快ながらも、
ディカプリオが演じると、何故か悪意が薄められて
そこはかとなくセクシーな作品に見えるから不思議。

年甲斐もない(?)スコセッシの精力的な演出も衰え知らず。



相棒で副社長役のジョナ・ヒルがイイ♫

★★★





ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅



・人が人を思いやる姿を、静かなモノクローム映像で見せる。

人の脆さ、卑小さ、狡猾さ、滑稽さ、そして夢の果てまでを
きめ細かにドリップするボブ・ネルソンの巧妙な脚本を
映像感性豊かなアレクサンダー・ペイン監督が陰影深く見せた。



久々に胸に沁みるロードムービーであり、
あるいは可笑しくも愛しき家族劇の秀編。

周囲の人物たちの見せ方も丹念で、
異質だが、昔「バグダッド・カフェ」を観た時の感慨を
思い出した。

老優ブルース・ダーンの空気をも掴むような演技には
ただただ見入って、頷くばかり。



おっかさんであり、悪たれ口の女房を演じるジューン・スキッブが絶品!

★★★★




それでも夜は明ける



・一人の黒人奴隷の半生を通じて切り取られる
アメリカの悲痛な歴史の断片。

邦題にある通り、
人はいかにして絶望の淵から光明を見出すのか…までを描く。



過去にも作られて来た奴隷制度の修羅の実態を見せる作品の中でも、
これは地味で重い。執拗に見せる虐待の辛さも極まっている。



主人公が味わう艱難辛苦の流浪の12年が切実であり、
観る側はそれを追体験させられるわけだが、
俳優陣の緊迫した演技の炸裂が胸を揺さぶる。



アフリカの少年が拉致捕縛され、
奴隷として人身売買され続ける生涯を描いた
ミニシリーズの名作「ルーツ」を思い出す。

★★★★



ホビット 竜に奪われた王国



・ピーター・ジャクソン監督のライフワークの様相を呈してきたが、
王道のファンタジーに、あらゆるアレンジとトリックを施し、
冒険ロマン劇として、独自のふくよかな世界観を構築。



ジャクソン監督とギレルモ・デル・トロ監督の創出するCG映画は、
数多あるCG映画群とは、画作りのセンスにおいて一線を画する。
観客に対して、芯から胸躍る贅沢な映像を準備してくれる。



今回は「ロード・オブ・ザ・リング」3部作へのリンク箇所が次々と
出てきて、一気にリマインドさせられる仕組み。お見事=☆

★★★★




大統領の執事の涙



・邦題の甘ったるさに、観に行くことを躊躇するも、
たまたま時間のタイミングが合ったために観た作品。

国家の権力の中枢であるホワイトハウスを舞台に
ダイジェスト版で見せるアメリカ近代史…とでも言うべきか、



顔見世で登場する豪華な新旧スター陣のアンサンブルは
さすがにハリウッド映画の物量攻勢のデリシャス感ながら、
歴史を太筆で大雑把になぞった感が否めず、
細筆で描き込んでほしい部位が希薄なのは物足りない。

おそらくアメリカ人にはこれで良いのかもしれない。



但し、黒人奴隷上がりの給仕の視点で追うという流れは新鮮で、
意外なドラマ部分が給仕の家族劇に及んでいるのが見どころ。
特に親子の葛藤部分は、作り手の鋭角のメッセージとなっている。



1800年代が舞台の「それでも夜は明ける」の前に観れば、
今に至る公民権運動への流れをサラリと予習出来ますネ。

★★★




まあ、主だった新作はこんなところですが、
既に見逃している作品もあるし、
時間を作るのは相変わらず難しいですネ。

飲みに行ったり、食べに行ったり、遊ぶ時間はあるんですけどネ、
どーなってるんだ?叫び



最近CSでスタートしている、還暦60周年ゴジラシリーズも
第1作から興奮しながら観ておりまして、
ゴジラがもはや可愛くて愛おしくてタマランですネ、
これも楽しいです♫


そんなこんなで、本日はこれにてm(_ _ )m


















$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★



・スマホで、ヒマな時に大喜利をやってるんですけど、
それが全部こっちのブログにもくっついてきて往生しました。

大喜利は、いかにも安手の下世話なボケが蔓延している
お茶を濁すゲーセンみたいなものなんですけどネ。


そんなわけで、イレギュラーですが
ものすごく久々に、安手のモンスター映画を取り上げます。ハロウィン




●CREATURE UNKNOWN (2003・アメリカ)
監督:マイケル・バーネット
脚本:エリック・ミッテルマン スコット・ザカリン







・誰も期待すらしていないような展開を
ストーリー後半にくっつけておりましてネ、

トリプルアクセルを決めてやったゼ!みたいな
空前のドヤ顔をブチかましてくれるワケですが、
こんな仕掛けなんて、まったく不要です。



ついでに、
よせばいいのに、どーでもいいオチまでくっつけて、
手が付けられないくらい得意ヅラこいてますネ=

ま、この安物感がよかったりもしますけどネ。

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★


すべては観てしまった自分の責任ですがハロウィン
自分を責めるのも癪なので、
トラッシュ&Z級ドクロの冠号をなすりつけておきましたヨ。




どんな話かと言いますと、

双子兄弟の弟が
プロムパーティーの最中に謎の失踪を遂げるんですネ。

ま、何故か双子という無理クリ設定が、
既にトリプルアクセルへの布石だというのはバレバレですネ♪
バレバレじゃなくても、無理クリですネ。ハロウィンアハハ♪

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

ンで、主人公は、
おそらくは死んだと思われる弟を想い、
決別の意をこめて、疎遠になっていた昔の仲間と共に
弟が消えた山ン中のキャビンへ出向いて、
想い出を偲ぶわけです。



ま、自分の想いを本気で断ち切りたいのであれば、

であればですよ、

既に気持ちの上では故人と思いこんでいる仲間たちを
無理強いして引っ張り出さずに、
本来ひとりで訪れるべきですネ。

コイツが、センチに苦悶する自分を見てほしいばかりに
仲間を巻き添えにします。

殴ってやりたくなりますネ=パンチ!

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

そうこうしているうちに、
当然ながらワケのわからん化け物に
都合のよい順番で襲われていくという
型通りのクリーチャームービーです。

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

もう僕は冒頭で所信表明しましたので、
コレ以外にあえて語ることもありませんが、

このポスターからして、お顔出しまくりのクリーチャー
“プレデタリアン”さんにつきましては、
一弁ふるっておきたいですナ。

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

地下で胡散臭い実験をやっている女医が
驚異のDNA操作で、プレデタリアンさんを生み出したという
またも論理的な説明ゼロの無理クリ展開で、
めまいがするんですけど、



地下室で暮らす女ドクター・モローが、

何のための実験かなんて、まったく説明されませんが、
プレデタリアンさんをいきなり作ってしまうんですネ=

ってか、もう最初から完成してます。

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

ここでの問題は、DNAの抽出源です。

タイトルロールで出てはきますけど、
コレまた強引な、
手続きなしのオレオレ詐欺とでも言いたい
悪質な手口でごまかしていますネ。

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

ま、このあたりは騙された振りしないと
次に進めませんので、騙されてあげまして
ネクストステージへ。

華の真打ちプレデタリアンは、
早い段階から登場するんですが

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

見た目は、
半魚人を思わせる爬虫類系、
ヘルダミアン(ってご存知?)の、野生化バージョン。




着ぐるみ感500%以上のシロモノですけどネ。

啼き声がオオカミで、ワォ~ン、
唸り声がライオンで、ガルルルル…なんですネ、何故か。

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

動きは忍者そのもので、
得意技は、マウントポーズからの、
のどへの噛みつき攻撃と、

鋭い爪と馬鹿力による
プレデタリアンカッター!です。

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

ヌードの女性を見てヨダレも垂らしますネ。
で、何やら知能も発達しているというマルチタレント振り…。

どうなんでしょうネ、この都合のいいリアリティ詐欺。

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

まあ、コイツが様々な蛮行を繰り返しているうちに
あっと言う間にクライマックスに突入して、
驚くには値しないキレの悪いムーンサルトな展開を見せつけて、

その場で思いついたような無駄なオチがくっついて、
堂々とエンドロールが流れ出します。

堂々とですよ!

その間、80分…。





あ、今更ですが、プレデタリアンというのは、
適当に付けられた日本語名です。

よって、世界非公認キャラです。



$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★








採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。



























暴走機関車の設定は、

囚人二人が脱走して、アラスカの雪原を
列車で逃亡するという筋立てで、
運転士を失うというアクシデントから、
列車はブレーキが効かずノンストップの暴走を始める。



囚人二人による雪原の逃亡劇、ノンブレーキ、
銃を射ちながら追っかけてくる男…

この設定で思い出すのが、
石井輝男監督「網走番外地」シリーズの第1作。



東映ヤクザ映画の大ヒットシリーズながら、
高倉健という俳優の持つぶっきら棒な魅力を
人間味と共に引き出した名品である。



第1作は、そんな主人公の橘真一というやくざ者の
キャラクターを決定づけた石井監督の力作。

何しろ、
てめぇこの野郎!、何だとこの!みたいなドスを利かすセリフでも、
サラッと口にする健さんのセリフ回しの軽快さが心地いい。





表向きは荒っぽい極道なれど、
腹の中にはまともな人間が住んでいるという感覚を
力むことなく見せた。



このシリーズには、
高倉健の魅力と共に根づく、力みかえって殺し合うだけではない
もうひとつの東映ヤクザ映画の魂みたいなものが輝いている。












● 網走番外地(1965・東映)
監督・脚本:石井輝男
原作:伊藤一「網走番外地」





・極寒の網走刑務所に護送されてきた極道たちが
雑居房に詰め込まれるところから始まり、
密かに脱獄計画を進行させる連中に主人公が巻き込まれて行く。





そして、最も凶暴そうな前科者と共に
零下20度の大雪原と森林地帯を手錠に繋がれたまま逃亡する…



手錠につながれた二人が逃亡するシチュエーションは、
スタンリー・クレイマー監督の傑作「手錠のままの脱獄」の
焼き直しでもあるが、アクションの王道を極める石井監督は、
そこに工夫を凝らし、いささかも飽きさせない展開を準備している。



「網走番外地」シリーズは、
シリアスな切り口だったのは本作のみで、モノクロもこれだけ。



当時、広義のエンターティンメントとしてありえない
男だらけの展開の脚本に疑問を示した東映は、
予算削減でこの作品をモノクロフィルムで撮らせた。



しかし、
結果、第一作は、雪原の風合いを生かしたスケール観と、
不滅のリアリティを持つクオリティの高い作品として
記憶されることとなった。



やがてシリーズは、
郷愁の想いと母と子の愛情の絵姿を芯部に据えて、
徐々に健さんの軽妙な味も出すようになり、
コミカルな味覚も織り込むようになる。

重要な役どころで子供を絡ませるのも、
ひとつの特徴でもある。



もちろん、
プログラムピクチャーシリーズの宿命でもある
作品の出来不出来や中だるみもあるが、
東映の本格派ヤクザ映画路線とは、ひと味違う作風が
シリーズの人気を支えた。





但し、
主人公の周りを取り囲む、
チンピラから大御所クラスの極道の面々が
とにかくしっかり描き込まれることで、
映画の厚味がガッチリしてくるのが
ヤクザ映画の重要なポイントである。



ギラギラした前科五犯の凶悪人、
権田権三を演じる南原宏治、


ここでもネットリ感充分な安部徹、


レギュラーとして登場する“八人殺しの鬼寅”の嵐寛寿郎、


待田京介、田中邦衛、



そして、



保護観察官役で丹波哲郎、


他にも東映の名脇役陣
関山耕司、潮健児らが登場する。





ヤクザ映画は苦手という方は多かろうが、
ひとつには、ヤクザ映画は、
はみ出し者による男中心のハードな活劇であり、
骨太な男映画である。




そこに生まれる連帯、結束、裏切り、ひと時の友情、
復讐仇討、策謀と騒動を熱いたぎりとして徹底的に見せる。



劇画風の世界観を、豪胆なアクションと実写でリアルに描く。
これはどちらかと言えば女人禁制の領域かもしれない。



映画にラブリィなものを求める向きには、
ほとんど添え物的な扱いのメロドラマ部分にも
不満は残ろう。



しかし、東映時代劇と東映やくざ映画、
異種ながら、もうひとつここに付け加えるならば
日活ロマンポルノは、
日本の映画文化の裾野を拡げ、日本映画そのものを強くした。



歴史を説くつもりなどさらさらないが、
栄枯盛衰はあれども、東映映画ほどその担うべき役割に徹し、
邦画の娯楽映画の振れ幅を拡大してくれたものはない、と
言い切っておきたい。



「網走番外地」は、そんな東映映画を語る上で
外すことのできない石井輝男と高倉健が魅力を発揮した
重要なシリーズである。


オススメしたいのは、杉浦直樹がクールな殺し屋を演じた
シリーズ第三作にあたる「網走番外地 望郷篇」。
これはイイ♪










★★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。