・雪原を疾走する列車と言えば、
猛吹雪の中を轟々と機関車が突き抜ける
「暴走機関車」を思い出す。



黒澤明監督が、
巨費を投じ過ぎるという理由で東宝を解雇されて、
いよいよ海外進出に活路を求めた監督自身、
ハリウッド進出の足掛かりとなるはずだった
いわくつきの作品。



1985年に作られた
アンドレイ・コンチャロフスキー監督版は、
黒澤版との狙いが大きくかけ離れていることに対し、
日本ではその作風に対して批難も多かったようだ。


■黒澤 明

僕は、黒澤版がシナリオとしてしか存在しないため
比較のしようもないと思うが、
脱獄囚役にヘンリー・フォンダとピーター・フォークが
キャスティングされていた黒澤版も観てみたかった。


■HENRY FONDA

■PETER FALK

更に、人間ドラマよりも
生きているかのような機関車そのものの狂った暴走と
それを停めることに必死になる人間たちの姿を、
シンプルに描出しようとした黒澤版は、
明らかにパニック映画の先駆けになったかも知れず、
口惜しい思いが募ってしまう。



かくして、
原型から様変わりしたハリウッド版「暴走機関車」は、
異様な人間ドラマとして制作された。









●Runaway Train(1985・アメリカ)
監督:アンドレイ・コンチャロフスキー
原案:黒澤 明 菊島隆三 小国英雄
脚本:ドルジェ・ミリセヴィック ポール・ジンデル
   エドワード・バンカー







・殺気だった激しいドラマである。



極寒のアラスカ、重犯罪者を収容する錆びれた刑務所。
ここから脱走を試みる
野獣のような凶悪犯の男(ジョン・ボイト)と、
彼を慕う若僧(エリック・ロバーツ)が、
零下30度の雪原を逃亡し、



いよいよ飛び乗った貨物用ディーゼル機関車が
運転士の心臓発作というアクシデントから
突如暴走し始めるという話。



20数年もここに勤務する所長(ジョン・P・ライアン)と
悪魔的な凶悪犯との確執、



唯一搭乗していた女性の乗務員(レベッカ・デモーネイ)が
絡んできて、極限の暴走パニックと追跡戦が併行展開する。



所長がヘリで執念深く追跡してくるという
じっとりネチネチしたアクションドラマの設定は、
実はストーリーをまわりくどくしていて、
主体となる暴走機関車の暴走劇がボヤけるのだが、



なんせ、主人公の野獣男が肩入れ出来ない人物像のため
この図太いバトルにウエイトを置くのはむしろ正解だった。



序盤の刑務所からの脱走劇も、鉄道の管制本部が制御しきれず
すったもんだする図式も、アメリカ映画ではよく見るパターンで、
特筆すべきところはないのだが、



やはり、呼びものである機関車の暴走が始まってからは、
見どころ充分。

雪原地帯を舞台にした寒々しい効果と、
走る密室型映画の息詰まる感触を存分に見せる。




監督のコンチャロフスキーは、主演のジョン・ボイトの進めで
渡米した監督で、ロシアの名匠二キータ・ミハルコフの兄である。



ロシア時代の繊細なタッチからうって変って、
本作で見せた粘り強い演出は、何とも今作限りで、
以降の作品は軒並み平凡という一発屋でもある。



ジョン・ボイトは、この作品に並々ならぬ情熱を見せ、
別人のごとき、かなり強烈なメイクで、
元々の素朴な田舎の坊ちゃん顔を変形させた。



ここから個性派への脱皮を図り始めて、
俳優としての生命線を延ばすことに成功した。



目立ち過ぎるくらい目立ったのが
殺し屋まがいの刑務所長のジョン・P・ライアン



そして、



鉄道の管制局長をリアリティたっぷりに演じる
肥大漢ケネス・マクミラン

このふたりの強烈なバイプレイヤーの存在感は、
作品の迫真力を大いに盛り上げている。




ただ…

ラストの画ヅラは何ともスタイリッシュに走り過ぎて、
シェイクスピアの「リチャード3世」から引用した言葉も含めて、
何かを超越して見せたつもりかもしれないが、



ここで野獣をレジェンド化してみせる空気感は不要で、
フォーカスするポイントがズレたとしか思えない。




黒澤明監督が目指した、
鉄の塊である機関車の暴走と人間の無力感を対峙させる
直情型の骨太いドラマからは乖離してしまっているようだが、
ひとつの別モノ作品として見れば、見応えはある。






★★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。































・先週末は、東京に住まうようになって以来
かつて経験したことの無いようなハードな降雪で、
えらいことになったと、畏怖しながらも
みるみる積もりゆく雪に、何やらスリリングなものを
感じた次第。




で、翌日は何とも僕としましては、その経緯からして
ピントが合わない都知事選。

これまたドカ雪のあおりで、投票率も50%以下。



で、今週は新潟に出張しておりまして、
市内は雪はなかったけれど、
新幹線から見る越後湯沢一帯は吹雪の豪雪!!

で、都内に戻ると、今度は粉雪モード。
路面がシャーベット化。

雪とは何なのか?



そんなおびただしい雪と氷に包まれた地球を舞台に
人類への警告ともとれるメッセージを投じた作品が
「スノーピアサー」。




雪原を行く列車がどれほど魅惑的な画をもたらすかは、
過去のあらゆる作品によって証明済みではあるが、
つくづくそのビジュアルには心奪われる。



列車という乗り物の規則的なリズムを刻む移動感覚、
一度に大勢の人間を運びゆく力感と躍動感は、
ことさら映画という世界には、豊穣のイメージを与える。



「スノーピアサー」という映画は、
この大雪原の中を走りゆく列車の中だけで物語が進行する
SFアクション・ミステリーである。












●SNOWPIERCER (2013・韓国=アメリカ=フランス)
監督:ポン・ジュノ
原作:ジャック・ロブ バンジャマン・ルグラン
   ジャン=マルク・ロシェット「Le Transperceneige」
脚本:ケリー・マスターソン ポン・ジュノ








・蛮雑という言葉は、
野卑で野蛮で粗暴で乱雑、雑多という意味の
僕が勝手に作った造語だが、

この列車の中で展開する映画は
“蛮雑”そのものである。



そして、車窓の外に拡がる沈黙の銀世界は
途轍もなく美しい。




時は2030年代、
温暖化の対処策として地球上に振りまいた冷却剤が
効き過ぎて、大雪が降り、地表が凍り始めて
ほぼ地球の人類と生物は絶滅し、
氷河期のような状態になっている地球が舞台。



作品の主役は、ミステリアスな謎に包まれた
スノーピアサーという名の超大型の特急列車である。

どうやら1年かけて地球を1周するらしく、
列車に乗り込んでいる者たちだけが人類最後の生存者である。



しかも、
セレブは先頭側車両で豪奢な生活を営み、
下層の奴隷化した貧民たちは、
最後部車両で不衛生な生活を強いられている。



ここまでは設定としてのお約束事で、
この貧民たちが、反乱を起こして先頭車両を目指して
突き進んでいく、というストーリーである。



マット・ディモンの「エリジウム」、
ジャスティン・ティンバーレイクの「TIME/タイム」
を思わせる展開である。



前へ前へとあらゆる世界観に包まれた車両の中を
主人公たちが突破してゆく姿は、
ある意味、ゲームのダンジョンを進み行くのに似ている。



突破を阻む連中とのバトルの荒々しさも
いかにも無双シリーズのシューティングのノリで、



そして
先頭車両を牛耳るウィルフォードという怪しき人物と
先頭車両そのものの秘密、

これらの謎こそが興味の焦点。




俳優陣も、多品種雑多、曲者を配備している。

但し、主演のクリス・エヴァンスは
「キャプテン・アメリカ」や「ファンタスティック・フォー」の
俳優らしいが、残念ながらまったく魅力なし。
周りに完全に食われて、記憶に残らないパターン。



彼よりも、相棒の若僧を演じる
ジェイミー・ベルの方が雰囲気があるし、



ポン・ジュノ監督の「グエムル 漢江の怪物」のコンビ、
ソン・ガンホとコ・アソンが、ここでも抜群にイイ。



エド・ハリス、ジョン・ハートといった
渋い名優陣も登場するが、

最も驚かされるのはティルダ・スウィントン。
どーなってるんだ!?
ありえないほど強烈。まいった。




近未来ドラマとしては上々の出来なれど、

ストーリーを追いかけている中では、
そもそもこんな凝った列車が作れる技術を擁しているのなら、
特に走り続ける必然性はないのでは?とか、



設定が特殊なだけに、
特殊な部分に気を取られてしまうのが減点材料。



少々食い足りない部分や、矛盾もチラホラ、
バトルシーンでも間の悪い部分や説明不足の部分が目につく。



ただ、元々の原作がフランスのSFコミックである。

以前、記事を書いたエンキ・ビラルのバンカー・パレス・ホテル同様、
フランスコミックは、
クセの強いダークファンタジーの芳香を放つものが多い。

漫画的な流れで省略される展開はやむなきかなでもあり、
細部は、脚本の段階で映画らしく仕立てあげた風である。

冒頭の“蛮雑”というのはここらあたりの事を指している。




…とはいえ、
まあ、たまにはこんな殺風景なおとぎ話もよい。



何しろポン監督の気概が全編に映像としてあふれていて、
2時間超の大作を一気に見せてくれる。


ラストの描写が文芸タッチの気取りを見せるのも
悪くない。










★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。




































・「スティング」と同年、
チーム犯罪ものの隠れた逸品が作られている。

隠れたと言うからには、知る人ぞ知るの類なので
傑作という称号は相応ではないが、
僕はこのスリのチームプレーを描いた作品を
高く評価している。



これまでにも、何度も口にしてきたが
犯罪者や負け犬が輝いて見えるのは、
小説や映画の世界だけである。
現実社会では、アウトローが歓迎されることなどありえない。



そんなはみ出し者たちの映画が僕は無性に好きだ。

こんな奴らには、せめて映画の中では
大いに好き勝手なことを言い放ち、
時には感傷に浸りながら心情を語り、
次の瞬間には心行くまで暴れまわってほしいのだ。



この映画は、
小賢しいスリたちの世界にも、ルールが存在し、
こすっからい稼業の悪漢であればこその、
礼節をわきまえた行動基準が存在することを
見せる。



日本で言うなら、池波正太郎の世界である。

まるで「鬼平犯科帳」に出てくるような、
老盗が血気にはやる若僧に、
犯さず殺さず…という気骨と心得をたたき込む姿が
そのままここには登場する。

「黄金の指」は、そんな
らしからぬ匂いを持つ
チョッと気になる犯罪映画である。









● HARRY IN YOUR POCHET (1973・アメリカ)
監督:ブルース・ゲラー
脚本:ジェームズ・デヴィッド・ブキャナン ロン・オースティン
音楽:ラロ・シフリン







・スリを生業とする男たち、
文字通り“黄金の指”を持つジェームズ・コバーンと
伝説のスリ師でもある老人ウォルター・ピジョンが、



4人ユニットの高度なスリチームを編成するために、
若いカップルのマイケル・サラザンと
トリッシュ・バン・ディーバ―を引き入れて、
あざやかな手口でカモの財布を抜き取って行くお話。



4人には、各々役割があり
懐具合の温かそうなカモに当たりを付けて、
更には服のどこに財布が収まっているかを見抜く
「眼付け」、
これがご老体ウォルター・ピジョンの年輪芸、



そこへ現れるのが、カモの気を引く「オトリ」、
色香まき散らすトリッシュ・バン・ディーバー、



実行犯として財布を抜き取るのが「鉄砲」、
身のこなし鮮やかなジェームズ・コバーン、



「鉄砲」が抜き取った財布を、
こちらに向かって歩いてくる「サクラ」、
マイケル・サラザンに渡し、
「サクラ」は、これをご老体の「眼付け」へとリレーして
後は、バラバラに散ってゆくという仕掛けである。



これを、ロングの撮影で収めるスローモーションのシーンが
やたらと素晴らしく、現実には見たこともない
スリの連中の巧みなチームプレーが再現される。



この華麗にすら映るシーンが存在するだけでも、
作品の価値は高いと思うが、

若いカップルが、プロのスリに弟子入りして
修行を積む過程も丹念に描き込まれる。



この4人の関係が、
老人、中年男、若者という世代の違いと、
生き方の違いをじんわりとにじませるあたりも
実は芸が細かいのだが、

監督がTVのブルース・ゲラーという
無名に近い人物だったために、ずいぶん冷遇されたふしがある。



しかし、くくりはB級でありながら、本格派のルールを順守し、
エレガントな香りと、殺伐粗雑の悪の匂いを滲ませる。

ゲラー監督が、TVドラマの切れ味をちりばめて、
力む気などさらさらなく、たいそう巧く撮った作品だと思う。



以前、キューブリック監督の現金に体を張れの記事で、
犯罪映画の魅惑についてはその熱き想いを語ったので、
繰り返しはよすとして、

ワルイ奴らが悪事をはたらく。
そして、犯罪はどこかで失敗する。



観る側も、連中の大成功を願ってなどいない。
どこかで、
崩壊の序曲が奏じられることを承知している。

そんな朽ち行く者たちの破綻の美学が、
犯罪映画のハートでもある。



もちろんこの作品にも、その心意気があふれていて
哀切な輝きを残す。










★★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。
































アメリカン・ハッスルのように
数名のユニットが詐欺を仕掛けるストーリーは、
通常は詐欺のテクニックや策略を中心に据えた
娯楽作が多い。



古くは
アクション西部劇だと思われていて、意外と観ている人が少ない
フィルダー・クック監督の傑作「テキサスの5人の仲間」、
この映画の見事な仕掛けにはあっさり騙された。ハロウィン



その弟分にあたるのが「スティング」。
これにも、まんまと騙された。ハロウィンハロウィン



この手のコンゲームと呼ばれる、取り込み詐欺を描く作品は
痛快な仕立てのものが多く、騙されるのすら心地よかったりする。

「スティング」は、
こんなおもしろい映画があっていいのかというくらい
凝った仕掛けと、映画的なセンスにあふれた逸品。



今さら言うまでも無いが、
ジョージ・ロイ・ヒル監督の映像知性は抜きんでていた。
脚本も、映像も、キャストも、そして音楽も。



寡作家ではあるが、
ほとんどの作品が高いクオリティを感じる秀作揃いで、

ポール・ニューマン&ロバート・レッドフォードの
スターコンビをさらに輝かせた「明日に向かって撃て!」と
この「スティング」は、ロイ・ヒル監督の代名詞として
映画史に燦然と輝いている。



ロイ・ヒル監督の映画話法は第一に上品で、
複雑な題材を持ち出して来ても極めてわかりやすく、
豊かなプロの技芸を堪能させる。












●THE STING (1973・アメリカ)
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
脚本:デヴィッド・S・ウォード
音楽:マーヴィン・ハムリッシュ







・スティングというのは、突き刺す、という意味があり、
この場合、
詐欺の世界で使われるスラングで、
“騙し打ち”つまりは“ぺテン”の意味。



師匠を殺されて復讐を企てるチンピラペテン師の若者と、
手を貸すリタイア気味のいかさまギャンブラーが、
ギャングの大物をぺテンにかけようとする話。



1930年代、と言われても歴史背景以外、
アメリカの風俗までは映画やTVドラマでしかイメージ出来ないが、
舞台はシカゴ、
無法の嵐が吹き荒れるギャング真っ盛りのご時世、
キナ臭い空気も漂っている。



とは言っても同じ復讐劇でも、これはひと味もふた味も違う。
裏街道を歩くアウトローたちの気概と意地を見せる
リベンジストーリー。

小物が大物をやっつけるという筋立て、これが粋に響いてくる。



6つのプロットに分けられた物語は、
各々に、当時の人気週刊誌サタディ・イヴニングポストの表紙を
イメージしたノーマン・ロックウェル風の小見出しが付いていて、
登場したイラストに合わせた映像が現れるといった具合。



この映画のポスターも、ロックウェルのアートを意識した
こジャレたデザインである。



ドラマは、開巻から
スコット・ジョプリンのラグタイム曲「The Entertainer」の
気分のイイテーマ曲にのせられてテンポよく展開していく。



ノスタルジックな作品がブームの時代でもあったが、
この作品はタイトルのユニヴァーサルのシンボルマークからして
クラシックスタイルで始まり、



古いハリウッド映画には、当たり前のように使われていた
フェードイン、フェードアウト、アイリスイン、ワイプといった
古式ゆかしき撮影、編集のテクニックも駆使してみせる。



伏線の仕掛けも上級で、ひたすら凝っている。
知恵を張り巡らしたような映画そのものに
しっかり騙されてこそ真価ありである。



さて、ストーリーを語るのはご法度なので、
パイルにしては短いのでありますがハロウィン
このドラマ部分については、ここらあたりで寸止めに。




この見どころだらけの映画、
アンサンブルで魅せるキャストも素晴らしい。



ポール・ニューマンのオチブレた先輩詐欺師と




ロバート・レッドフォードの修行中の若僧詐欺師、

2度目の共演だけに息の合った最高に小粋な芝居を見せる。


対する敵役が、



この作品を足掛かりに、
ハリウッド作品に立て続けに出演することになる
暗黒街のボスに扮するロバート・ショー。





ボディガードが、「明日に向かって撃て!」でも
壁の穴ギャング団の鼻ぺチャカリーを演じていた
ロイヒル監督のお気に入りチャールズ・ディアコップ。


そして、
集められた詐欺師軍団の面々がまた素晴らしい。




ビリー・ワイルダー作品で器用なコメディリリーフを
こなしていた名バイプレイヤー、レイ・ウォルストン




「プライベート・ベンジャミン」の鬼軍曹がよかった
ニューシネマ時代の重要なひとつの顔、アイリーン・ブレナン




コメディからシリアスドラマまで、
飄々とした紳士の演技を得意としたハロルド・グールド




傍役街道一筋で、70年代以降、映画、TVの境界なく
あらゆる名作、傑作に顔を出したジャック・キーホー




いかにも銀行家やホテルマンの風貌を持つ、
TVを主戦場とするジョン・へファーナン




レッドフォードの詐欺の師匠の黒人じいさんが
息長く活躍した老優ロバート・アール・ジョーンズ、
名優ジェームズ・アール・ジョーンズのご尊父。

そして、



汚職のにおいプンプンの刑事に名優チャールズ・ダーニング、




FBIのエージェントに硬軟自在の個性派ダナ・エルカー、


といった具合にロイ・ヒル監督好みの玄人受けする
魅力的なキャラクターの傍役が顔を揃えている。



…に、しても
普通なら、からくりがわかったら、また観たくなるとは
なかなか思わないものだが、
この作品だけは、何度観てもおもしろい。



その完成度において、
ハリウッド映画のひとつの頂点とも言える領域を極めている
と言っても決して過言ではない。

監督が、エンターティナーとしての品位を重んじた
ジョージ・ロイ・ヒルだからこそでもある。











★★★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。




































・1月の映画見学録は、巻末に並べておきますが、
今年ここまでで、いちばん印象的だったのが、
昨日観ましたコレです。



「世界にひとつのプレイブック」の完成度を思えば、
この監督の感覚にブレはないのですが、
登場人物の人間スケッチ力がズバ抜けていますネ。



「ブロードキャスト・ニュース」という傑作が
ありましたが、
内容は全く違えども僕はアレを思い出しました。

イイ意味での既視感や懐かしさが漂うのは、
70年代後半のお話であり、



それを助長するファッションや、
シナトラからドナ・サマー、エルトン・ジョン、
スティービー・ワンダー、ウィングス、
そしてデューク・エリントンに至るまで、
ふんだんに盛り込まれる音楽の使い方も
巧みだからですネ。



どこかウディ・アレンの人間喜劇の作風を思わせ、
タランティーノが「ジャッキー・ブラウン」で見せた
センスの良さを思い起こさせます。



ただ、
この作品、日本でPRされているほどコメディではなく、
ポイントで展開するのはシリアスなおとなのドラマ、
狙っているのも明らかにおとなの世界、



しかも70年代の空気感、
若い映画ファンの方には、
ヤンキーのメロドラマにしかうつらないかも…。

ま、僕が心配する必要は一切ありませんけどネ。ハロウィン

そんな心地よい嘘つきだらけのアダルトな作品が
「アメリカン・ハッスル」。






●American Hustle (2013・アメリカ)
監督:デヴィッド・O・ラッセル
脚本:エリック・ウォーレン・シンガー デヴィッド・O・ラッセル 
音楽:ダニー・エルフマン









・実際にあったアブスキャム事件というのは
アメリカでは有名らしいが、僕は不勉強なので知らない。

収賄事件の摘発に躍起になるFBIが、
本物の詐欺師を使って囮捜査をやった事件だという。



元はと言えば、FBIがペテン師を逮捕するために
セコい罠を仕掛けて引っ掛けるところから始まるのだが、
これに引っ掛かったペテン師コンビ
(クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス)は、
アラブの大富豪を準備して、もっと大きなヤマを狙うことを
提案する。



アトランティックシティにカジノ建設を目論む市長が
財政難で苦慮しているところに目を付けて、
関係する政治家たち、引いては暗躍するマフィアを
一網打尽にしようと罠を張る大捜査へと発展していく。



このぺテンがスケールアップしていくプロセスは、
嘘が嘘を呼び、騙し騙されて、抜き差しならない事態に
発展するという危険と背中合わせでおもしろい。



こんな流れを見る限り、歴史的な事件と言うよりも、
関わった人物たちは、それこそいちいち肝を潰す思いで、
終始悪戦苦闘しながら、嘘を塗り固めて行かねばならず、
人生すらガタガタになっていく。



映画の描く愛憎のややこしい絡みつきと、
虚実入り乱れた駆け引きは、
妙に姑息だし、いかにも行き当たりばったりで、
騙している人間も、どこかで騙されていて
家庭争議のようなチープなおかしさがある。



危険な策略に巻き込まれた人物たちでありながら、
苦悩するのは実生活、実人生、家庭、愛人…といった
目の前に転がる身近な問題ばかり。



乱発するセリフ劇、卓越したセンスのシナリオの妙味。

この作品で特に巧みに描き込まれているのが
近づいたり離れたりを繰り返す人間関係の現実感。



監督の興味は、実はここに集中している。
それが紐解かれて行く後半、ますますこの作品と
登場人物たちを愛さずにはいられなくなる。




俳優たちが全員素晴らしい!



胡散臭さを漂わせながらも、
時には良心の呵責と家族への想いを募らせる
詐欺の極意を知り尽くし、嘘を手段に世渡りするオッサンペテン師。
クリスチャン・ベールが人間味あふれる人物として揚々と演じる。



誰だか判別できないくらいの凝ったメイクも絶品!




元ストリッパーからプロの詐欺師に転身していく
セクシーな女を演技力全開で見せるエイミー・アダムス、
こんな女でも愛の真実を求めているという姿はけなげで心に残る。



手荒な詐欺捜査を遂行していくFBI捜査官、
強引で傲慢で、誇大妄想気味の自信家をブラッドリー・クーパーが
体制側の権威と無法な詐欺の効力を利用する過敏な人物として演じる。


そして、



唯一、バカ正直なくらい自分の思いに忠実で、
誰にも嘘をつかない詐欺師の妻を演じる
ジェニファー・ローレンスは、ここでも素晴らしい!!!
泣く、笑う、わめく、魅せる、ついでに歌う、
五感すべてを同時に動かしているような
生命力あふれる女性の存在感は圧巻の一語。



堅実さといかがわしさを同居させた七三のリーゼントが時代を
思わせる人気者の市長にジェレミー・レナー。



ここにも出て来ますハリウッドの至宝ロバート・デ・ニーロ。


ついでに、チョッとマニアックにうれしかったのが


■ANTHONY ZERBE

悪役一筋の名バイプレーヤー、
御年77歳のアンソニー・ザーブが
政治家役でチラッと出演していること。
こんなところにも70年代の香りがする。









★★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。





★巻末付録★

1月の映画見学

・思ったより正月明けから忙しくて
新作は、週1本が精一杯。
なかなか映画館は行けませんでしたネ。

以下、レンタルや出張先のホテルで観た作品が
中心の1月でした。




■「大脱出」★★★
・プロのセキュリティ破りという、
変な職業もあったもんだが、それはそれとしまして、
アクションヒーローは、年取ってもクール第一であることを
しっかり実感させるお二人に、何か感謝したくなりました。
所長ジム・ガヴィーゼル、同僚エーミー・ライアンが出色。





■「地獄のヒーロー」★★★★
■「地獄のヒーロー2」★★★
・スタちゃん&シュワちゃんを見たら
もうひとりのB級アクションスターを連鎖的に
思い出すわけで、スタちゃんも一目置く男、
チャック・ノリスの代表作1,2を再見。
体型は武田鉄矢ながら、この男の寡黙さもタマリマセンね。






■「ブラッドアウト」★★
・後半に向けてどんどんひどくなるアクション映画。
最後はめまいがした。
太ったヴァル・キルマーも出てくるがパッとしない。
主演のスタイリッシュな坊主男が好きになれず往生した。






■「フラメンコ、フラメンコ」★★★★
・これは敬愛するカルロス・サウラ監督の
ボリュームあるフラメンコ映画。
スペインを代表するフラメンコの踊り手と演奏者たちが、
人の人生を21のスキットに分けて、ダイナミックに表現していく。
ひたすらフラメンコの神髄を見せるドキュメント編。






■「鉄くず拾いの物語」★★★
・予想通りの重量感ながら、
殺伐とした感触のドキュメンタリータッチは、
格差構造の生み出す貧困の存在を提議して
更に重い疲労感を残す。
貧しさは何故生まれるのか?…お金か?
それだけではないんじゃないか?
という問いかけに答えは無い。






■「エンドゲーム 大統領最後の日」★★★
・大統領暗殺を救えなかったシークレットサービスという
イーストウッド主演映画と同じ設定ながら、
ひねりを効かせたラストがポイント。そこそこ見せます。
俳優陣は地味で、
主演のキューバ・グッディング・Jrが、ややパンチ不足。
出番はそこそこながら、主演の弱い作品の格を少しでも上げるべく、
ジェームズ・ウッズとバート・レイノルズが出演。






■「逆転法廷」★★★
・TVで裁判を放映して視聴者が陪審員になるという
なんだかおもしろい題材を、今ひとつの脚本ながら、
何とかアイデアひとつで見せてくれますネ。
ロイ・シャイダーが出ているというだけで観た未公開作。






■「ドミノ」★★★
・キーラ・ナイトレイのヌードに興味ありの方は必見!
名優ローレンス・ハーヴェイの娘でモデルだった女性が
賞金稼ぎの道に足を踏み入れていくという実話を元にした作品。

実話どころかいつしかフィクションに変貌して呆気にとられますが、
俳優陣はミッキー・ローク、ルーシー・リュー、
ジャクリーン・ビセット、クリストファー・ウォーケン、
デルロイ・リンド、トム・ウェイツ、ダブニー・コールマン、
あと「ビバリーヒルズ青春白書」の出演者らがゾロッと出て来ます。
…の割には、
トニー・スコット監督の切れ味が違う方向に走ってますネ。




・あとは昨年来、CSの特集で録りためた
勝新太郎の座頭市を、まとめて観ております。
静と動の落差がエキサイティングな空前の殺陣は神技ですネ。



意外と好きなのが、
市が赤子を抱えて旅する「血笑旅」、これは傑作です。



■「座頭市 血笑旅」★★★★
■「座頭市と用心棒」★★★★
■「座頭市 あばれ凧」★★★
■「新・座頭市 破れ!唐人剣」★★★