・ポール・ウィリアムズが手掛けた映画音楽で
リズミカルなスコアが印象的だったのが、
オール子役キャストによるギャング映画「ダウンタウン物語」。
個人的に大好きな1本!



ウィリアムズは、自ら例のハスキーボイスで
主題曲を含むいくつかのナンバーを歌っている。






●Bugsy Malone(1976・イギリス)
監督・脚本:アラン・パーカー
音楽:ポール・ウィリアムズ ロジャー・ケラウェイ♪







・この作品、ジャリっ子映画などとあなどるなかれ、
その徹底したギャングムービーのクラシックな作風と
本格派ミュージカル映画仕立てのクオリティの高さは超一流。



ベビーフェイスのゴッドファーザーといった感じだ。
ポール・ウィリアムズの主題曲と共に
気だるい滑り出しのオープニングの雰囲気もイイ=♪♪



子役たちの髪型も衣装も、
すべて1930年代のオールドエイジを細やかに再現。
往年のアメリカギャング映画はいかにもこんな感じ。



振り付けに至っては、
チビッ子たちがプロ並みのダンスと身のこなしを見せる。



ギャングスターの映画なら、
残酷な虐殺シーンや血糊はどーするかと思いきや、
そこはなんともごきげんな創意工夫がなされて、
すこぶる楽しい一編を生み出した。



オリジナル・タイトルにある「バグジー・マローン」は
主人公のイカしたギャング(スコット・べーオ)の名前で、



歌手を夢見る小娘ブラウジー(フローリー・ダガー)との
ラブロマンスを織り交ぜながら、



暑苦しいファット・サムと、
クールなダンディ・ダンなるボス率いる
2大ギャング組織の抗争が展開するという



よくあるアメリカ製暗黒映画のプロットを、
芸達者な子供たちが大芝居で見せる。



よく日本のドラマや映画で見かける
棒読み芝居を修正しきれていない半端な演出とは異なり、
傍役に至るまで徹底して熱量の高い演技をさせている。



まだ子役時代のジョディ・フォスターが
ボスの情婦役で出演、
既にオトナ顔で妖艶なルックスは異彩を放っている。



フィナーレも、何度見ても気分がイイ♪



さて、この映画は音楽も、子役たちの芝居も、
クオリティが非常に高いということと、
映画的な遊びが上手な作品であることと、

BGMとして僕が何十回もリピートしていること以外
他に話すことが無いハロウィン



思えば、作品のムードそのものを愛してしまう映画は、
語るにあたわずで、自分だけの思い入れというものを、
どこまでも大事にすればよいのだと思う。



そーゆー映画の1本や2本はどなた様にもございましょう。音譜



さて、それはさておき
イギリス出身のアラン・パーカー監督、どーしたもんだか?
その後、ハリウッドに呼ばれてからは、
この新鮮さはどこへやら?いきなりアクの強い作風へ路線変更。



脚本を書いた「小さな恋のメロディ」で見せたやさしい視点も
本作の根底に流れる映画愛も微塵も見せなくなった。



気のいい高校生が、ある日突然過激な反抗期を迎え、
いきなり親父を殴り始めたよーな転身振りで驚かされたひとりだ。



何かあったのか?というくらい違う存在感を作り上げて、
多分、社会派寄りのドラマを作る監督という印象を持つ御方も
多いんじゃないかと思う。



そんなジキルとハイドみたいなパーカー監督のデビュー作は、
格調高い遊び心とでも言うべきセンスの良さがあふれている。











★★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。























・一番好きなブライアン・デ・パルマの作品は、
迷うことなく「ファントム・オブ・パラダイス」。



学生時代、名画座のオールナイトで初見した時から、
出会えてよかったといまだに思う愛すべき1本。



ロマネスクホラーとして、ひとつの古典とも言える
ガストン・ルルー作の「オペラ座の怪人」を下敷きに、



「ファウスト」の一幕や、「フランケンシュタイン」、
「ドリアン・グレイの肖像」、「カリガリ博士」、
ヒッチコックの「知りすぎていた男」「サイコ」等の
めくるめくお遊びエッセンスを巧みに盛り込んで、



ホラーテンションの高いロックミュージカルに仕立てた
デリシャスな一作。



この作品が無かったら、
デ・パルマ監督はホラーからアクションまでをこなす
器用な職人監督ということになってしまうところだが、

独自の珍妙怪異な展開を、遊び心あふれる音楽劇にアレンジして
異様な才気を炸裂させた。

しかもこれを低予算で完成させたセンス、
これぞプロの技。







●Phantom of the Paradise(1973・アメリカ)
監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ
音楽:ポール・ウィリアムス♪♪









・ストーリーは、今やよく知られている
「オペラ座の怪人」がベースだから、
ミステリアスなメロドラマとはいうものの、
完全にブラックな匂いがたちこめている。



もっとSFチックで、もっとホラーチックで、もっとコミカル、
チクチクする薄気味悪さは当然ながら、
エログロ度数もゲテモノスラッシュ映画にならないよう
自在に調整されていて、楽曲を挟み込むテンポもヨイ。



その音楽は、70年代を感じさせるロック中心ではあるが、



滑り出しでタイトルとして登場する、
やや場違いながらも見事に作品に引っ張り込まれる
50年代オールディーズなコーラスあり、



ピアノの弾き語りによる壮麗なるカンタータあり、
ハウス風のインストゥルメンタルあり、
カントリーロック風のバラードあり、



アリス・クーパーのステージを思わせるへヴィメタあり、

静動ロックの乱脈振りと波状攻撃が、
時代を反映した音楽の宝庫とも呼べる完成度。



ポール・ウィリアムズプロデュースによる
この作品の音楽は本当に素晴らしい!




『ん?あら、こんなところでまたお会いしましたね、
 はい、せっかくですから、わたしも何か申しておきましょうね、
 これは楽しいB級映画の魂、哀しいホラー映画の香り、
 本当に本当に音楽が素晴らしいオペラみたいな作品ですよ♪』



デ・パルマ監督が
恐らくここで初めて見せた軽量感あふれる映像との融合は、
悪趣味とも言えるバラエティー感覚にあふれている。

死語を引っ張り出してくると“キッチュ”そのものハロウィン

…以上が、この作品の見どころ。



あとは、僕が語るに足らずで、
まずはデ・パルマ監督の作りしパフォーマンス・ムービーに
接触しないことには、
その空気感を言葉に変換したところで意味はない。



これはそんな、見る・聴く・感じる映画である。



その後、
現在のPVに至るミュージック・ビデオ史に大きな影響を与えたという
カメラワークのなめらかさとPOPな映像、
美術デザイン、騒々しいスペシャルなメイク、衣装のオンパレードは
見るにつけ楽しいの一語。



当時の音楽多用映画としては、
伝説のカルトミュージカル「ロッキー・ホラー・ショー」や
ロックオペラと称した「TOMMY トミー」などのように
マニアック色の濃い作品である。



但し、中でも「ファントム~」は、多機能高性能と言っておきたい。




毎度のことながら、デ・パルマ映画らしく、
俳優の選抜がGOOD JOB!!

…主人公の“怪人”ウィンスローは





「悪魔のシスター」でも怪演していた
ウィリアム・フィンレイ



ヒロインの歌姫フェニックスに「サスペリア」の
ジェシカ・ハーパー



宿敵の悪魔のような音楽プロデューサー・スワンに
音楽も担当したポール・ウィリアムズ



実は×××な
ビジュアルマッチョ系のグラムロッカー“ビーフ”に
「ユーズド・カー」「ボーイズ・ライフ」のゲリット・グレアム

あとは、変なのがいっぱい出てくる。ハロウィン





さて、そんな類稀なる究極の1本をドリップした
異才デ・パルマ氏は、「キャリー」の大ヒットで、
プロダクションとの衝突や降板劇を繰り返しながらも、
結局、ハリウッドの商業ベースに乗っかってしまう。



この作品で魅せつけた
他を寄せ付けない個性的なパワーを捨て去ったのは残念だが、



それ自体が、まさに
「ファントム・オブ・パラダイス」を地で行くような、
悪魔に魂を売るファウストの話そのもので、
この人らしいと言えばこの人らしい。



その後は、愛するヒッチコック風サスペンス映画に傾倒して、
大作などを仕切る本格派職人監督の帝王として君臨して行くが、
ただ、この人の心の中には
主役ウィンスローの悲痛な叫びと無念の姿がその後も生きていて



「スカーフェイス」の
アル・パチーノ扮する成り上がりのチンピラ・トニー・モンタナや
「アンタッチャブル」の
ショーン・コネリー扮する老警官ジミー・マローンの
凄絶な死に様の中でリフレインされることになる。



それでもまだ足りなかったようで、「カリートの道」で
アル・パチーノは再度、この無念の姿を違う形で披露して見せた。



一見物静かに見えて、実は過激で雄弁、
そんなところに意外な魅力を感じさせる監督である。



僕は、「ファントム・オブ・パラダイス」こそは、
デ・パルマ監督自身が、男として終生抱えているテーマの
ひとつの原点を見せた映画だと密かに思っている。









★★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。
































ホラー洋画劇場Vol.27






SISTERS●SISTERS
(1973・アメリカ)

監督:ブライアン・デ・パルマ 
脚本:ルイザ・ローズ ブライアン・デ・パルマ
音楽:バーナード・ハーマン♪





はい、みなさんまたお会いしましたね

あなたはお姉ぇやんおられますか?

お兄ぃやんおられますか?

妹さん弟さんおられますか?

血を分けた兄弟、姉妹
大事にされてますか?



またいきなり妙なこと聞きよるなぁ、
そんなこといいから早う映画のこと話せ、

はいそうですね、
今日の映画は「悪魔のシスター」言いますな
「悪魔のシスター」、



わたしは、見ての通り悪魔が出てくるお話が大好きですね、

何?見ただけじゃわからん、
そうね、人の心の中に何が棲みついておるかは
他の人にはわかりませんね

親でも、兄弟でもわからない…



けれども、ここに出て参ります姉妹やったら
わかるかもしれん。

これは、そんなお話ですよ。

わたしは悪魔のお話が楽しゅうてたまらんのね、
不謹慎な人間ですなあ。アハハ~
いや、人間言うよりも、悪魔と血を分けたんかもしれませんな



「悪魔のシスター」、悪魔ですからわたしはこれも、
最初は、どんな悪魔が出てくるかしらん思うておりましたら
違うんですね

心の中に潜んでおる悪魔のことですね



この映画、原題を“SISTERS”言いますね、
シスターズ、
姉妹、どんな姉妹でしょうね、

えっ?なになに? 叶とか、こまどりとか、阿佐ヶ谷姉妹?
とんでもない、



はい、映画が始まりますと、
まだ母親のおなかの中におる胎児の姿が
いきなり出て参りますな

これがだんだん人間の形になってきよるなあ、



そうね、この映画、
ようやく人間らしい姿になっていく胎児の
なんともしれん不気味な映像から始まりますね

そこにタイトルが、SISTERSと出ます

何のことやろう思うておりますと、
タイトルの終わりのカットで
胎児がふたり出た!



あらま、SISTERS言うのは、このことやったんかと
わかった。
シスターズ、このシスターは双子なんですね

はい、ビックリしますけれども
これが、実は
生まれながらにして体のつながった双子なんですね



そうね、ここに出て参ります姉妹は、
シャム双生児なんですね、

この双子には秘密があります。
どんな秘密か、それは申せませんけれども



こわいこわい秘密があるんですね…




はい監督は、



皆さんよくご存じのブライアン・デ・パルマ、
上手にいろんな映画撮る監督さんですね。

この人、見事なサスペンス映画を何本も撮りました
あのヒッチコックが好きで、好きで、
観ておりますとヒッチコックの映画の有名な場面を
ちょこっと真似して見せますね



ですから、好きこそものの何とか言いますけれども
どの映画もサスペンスの場面は
ヒッチコックのタッチを感じさせるんですね



主演は、マーゴット・キダー、
「スーパーマン」でヒロインやった女優さんですね
この作品で注目されましたな



その別れた夫がウィリアム・フィンレイ、
デ・パルマ監督の映画の常連さん、
見た目よりも器用な俳優ですね



ひょんなことから事件に絡んでいく
気の強いジャーナリストが、
テレビで人気のジェニファー・ソルト、



調子のいい私立探偵が、当時売り出し中の
チャールズ・ダーニング

それから、



「LIFE」誌の老ジャーナリスト役で、
バーナード・ヒューズも出て参ります。

いかにも、ちょっとクセのある顔の役者集めましたな


はい、これはいっせんきゅうひゃく73年度の
アメリカ映画です



当時のオカルトブームに巻き込まれて
手荒な扱いをされましたけれども、
これはブライアン・デ・パルマ監督が、
正統派のスリラーに、
いろんな味付けをしました異色の作品ですね

その後の作品のデ・パルマタッチがチラチラ見られますよ



みなさん
どうか、そのあたりをじっくりご覧くださいね


それではあとで、またお会いいたしましょ






この映画は、

黒人の男が、
ロッカールームで着替えをしとるところから
はじまります。



そこへ盲目の女性が入ってきて、
男がおるのに気付かないで服を脱ぎ始めるいう
なんともあなた、いやらしい、いやらしいところから
はじまるんですね。



けれどもここから、早速
おかしなトリックが仕掛けてありますね
こういったいたずらが大好きな監督さんなのね

そんな余興が終わってからが本番ですね



アタシおなかが空いたわ、言うて
女性が、黒人の男に甘えてくるのね



さあこの黒人のやさ男、調子に乗って
女性と高級レストランに食事に行きますね



女性は、なんともしれん、妙チクリンな
訛りがきつい英語をしゃべるんですね、

アタシ、フランス系のカナダ人なのよと言いますな
ここにもひとつ仕掛けがあるんですね



お酒を間に、ふたり楽しく食事をしておりますと、
ぬーっと、いきなりヒゲ生やした妙な顔の男が現れますな



女の昔のだんなさんなんですね

こいつがしつこくからんでくるんで
黒人の男は、お店の警備員を呼んで
つまみだしてもらいますね



そうしまして、女をアパートまで送って行った。

そうですね、この映画、
いやらしいところから始まったので、
この後、男と女がどうなるか、みんなわかるのね



そうして、ふたりはソファーで抱き合い始めた…

ところが、
観ている方は、ギョッとしますね、
ここで女の秘密をチラッと見せるんですね



はい、夜が明けまして男が目を覚まして
身支度しておりますと、
何か言いあう声がする、



女性二人が
喧嘩しとるみたいだな、
英語じゃなしに、これがフランス語なんですね

どうゆうことでしょうね?



けれどもこの後、
とんでもない恐ろしいことが起こっていくんですね、
びっくりしますなあ



女の部屋でえらいことが起こるんですね
それを向かいのアパートの女性が目撃しておった!



ここからだんだんだんだん、
怖いことになっていきますね














はい、いかがでしたか?
悪魔のシスター、

姉妹でも所詮、別の人生を歩む、
双子でも同じ、別々の人生を歩む、

けれどもシャム双生児だと、どうなるか…?

そんな怖いことを思いついて作られた映画ですね



あんまり観たことないタイプの
映画でしたけれども、
妙なクセがあって
おもしろうございましたね



こんなちょっと毛色の変わった映画を撮るのが
ブライアン・デ・パルマですね



そんな
ブライアン・デ・パルマのお話をしましょうね



この人は、最初申しましたように
あのアルフレッド・ヒッチコック監督の、
そしてヒッチコック作品の
大ファンですね

特にキャメラのアングルに影響受けたんですね。



ですから大胆にも、最初の頃は
作品のあちこちに、
ヒッチコック映画のいろんな場面をそっくり真似して
再現して見せましたね



映画をお好きな方でしたら、
ははぁ~ん、これはあの映画やなって
わかるんですね



大監督の真似しよるとはけしからんと、
そこで好き嫌いが分かれましたけれども、
よく見ておりますとそれだけの監督じゃありません。



この映画でもわかりますように
チョットした仕掛けを、次々に仕掛けて
すぐに種明かししながら、
また新しい仕掛けを作って、また種明かしする

そんなわかりやすい見せ方をする人なんですね



わかりやすい、おもしろい映画を撮る。
そうですね、ヒッチコックの一番いいところも
ちゃんと真似しているんですね



妙にひねらず、お客を飽きさせないように、
謎を放っとかないで、
ヒントをいっぱい出してくるんですね。



それからもうひとつ、
ヒッチコックのユーモア、ウィット、
これも受け継ごうと、細かいところに
その心意気をちりばめております。



ここでは、
チャールズ・ダーニングの探偵、
ケーキ屋のふたりのおばさん、
主人公の母親のような
なんでもない存在の人物にいちいち
キャラクターを持たせて、印象的に見せますな



ブライアン・デ・パルマは
そんな小粋な、
そんなモダンなモダンな監督ですね。



はい、もう時間きました。



それでは次の作品、ご紹介いたしましょ




次回は、同じくデ・パルマ監督が
スティーヴン・キングの原作を映画化しました
『キャリー』ですね



どうぞ、たのしみにお待ち下さいね




それでは
次回もこの時間、お会いいたしましょう


$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★



サイナラ、サイナラ、サイナラ







★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。






























・本当にトラウマになってしまう映画というのが
誰にも1本くらいはあるもので、
僕の場合は、いくつかある中でも
トッド・ブラウニングの「フリークス」が最上位。



エレファントマンは、
畸形の難病者を扱った初のメジャー映画だが、
こちらは上映禁止にまでされたタブー色満載の
本物の畸形、異形者を登場させたデンジャラスな作品。





●Freaks(1932・アメリカ)
監督:トッド・ブラウニング

脚本:ウィリス・ゴールドベック レオン・ゴードン
   エドガー・アラン・ウールフ アル・ボースバーグ












・「フリークス」は、サーカス一座のお話で、
見世物として不遇とも思える身体をさらすことで糧を得る
小人、奇顔、双生児、五体の一部を失った者、両性具有、
なんとヒゲ女なんて者も出てくる。



ただ断っておきたいのが、

健常者のつまらぬモラルから見たデンジャラスさであって、
トラウマになってしまうのは、誰しもそうそう見たことのない
畸形の人物たちが大挙登場することへの衝撃に過ぎない。



映画として不健康とか不道徳という事では全く無い。
むしろ、
世にあふれる趣味の悪いホラー映画群の方がえげつないものは多い。



ここに描かれる世界観は、ブラックユーモアにあふれた
ホラー喜劇と呼ぶべきウィットさえ感じさせるもので、
「エレファントマン」が、同情という視点を持っていたのに対し、
「フリークス」は、正反対と言ってもいいほどの
無邪気に振る舞う彼らの姿を見せる。

これに心揺すぶられない人はいないはずだ。



だからこそ、衝撃度の高い圧倒的なラストが
最大のトラウマとなって脳裏に焼きつく。



しかも、
ストーリーの基軸はクラシックスタイルのメロドラマであり、
不朽のシンプルな恋愛劇である。
そこにホラーと呼べる皮肉な復讐劇を織り込んだ。



監督のトッド・ブラウニングは、
サーカスの呼び込みからコメディアンになった人物らしく、
物議をかもした本作を、たった1本生み出したことで
歴史に名を残すこととなった。



ある意味トッド・ブラウニングという人の、
婉曲のやさしさをも感じさせる作品なのだが、

当時の倫理観では、到底扱い切れないであろう
強い毒気を孕む展開に、
初めてご覧になった時には絶句されると思われる。



手足の無い登場人物が、煙草に火を点けるという
曲芸とも言える技を披露するシーンのように、
本作は「観る」ための映画であり
「語る」ための映画では無い。

そして、とんでもない映画である。



よって、
放っておけばいくらでも喋るパイルも、
この映画だけは、
自己責任としてご覧になられる有志の方にのみ強くお薦めして、
本日の記事は完了と致します。







★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。

































・“ワルツ”ということでつなぐと
まず思い出すのは、
オードリー・へプバーンの「昼下がりの情事」で流れる
♪「魅惑のワルツ」。



「アダムス・ファミリー」の指パッチンで始まる主題曲も、
気分のよくなる1曲。




そして、
耳に残っているというより、耳に焼き付いているワルツが
メル・ブルックス映画の音楽で知られるジョン・モリス作曲、
♪「エレファントマン」の主題曲。



映画「エレファントマン」は、
製作総指揮がメル・ブルックスとスチュアート・コーンフェルド、

コメディ専門の監督と製作者コンビというのも興味深いが、
ジョン・モリスが音楽を担当したのは、このつながり。


■MEL BROOKS

マスクを剥ぎ取る瞬間で寸止めするという、
予告編の見世物小屋風の煽りもあって映画は大ヒット。



但し、
デヴィッド・リンチ監督のモノクローム映像は
古風なドキュメンタリーフィルムの匂いを放ちつつ、
リンチ映画特有の醜悪な悪意も滲ませるというあざとさがあった。



主人公の悲劇と、周囲の人物群による不快な人間喜劇の
両面を交互に描き、観る者をある種の動揺で包む。



そんな、目に見える悲痛な叫びと、
人の隠し持つ見えない欲望の在り方が、
目にも深々と焼き付いて、残酷な重みをもたらす。









●The Elephant Man(1980・イギリス=アメリカ)
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:クリストファー・デヴォア エリック・バーグレン
&デヴィッド・リンチ
音楽:ジョン・モリス♪






・初めて映画館で観た時に、
観なければよかったと、かなり後悔した1本でもある。



理由は、
フリークスとして扱われた実在の人物の物語であり、
そこにはあらゆる人々の好奇の目線と
恐れおののく姿がつぶさに描き込まれているからである。



そんな怖いもの見たさと寸分違わぬ
自分の中にある卑しき好奇心と、ドラマに登場する人物たちの
視点が重なることの薄気味悪さがあった。



エレファントマンという、想像以上の存在が現れて、
驚嘆させ、戦慄を撒き散らしておきながら、
正当な道徳観で、ウエルメイドにまとめあげた物語は、
いかにも当時の青臭い自分には受け入れられなかった。



一言で言うと、
メディアが美辞麗句を配して書き立て、扇動していた
美しきヒューマンな名作などではなく、
毒にまみれた卑俗なストーリーに見えてしまったのだ。



今でもさして変わらぬ印象のままで、
どうしても、
難病患者をビジネスや、社交のネタとして利用するべく
きれいごとの範囲で世にさらした人々の話として
見えてしまう。



ずいぶん前に、強烈なイギリス映画
マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって
演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺

のことを書いたが、

TVも映画も無い、正にこの作品の背景となる19世紀、
娯楽を求めた上流階級の人々は
精神病院を訪れて、患者たちの姿態を眺めることを
享楽のひとつにしたという。



金と時間をもてあますセレブなる人種の所業は
時として異常の沙汰としか思えないことがある。

この映画には、その要素が見え隠れする。



そうではないという、
人の下心を覆い尽くすほどの説得力を持ち得ているのは、
ひとえに、
演技派で固めた英国俳優陣の力量によるものだと思う。


主人公の“エレファントマン”こと
ジョン・メリック(ジョン・ハート)に接する人物たちが


その異形と病状に衝撃を受け、
親身になりながらも研究材料にする外科医が
まだ若き頃のアンソニー・ホプキンス


見世物小屋で、エレファントマンをネタに日銭を稼ぐ
悪辣な興行師が「そして船は行く」のフレディ・ジョーンズ
あまりにも、彼の芝居が見事なので、
こいつだけが悪の元凶に見えてしまうくらいだ。


社交界に通じた高名な女優が
先に挙げたメル・ブルックス夫人のアン・バンクロフト
この人物は曲者だ…と僕は思った。


ジョン・メリックの治療のために募金を募ることを
推進する院長が、名優サー・ジョン・ギールガット


寮長役で重厚な演技を見せるのは、
デルバート・マン監督「旅路」のホテルのオーナー役が
印象に残る舞台女優ウェンディ・ヒラー

名優たちの密度の濃い芝居が、
作品が曖昧にしている部分に強弱と節目を付ける。



エレファントマンは弱い。



排他行為にただオタオタするしかない。
同じ見世物でも、キングコングとはえらい違いだ。
弱すぎるから、ひたすらいじめられる。



しかしながら、ひねくれた心情の持ち主ではなく、
どちらかと言えばピュアな人物として描かれる。

かといって、
そこを感動に直結させる物語では無い。
そのねじれた作風が誤解を生む。



逆にもっと歪んだものを見せてくれた方が、
損得尽くの偽善に当てた焦点が明確になり、
収まりの付くストーリーだと思う。




絶望と安寧を併せ持つ終幕の見せ方は
映画としての、ひとつの答えの出し方である。

世俗に対する辛辣な眼差しを幾度か光らせるところは
唯一の救いにすら感じられるものの、



果たして、
不具なる実在の人物を題材に、
虚飾とフィクションを織り交ぜながら
映画として作り上げたこと自体にいささかの疑問が残る。


ジョン・モリスの哀しみをたたえた流麗な旋律だけが救いである。






★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。