・公開本数も少なく、
観る機会には恵まれないロシア映画だが、
時折、驚くほど魅力的な作品に出会うことがある。

例えば、
以前、記事にした「妖婆 死棺の呪い」などは、
クラシックな怪奇映画の中でも傑作の部類。

ロシア風スタイリッシュともいうべき、
アメリカ映画やヨーロッパ映画とは異なる
特有のテンポと間合いがある。

スタイリッシュと言えば聞こえはいいが、
どちらかと言うとズブいくらいの行間を挟み込む。
気持ちイイくらいユルユルである。

これが、
狙ったわけでもない詩的な叙情や好意的な余韻といった
空前の効果をもたらす。

「不思議惑星キン・ザ・ザ」も、
ロシア映画ならではの、この気風を最大限に発揮する
かけがえのないSF映画の秀作。

●Кин-дза-дза!(1986・ロシア)
監督・脚本:ゲオルギー・ダネリヤ
脚本:レヴァン・ガブリアゼ

・この星では、
“キュー”というのが、
唯一使用可能な罵詈雑言を表す言葉で、
“クー”というのが、
残り全部を表現する言葉である。

こんな大雑把の限りを尽くした設定からして、
既に人を食ったような仕掛けなのだが、
このシンプルさゆえのやさしい興奮と小さな感動が
全編を覆っている。

…見渡す限り砂漠の惑星キン・ザ・ザ、
荒廃した挙句の砂漠なのやら、
摂理に任せた自然の砂漠なのやら不明だが、
殺伐とした大地に埃っぽい空気感が漂う。

見るからに不衛生なたたずまい、
原始指数の高そうな野蛮で小賢しい住民、

しかし、
どうやら科学の一部分だけは高度で、
見かけはともかく、
飛行する機体を常用の交通手段として使いこなし、
星間移動という先進技術を擁するほど進んでいる。

その突出した技術のために、
時空間で翻弄される二人の地球人の脱出劇。

文明と科学によるギャップをベースに
異星人同士のコミュニケーションの間の悪さと、
停滞しながらの無骨な交流の過程をコミカルに見せる。

見たことのない俳優ばかりだが、
個々が見せる存在感は素晴らしい。

横着ながらも目端の利く惑星の住民ウェフ、
エヴヂーニー・レオノフ

その相棒で、多少は常識のありそうな長身のピー、
ユーリ・ヤコヴレフ

バイオリン弾きと名乗りつつ、
鬱陶しいくらい自己主張するグルジア人の学生、
レヴァン・ガブリアゼ(作品の脚本家でもある才人)

ビジネスマンらしい取引のルールを応用し、
脱出の糸口を探る建築屋の主人公ウラジミール、
スタニフラス・リュブシン
そして、

この4人の漂流に奇妙な異種異相の惑星人らが絡み、
運気を左右し、秩序なき妨害と危害を加えてくる。




思わぬ流れからストーリーは一気に転機を迎えるのだが、

タイムスリップの原理を利用して
二人の地球人が見せる心意気が胸を打つ。

ストーリーとは何の関係も無いシーンだが、
“最後の息”と名付けられた
ヨレヨレの紙風船が宙を舞うシーンが出てくる。
どうやら、この星ではこれが墓なのだという。

命のはかなさをコンパクトに見せる
いかにもSF映画らしい秀逸なイメージに感嘆させられる。

心のすき間にゆるい浮遊感を与えてくれる
愛すべき童話のような印象深い作品である。
★★★★★
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