
・「レッドオクト―バーを追え!」
原子力潜水艦レッドオクト―バー号の艦長ラミウスは、
亡命が未遂に終わると悟った時に、自沈の道を選ぶ。。
「タイタニック」のスミス船長は、
最後の任務である豪華客船の処女航海で、思わぬ判断ミスから
大災害に遭遇し、ついには船と運命を共にする道を選ぶ。
船の災害を描く映画も数々あれど、
多くの史実も残されている。
その航海の数だけ船長=CAPTAINがいる。

船に限ったことでは無いが、
乗客、あるいは乗組員の生命をも同時に預かる責任の重大さは、
計り知れない。
2009年に発生して世界中に報道された
ソマリア沖の海賊によるアメリカのコンテナ船襲撃事件。
キャプテン、リチャード・フィリップス。
ここにもひとりの船長の命を賭した息詰まる闘争の記録があった…。

一瞬緩んだセキュリティーの間隙から侵入する魔手の恐怖と
精神力の限界まで追いこむ途轍もない暴力行為、
我々の日常の中にも同様な危険は潜んでいる。

抵抗は傷口を広げるものだが、
最低限の危機管理は自ら準備しておくべき物騒な時代でもある。
● CAPTAIN PHILLIPS(2013・アメリカ)
監督:ポール・グリーングラス
原作:リチャード・フィリップス「キャプテンの責務」
脚本:ビリー・レイ

・甘く見ていた。
この緊張感はただごとではなかった。
予測を遥かに超えた物凄い殺気と、
究極まで追いつめられた船長の姿に言葉を完全に失った。
ただただスクリーンに見入るのみ…
本気で揺さぶってくる真剣勝負の1本。

映画「キャプテン・フィリップス」は、
人質にとられた恐怖と、果てなき不安の地獄を
観る者にも追体験させる
アメリカ政府の威信を賭けた人質救出作戦のドラマである。

昨年の「アルゴ」でも克明に描かれた
海外でのCIAの人質救出作戦、
ここではオバマ大統領の勅命を受けたアメリカ海軍の
特殊部隊ネイビーシールズによる絶体絶命の救出劇が展開する。

物語は
仕事柄、留守がちの夫と妻のゆるやかな会話から始まる。
もう若くはない夫婦、口数も少ないが
互いを想う気持ちのやりとりは、ある意味温和でもあり、
慣れ合いがある分、緩慢でもある。
ところが、これは嵐の前の静けさであった。

それを一気にひっくり返す
ソマリア海岸線での海賊集団の異様な出航風景、
武装した若き漁師たちを乗せた小型ボートが、
獲物を求めて沖へと突き進んでいく。

恰好の餌食とされたのが、救援用の貨物を積んだ
アメリカ船籍の非武装船マースク・アラバマ号。

連中の狙いはお金、しかも億単位の大金。
それ以外は興味がない。

人質を捕縛して、保険会社を巻き込んだ闇の取引へと
持ち込む悪辣な手法を用いて身代金によって大金をせしめる。

単に横暴な海賊かと思いきや、こいつらがとにかく野蛮、
絶えず危険度MAXのテンションを振りまき続ける。
聞き分けのないスタンスは、凶暴種の奇獣まがいである。

貨物船は持てる装備すべてを駆使した必死の抵抗の挙句、
ついにはたった4人の海賊に乗っ取られてしまうのだが、
ここから、一時も目の離せない攻防が始まる。

この作品が見事なのは、
アメリカの一方的なノンフィクションの救出作戦に終結させず、
奪う側奪われる側の両面からの視点と論理を重んじたこと。

人質とされたアメリカ人の船長と、海賊のリーダーとの会話の中に、
ソマリアが背負う暗黒の部分をチラッとにじませる。
リーダーが口にする
「アメリカだったらな」
という何でもないひと言は、深々と突き刺さってくる。

それは魂を誰かに売った者が口にする冷ややかな一語であり、
何処にも届かない貧しく病める者からしか絞り出ることのない
切実な遠吠えでもある。

ポール・グリーングラス監督は、
「ユナイテッド93」以来、中立視点から描く技を持つ人で、
ここでも天下国家の政治色を無駄ににじませたりしない。

ジャッジメントは観る者に委ねて、ドキュメンタリーのスタイルで
ガンガン押し切って行く。
更に、マット・ディモンの「ボーン」シリーズ等で見せた
リアリティ豊かなアクションと、冷点の高いサスペンスタッチ、
そして複雑なカメラワークを駆使して緊迫感あふれる画作りを見せる。

ともあれ、
トム・ハンクスの力感みなぎる沈痛な演技が
あまりにも繊細で、あまりにも素晴らしく、
地獄行の末に見せるその姿は、
止めようにも止められない涙を誘う。

ひたすら感情移入して見守っていたこともあり、
僕も全く抑えることが出来ず感涙してしまった。

そこへと導く高圧的な恐怖感を体現して見せた
ソマリア人を演じた素人に近い俳優たちの
鬼気迫る演技も同等に素晴らしい。
今年必見の1本として推奨したい。
★★★★★
採点基準:★…5個が最高位でマーキングしています。★…は★の1/2です。

















































































































































