以前は近付くだけで始まっていた動悸


今は歩いていても

そんな記憶がかすかに浮かぶ程度


一歩踏み出してみようと

高架下のあの横断歩道へ向かう


一歩二歩

足取りは軽く

どんどん近づいていく


歩きながら香ってくる街の匂いは

自分の知っているものとは

まるで異なっていて


異世界に来たかのような錯覚に陥る


風景はところどころ変わっているが、

大きな違いは見つけられない


いざ着いた先には、

自分の記憶と全く同じ光景


だが、最後に見たこの風景は

ここまで空が青く、

穂をつけた稲が心地良さそうに揺れていただろうか


あの時の自分には見えていなかったのかもしれない


いや、見ていなかったのかもしれない


冷たく暗いアスファルトだけを見つめ

自転車を押していたのかもしれない


自分が変わったのか

街が変わったのか


その答えがどうでもいいと思える自分が

そこには立っていた