歴史的人物のパーソナルデザイン推理。今回は、アウグストゥス、ことローマ帝国初代皇帝オクタヴィアヌスのPDです。イメージコンサルティング・スタジオ<カラーバイタル>がお送りします。



 ★明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします★

 昨年は、読者様からの反応や、ご指名以降の触れ合いによって、

 <カラーバイタル>として進むべき道筋を、ハッキリと示された年でした。

 かけがえのない一年でした。読者様に、心より感謝申し上げます(代表 まつもとあき)


 現在、土日の予約をご希望の場合は、3月以降の受付となっております。

 平日であればそれ以前にも可能ですので、受診をお考えの方はご相談ください。

 
 それでは、元旦からさっそく、埒もないPD推理をお楽しみくださいませ。



  どこかでは、目にしているはずの、この方。
  アウグストゥス01

*********** 導入 *******************************************************
 誰も知らぬ間に皇帝になった男……尊厳者の異名をもつ死者のPDを推理する…!
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■ ガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌス・アウグストゥスさん(享年76歳)  

 偉大な大伯父の七光りで地味に登場

 無名の青年。18歳で表舞台へ。
 

 単に、この人↓との血縁のみによって。妹の孫という、薄ーい七光りでした。
 カエサル01
 大叔父の名は、ユリウス・カエサル…なんて当時幾らでもあった名前ですが、

 シェイクスピア 『シーザーとクレオパトラ』 の、シーザーのことであり、
 
 ユリウス暦のユリウスさんであり、『ガリア戦記』の著者でもある超大物。


 質実剛健の戦乱社会

 舞台は、覇権をめぐって、大国小国がひしめき合い、しのぎを削る地中海世界。
 

 ローマは、元老院という世襲議員からなる議会が優位に立つ共和制国家でしたが、

 同時に、軍事大国としての顔も持っていました。

 青年オクタウィアヌスが勉学のため過ごしたカルタゴも、かつてローマが滅亡させた大国。


 ローマ男は、質実剛健をもって旨とする時代。

 オクタウィアヌスさん、質実ではあったようですが…?


 西欧史上きっての美男子と呼ばれる彼。そのPDは?

 
 気品があり、美しい。これが第一の印象です。

 とはいえ、武骨が身上のローマ男としては、相当に線が細い感じです。


 注目なのはこの彫像、ボディラインの大部分を覆っている、布地の

 ドレープがこれだけ寄っているのに、そのラインは流麗でもダイナミックでもなく、

 ピンストライプのように、整然とした線を描いているところ。

 襞の在り様によって、本人の人物像を象徴させる、彫刻家の手腕と見るべきでしょう。
 

 当時のローマ男は短髪。額を出し、清潔そうな髪型、このお顔にはこれが正解でもあります。

 装飾性の高い髪型は、邪魔になりそうでしょ?


 襟ぐりも、気品あふれるこの頭部には、これ以上開けば、だらしなくなる、というライン。

 露出度は限りなく低い方が、端正かつ品のある姿を、かえって浮き彫りにします。


 
 チャーミングとは言いかねるし、豪放磊落な雰囲気は微塵もなく、野放図でもない。

 無頼を気取るのも、あふれる気品と相反します。


 考えて行動するタイプですね。ちょっと、近寄りがたさも感じます。

 現代日本にいるわたしたちの目には、頭脳明晰・眉目秀麗のエリート青年に見えます。


 端正な姿。

 オクタウィアヌスのパーソナルデザインは、グレース・タイプと推測します。


 グレースぶりが、仇になる瀬戸際で

 が、しかし。

 ローマ男に何といっても求められたのは、<軍才>。

 有り体にいえば、体力と運動神経、といってもいいでしょう。

 ……皆無でした。


 当時の社会感覚において、彼は「病弱の青びょうたん」。

 完全なダークホースとして、熾烈な権力闘争にエントリーしていたのでした。


 ローマ男の理想像から程遠い、そのホッソリとしたトルソーは、

 優位というよりむしろ劣位に置かれる環境。


 この肉体的劣位を、オクタウィアヌス氏、グレースならではの頭脳プレイで巻き返します。


■ 手持ちのカードを使い尽くせ  

 人的関係

 大伯父カエサル由来の、薄ーい七光りを、ありったけ利用しました。

 カエサル亡き後の跡目争い、軍事的功績を欠くオクタウィアヌスが打って出られたのは、

 カエサルの跡継ぎという立場あってはじめて可能なことでした。

 彼は躊躇なく、その立場をことあるごとに主張しました。


 置き土産も、ありったけ利用。殊に、配下の者達には恵まれました。

 

 とりわけ、名将アグリッパは、腹心というか、ほとんど一心同体の存在でした。

 かなりの勝てる人であったアグリッパの軍功は、オクタウィアヌスに捧げられました。


 その知力、あふれ出る気品と若さで、巨大な<帝国ヴィジョン>をこっそり話せば、

 優秀な人々も彼に尽くす気になってしまえたのでしょう。案外、人たらしでした。



 お偉方や識者たちの前では、純朴で知的な好青年を演じ、助力を得ました。

 才人キケロさんも、ヤラれちゃいました。


 いずれ自分が優位することになるおじ様方を、二枚舌で籠絡すること、これ十八番。

 腹黒ーい。



 いずれぶち倒すつもりでいた政敵アントニウス。今は勝てないという時期には、

 ローマ女の鏡と言われた淑女、姉オクタウィアを嫁がせ、衝突回避。あざといー。


 権謀術数

 オクタウィアヌスという人は、権謀術数の使い手…策士でしたが、そのことを、

 誰にも気づかせませんでした。


 アントニウスがエジプト女王クレオパトラに走ると、この姉は、

 女王に対する当て馬の役割をあてがわれ、

 ローマ市民のアントニウスに対する反感を煽り立てる種にされました。

 クレオパトラへのローマの憎悪を駆り立てることにも余念なし。えぐーい。

 
 同じ血を引く、幼児の殺害にも手を染める、権力への道筋…波間に見えていたでしょうか。


 ところで。

 生前のアントニウスには、手を焼かされていました。


 アントニウスは、お体自慢の、豪胆でやんちゃな将軍。

 こういう華々しい体育会系の男を、ローマ市民は長く愛してきたので、

 追い落としには策略に次ぐ策略と、強運とが必要でした。


 決して頭がいいとはいえず、失政を重ねたアントニウスを、笑って許してきたローマ市民の有様に、

 オクタウィアヌス氏、つくづく、カリスマ像の形成方法について、考えたでしょうね。


 議会を掌で転がす独裁者は、好青年の仮面を被り続ける

 その後も一貫して自力を恃まず、社会的力学を応用して、国家間・組織間の、戦争・政争を、

 自分に都合の良いように、誘導していきました。


 やがて、ローマの政治的実権が、そっくり、その掌中に握られる日がやってきました。

 政権奪取は、スマートでした。


 実際には、元老院のおじ様方から権力と権威の全てを吸い尽くしていきながら、あたかも、

 かつて目をかけてやった知己の青年に、恩返しとして自分達の安楽な立場を保護させている、

 といった感覚を植え付けていました。

  

 共和制を破壊し、事実上の帝政を布きながら、そのことをお偉方に悟らせませんでした。


 実権を得た彼には、類まれな行政手腕が備わっており、

 平和を獲得したローマの大繁栄を実現する、ヴィジョンに事欠きませんでした。


 着想の多くは、大伯父カエサルの手になるようですが、

 普通ではなかったカエサルのヴィジョンを承継できた頭脳は特筆に値するものであり、

 普通ではなかった人格ゆえに暗殺によって頓挫した計画を、この相続人は実直にやり遂げます。


 民にとっては、最良と言ってよいレベルの善政でした。

 しかし、それだけでは足りませんでした。


 文化的イメージ戦略

 政権安定のため、独裁者は、市民から認められ、肯定される者でなければなりませんでした。

 ローマは、共和制を失っても、市民を失ったわけではありませんでしたから。


 これぞ、政治家による、元祖イメージ戦略。真価発揮です。


 カエサルも体現しえた、華々しい体育会系の男。

 線の細い彼には演れない相談です。


 生粋のローマ男とは言いかねる自分の実像。

 これまたスマートに、そのイメージを作り上げました。



 実体験で学んだ、その対人的な印象がもたらす果実を、彼は大切にしたのです。

 オンナコドモや、アグリッパのような質実剛健な男を、惚れさせずにはおかない、

 気品と美貌と、怜悧な言動。


 その象徴が、数多作られた、彫像です。

 タイミング的に、アレクサンドロス大王のダイナミズムを受け継ぐヘレニズム的表現を脱し、

 繊細で甘美で形而上学的な、ギリシャ様式が主流となりました。


 ギリシャ様式の中では、彼は、青びょうたんではなく、

 風雅と礼節に満ちた、端麗な若き皇帝でありえたのです。


 幼い頃から病弱で、頑健に振舞うことを諦めて、養生に努めて、76年生きました。

 彼もまた、「よく寝ている」ことを指摘された皇帝です。

 なおかつ、残された彫像のほとんどが、少壮時代の彼を写し取った物でした。

 

 戦乱を実力で這い上がった、世にも麗しい、若き皇帝。しかも治世は善政。大繁栄の始まり。

 その近寄りがたさのために、愛される、というタイプではありませんでしたが、

 圧倒的な尊敬を受けました。

 市民は彼の死後も、その彫像を仰ぎ続けたといいます。


 そして、その美しさ故に、かなりの数の彫像が、破壊をまぬがれ、今も保存されています。

 とりわけ、プリマポルタのアウグストゥスは、代表格。
 
 憂いをひめた、生真面目な眼差し(悪く言えば、辛気臭い…)。

 指差すのは具体的な戦線ではなく、世界の来るべき未来。

 装飾的な要素が、ご自慢のお顔より突出しないよう、注意深く彫られています。

 ピッチの狭い肩とドレープのラインは、真っすぐの多重線を描きます。

 手足の露出部分も、塗装が消えているせいか、あまり生々しさが出ていません。


 海千山千の美女クレオパトラが落とせなかった美男子の再現です。


 誰にも伝わるスマートさ

 ローマで、<軍才>に次いで重要な才能が、<言論の才能>でした。

 ローマ帝国物の映画でよく演説シーンがありますよね。

 オクタウィアヌスの言葉の数々は、名セリフとして今もよく伝えられています。


■ 懊悩  

 勝利の後、老いとともに、ローマの繁栄は冴えわたり、懊悩は、増していきました。

 

 血を分けた子孫に帝国を譲渡したい。ありふれた煩悩が、グレース的な冷徹さを失わせ、

 近い立場にいる人々の人生を狂わせていきます。

 戦乱を生き抜いた彼の権謀術数は、容赦なく、家族にも向けられてしまったのです。


 権勢欲のために、血縁者の婚姻を左右することに、疑いもためらいも持ちませんでした。

 実子ユリアは、少女の時分から、政治の駒としての婚姻と出産を繰り返させられ、

 挙句、悲しい反抗。淫婦として名を馳せ、流刑の憂き目を見ることになります。

 そうまでして作り出した男児たちも、次々と夭折。

 最後の一人の素質は、到底、帝国の主など務まらぬものでした(と言われています)。


 帝国を手に入れた怜悧なダークホース。子孫の遺伝状況は、操作できませんでした。


 

 策士としての顔は、知略の証。グレースならではの誠実そうなかんばせと、矛盾はしません。

 その誠意は、ただ帝国全土のために捧げられました。実生活は質素だったといいます。


 家族としては勘弁被りたいですが、遠い指導者として仰ぐ分には、理想像ですね。

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出典
プリマポルタのアウグストゥス
Statue-Augustus by Till Niermann - 投稿者自身による作品. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via Wikimedia Commons - httpcommons.wikimedia.orgwikiFileStatue-Augustus.jpg#mediaviewerFileStatue-Augustus.jpg
ディナリウス銀貨
"S0484.4". Licensed under CC 表示-継承 3.0 via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:S0484.4.jpg#mediaviewer/File:S0484.4.jpg
ベール姿
"August Labicana Massimo Inv56230" by Marie-Lan Nguyen - 投稿者自身による作品. Licensed under パブリック・ドメイン via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:August_Labicana_Massimo_Inv56230.jpg#mediaviewer/File:August_Labicana_Massimo_Inv56230.jpg
ベール顔部分
"Augustus Via Labicana (Palazzo Massimo alle Terme) 01" by Iessi - Posted to Flickr as Imperator. Licensed under CC BY 2.0 via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Augustus_Via_Labicana_(Palazzo_Massimo_alle_Terme)_01.jpg#mediaviewer/File:Augustus_Via_Labicana_(Palazzo_Massimo_alle_Terme)_01.jpg
アクチウム海戦
"Castro Battle of Actium" by Lorenzo A. Castro - Downloaded from [1]. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Castro_Battle_of_Actium.jpg#mediaviewer/File:Castro_Battle_of_Actium.jpg
ブロンズ
"Castro Battle of Actium" by Lorenzo A. Castro - Downloaded from [1]. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Castro_Battle_of_Actium.jpg#mediaviewer/File:Castro_Battle_of_Actium.jpg
シビッククラウン ドイツ
"Augustus Bevilacqua Glyptothek Munich 317" by 不明 - User:Bibi Saint-Pol, own work, 2007-02-08. Licensed under パブリック・ドメイン via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Augustus_Bevilacqua_Glyptothek_Munich_317.jpg#mediaviewer/File:Augustus_Bevilacqua_Glyptothek_Munich_317.jpg
布被り左向きアップ
"Augustus as pontifex maximus" by 不明 - Santo Attilio, Augusto, Milano 1902.. Licensed under パブリック・ドメイン via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Augustus_as_pontifex_maximus.jpg#mediaviewer/File:Augustus_as_pontifex_maximus.jpg
左向き顔 白目 鼻キズ
"Augustus Statue" by 不明 - Santo Attilio, Augusto, Milano 1902.. Licensed under パブリック・ドメイン via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Augustus_Statue.JPG#mediaviewer/File:Augustus_Statue.JPG
目の黒いもの
"SFEC BritMus Roman Modification1" by 不明 - Image:SFEC BritMus Roman 020.JPG by Steve F-E-Cameron (Merlin-UK), 2006-2007, modification by Louis le Grand. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:SFEC_BritMus_Roman_Modification1.jpg#mediaviewer/File:SFEC_BritMus_Roman_Modification1.jpg
1901
"Hw-augustus" by From: H.F. Helmolt (ed.): History of the World. New York, 1901.\r\n\n\rCopied from University of Texas Portrait Gallery.. Licensed under パブリック・ドメイン via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hw-augustus.jpg#mediaviewer/File:Hw-augustus.jpg
貨幣
"Augustus & Agrippa4" by CNG - CNG coins. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Augustus_%26_Agrippa4.jpg#mediaviewer/File:Augustus_%26_Agrippa4.jpg
地図
"Augusto 30aC - 6dC 55%CS jpg" by Cristiano64 - Lavoro proprio, self-made. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Augusto_30aC_-_6dC_55%25CS_jpg.JPG#mediaviewer/File:Augusto_30aC_-_6dC_55%25CS_jpg.JPG
カエサル
"Caesar" by Unknown photographer / Alfred von Domaszewski - Alfred von Domaszewski Geschichte der Romischen Kaiser Verlag von Quelle & Meyer in Leipzig 1914.. Licensed under パブリック・ドメイン via Wikimedia Commons - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Caesar.jpg#mediaviewer/File:Caesar.jpg