Color日和・竹原朋美です

 

 

本から受け取ったインスピレーションで

800字で書き綴る「リブリオエッセイ」。

 

エッセイ塾ふみサロはお陰様で丸一年たちました。

これからも勉強がてらコツコツ書いていきたいところです。

 

さて6月の課題図書は増子裕介・増村岳史著

「ハイパフォーマー思考」

 

 

 

今回のエッセイはこちらから↓

 

 

「祖母のために取った資格」

 

 高校生の頃、毎週土曜日はタクシーに祖母を乗せ、母と一緒に病院まで連れていき

内科、整形外科、眼科、泌尿器科とまわった。

7年ほどそれは続いたが、就職をして仕事に慣れた頃、自ら運転し祖母を病院に連れて行けばラクなのではと考え、私は車の免許を取得しようと決めた。

 

 札幌の街中に近い自動車教習所に残業のない日は会社帰りに夜間で、日曜日にはいつもの倍の時間ハンドルを握る日もあった。

コースをはみ出たり、バックをすると棒がいくつか倒れたりは想定内。

悪戦苦闘しつつも補講を重ねた甲斐があり、マニュアルでなんとか運転免許証を取得することができた。

 

 その当時、祖母はいつも「死にたい、死にたい。世話になっているのは迷惑がかかる」

と何度もつぶやいていた。

「そんなこと言わずに…」となだめながらインシュリンの注射を打つ私。

 

 ある日、購入した車に祖母を乗せ、助手席の父に見てもらい私の運転で近くをドライブすることにした。が、あろうことか交差点でエンストした。

あまり交通量の多くない場所で、私はあせりながらもなんとか危機を脱したのだが、その時、祖母はなんと「死にたくない!!」と言い放ったのだ。

え~!あんなに死にたいと言ってたのに…。あの言葉はどうも本気ではなかったようだ。

 

 それからまもなくして、祖母は入院することになり、車で通院する必要もなくなった。

しかし、祖母はよっぽど私の運転する車に乗りたくなかったのだろうか…。

その後、家に戻ってくることはなかった。

 

 まさか頑張って取った資格が、これほど簡単に意味を失くすとは…。

使い道を失った車はそのまま父にプレゼントし、喜ばれたのがせめてもの慰め。

今はその取得した運転免許証を身分証明証として、活用させてもらえることに感謝するとしよう。

 

 

エッセイはここまで。

 

 

本の中の「資格は本人の使い方しだい」ということを踏まえ、介護をする中で取った資格が自分の想定を超えていったことを書いたエッセイ。

 

数多くの資格を取得した中で、頑張って取ったわりには消化不良的な取得に終わった運転免許証のことについて書きました。結果オーライ…なのかもしれません。

 

自己判断により、現在、車の運転はしておりません。

 

北海道に里帰りしている間に書きだそうとしたエッセイだったからか、実家にいた頃のエピソードを思い出したようです。

 

 

6月のふみサロのファシリテーターを務めさせていただきました。

 

そしてプロの編集者目線での城村典子先生からご指摘を受け、後半3行をバッサリ(?)切るというか自分なりに修正したものです。ちなみに修正前がこちら

 

読み比べてみるとどうでしょう?

 

初めて「城村賞」をいただきました。ありがとうございます。

 


 

 

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次回は7月21日の予定