小説⑦(132)まとめ2 | 喜劇的な世界

喜劇的な世界

やりたいことを探し中。やりたいことをやれる勇気を探し中。
自分を見つめ直すための雑記です。
良い悪いはあるかも知れませんが、全部含めて自分です。
笑えるくらい面白おかしい人生を生きていきたい。

顔を見ながら電話をするのは初めてだった。正直、顔なんて見なくても声だけで充分だと思ってたし、なんなら文字だけでも良いと思ってたのに、いざやってみると「あ、いいな」と素直に思ってしまった。

 

久々、なのか頭が混同していてわからないが、好きな気持ちが溢れた。

もともとメールも電話もそこまで好きじゃないので、というより人と関わるのが面倒くさくて、束縛されるのも嫌なタイプなので彼女なんて絶対に作らないぞ、と思っていた自分が彼女にあったのはちょうど3年前のとあるライブ会場だった。

 

ライブなんてものに行ったことがなかった自分が本当に偶然に立ち寄った場所で初めて彼女と出会うことになった。

というのも、無料の野外ライブで、通りかかったらやっていたというライブだったのだが、アイドルのライブなんて全然興味がなかった(と言えば嘘になるが)ので縁遠いものだと思っていたし、テレビの中の存在だと思っていたので、こんなに間近で見たときに「アイドルってすごいな」と素直に思って立ち止まったのがきっかけだったのだ。

 

何気なく立ち寄ったそのライブで話しかけて来たのが彼女だった。「初めてなんですけど、どうしたらいいんでしょうか?」と聞かれたのだが、当時の僕はまず何を聞かれているのかもわからなかった。

そこに助け舟を出してくれた人がいて「なんかすごくいいな」と思ったのは今でも覚えている。

 

それからしばらくしてそのアイドルのライブに行きたいと思って再び行ったら彼女がいたんだよな、と思い出した。

 

夏の大きなフェスだった。

 

画面に映る彼女は無言のままこちらを見ている。

 

この間、どれくらいの時間が経ったんだろう。

時間感覚がおかしい僕にとって、もしかしたら相当長い時間を無言で過ごしてしまったかも知れない。

完全におかしいやつだ。

 

ねぇ、今まで何してたの、と聞かれたが答えられない。自分がそれを知りたい。

時の旅人のように、自分が自分でないかのように、彼女を見つめてしまった。

 

「ん、特に何もなかったよ」

 

口から出た言葉は嘘であり、真実であった。

 

文字通り、何もない。

 

だからこそ、きっと何かあったはず。

 

 

彼女との会話はいきなり終わった。