NHKのテレビ番組を見ていると、どうやら8月20日(土)夜11時から特集ドラマがあるようです。そのドラマのタイトルは……
ももさんと7人のパパゲーノ
えっ?パパゲーノ!?
パパゲーノといったら、モーツァルト作曲のオペラ「魔笛」に登場する鳥刺しであるパパゲーノという人物を思い出すのですが……どうやらこのドラマは自殺について取り扱った内容のようです。
どういった事だろうと疑問に思い、NHKのサイトでこのドラマのページを見てみると、パパゲーノに関してこのようなことが書かれていました。
<“パパゲーノ”とは> 「死にたい気持ちを抱えながら、その人なりの理由や考え方で“死ぬ以外”の選択をしている人」のこと。 こうした経験を持つ人のライフストーリーには、つらい状況にある人を思いとどまらせる抑止力“パパゲーノ効果”があるとされている。(2022年8月19日 ももさんと7人のパパゲーノ - NHK)
へー?パパゲーノって死にたいけどまだ死んでいない人のことを言うのか。これは初耳だなあ。それにパパゲーノ効果って言うのもあるらしいし……。
このパパゲーノってやっぱりオペラ「魔笛」のパパゲーノのことじゃないのか?と感じたので、パパゲーノ効果をネットで調べてみると……
「パパゲーノ効果」の名称は、モーツァルトのオペラ「魔笛」の登場人物・パパゲーノに由来します。 (2022年8月19日 わたしはパパゲーノ~死にたい、でも、生きてる人の物語~ - NHK)
予想通りモーツァルトのオペラが元ネタでしたね。
ここでオペラ解説。確かに作中パパゲーノは自殺を図りますが、3人の童子のアドバイスによって自殺をとどまります。ここからパパゲーノ効果って名前が付けられたわけですね。
何故パパゲーノが死のうとしたかというと、好みの女性であるパパゲーナと離れ離れになり絶望したから。ですが、このパパゲーノは完全に三枚目の役なので、自殺を図ろうとしても全く悲壮さは感じません!むしろ、「誰か自殺を止めてくれないかな~?本当に死んじゃうよ?」といった感じなので、笑ってしまうシーンとなります。
●魔笛 第2幕より「パパゲーノの独唱」~「パ・パ・パの二重奏」
↑2分20秒頃から自殺を図り始め、5分13秒から有名な「パ・パ・パの二重奏」が始まります。
自殺をしようとしたパパゲーノですが、3人の童子が魔法の鈴を使うように言ったので、その存在を思い出した彼は鈴を振ります。すると、不思議なことにパパゲーナと見事に再会し、そのまま幸せな合唱をして終了。この一連の流れが視覚的・音楽的にも楽しい場面です。
パパゲーノ効果は自殺を選択しなかった人達の報道は、他の人の自殺を抑制しうるといった効果ですが、この対比するものとして「ウェルテル効果」があります。つまり、ウェルテル効果は自殺の報道によって、他の人の自殺が増えることを指しています。
この「ウェルテル」とはドイツの詩人であるゲーテ著の「若きウェルテルの悩み」に登場する若い詩人ウェルテルに由来しています。こちらのウェルテル効果の方が、パパゲーノ効果よりも先に考えられた説であり、自分もこっちの効果の方は聞いたことがあります。
こちらのウェルテルの自殺理由も女性関係。恋はもう実らないと悟り、こちらは完全に亡くなってしまいます。しかし、効果の由来にされたにも関わらず、作中では後追い自殺とかはありませんでした。どうしてこの名前を使用したのでしょうかね?
そして、ウェルテルを原作にしたオペラもあります。フランス作曲家のマスネが「ウェルテル」として作品を残しております。ここではおそらく作中一番有名で人気のあるウェルテルのアリア「春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか」を紹介します。
●ウェルテル「春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか」
↑南米ペルーの名テノール、ファン・ディエゴ・フローレスによる歌唱。
第3幕でウェルテルによって歌われる曲であり、シャルロットに対する熱い恋心・苦しい気持ちを切実に歌うものとなっています。こちらは魔笛と違ってガチガチのシリアスな場面ですね。
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