PS5では2020年の末に、PS4では2021年2月に発売されたアドベンチャーゲーム「Haven」をトロフィーコンプリートまでプレイしました。想像していたゲーム性とは少し違ったところもありますが、たった2人だけの登場人物に焦点を当てた点や一風変わった舞台背景など、このゲームならではの特徴を持った作品になっています。

 

 

 

1.たった2人だけの世界

 

 このゲームは、成熟したカップルが織りなす新生活を描き出しています。舞台は現代よりも科学がさらに発展した未来となっており、惑星間の往来や居住もできるような世界です。

 

 物語の主役は「ユウ」と「ケイ」という恋人同士の2人。というよりこの2人しか登場しません。この2人は今まで住んでいたディストピアな社会である「エイピアリー」から、宇宙船「ネスト」を奪って遠い星へ逃げてきました。その星について暫く時がたったところからこのゲームはスタートします。

 

↑ゲーム開始時から早速イチャつき始めます。こういったじゃれあいが今後も幾度となく続きます。

 

 ストーリーはこの2人の会話のみで進んでいきます。ムービーは少なく、ネスト内での生活はもちろんのこと、後述する探索や戦闘にいたっても2人の会話で状況説明・物語展開をしていきます。

 

 ここで注目したのが2人の間柄であり、恋人になってから久しいといったところです。中々ゲーム内の若い男女関係でこういったものは珍しいのではないでしょうか?他の作品では、男女がカップルになるまでの過程を描写したものや、2人一緒にはいるけれど明確な恋人同士ではないといった関係のもの、もうすでに結婚して長い時間が経っているものなどが多くある気がします。

 

 こうした特殊な環境下での、初々しさはなくなって信頼できるパートナーとしての関係から織りなす2人の会話が、このゲーム一番の目玉といっていいでしょう。ちなみにボイスは英語であり、日本語はありません。同じ製作会社の「Furi」では日本語ボイスがあっただけに残念です。おそらく日本で思った以上に売れなかったのでしょうね……。

 

↑外国にもこういった類の下ネタがあるのですね……

 

 

 

 

 

2.心躍らない探索

 

 2人のライフサイクルは、外に出て探索・敵との戦闘・家に帰って食事や準備・就寝・そしてまた次の日には探索をするといったものです。 

 

 寝床である宇宙船「ネスト」でのゲームプレイは、食事をしたり、アイテムを作ったり、探索で拾ってみたものを観察・使用してみたりといったものです。食事もアイテム作成も決められた素材を組み合わせて作るだけなのでとてもシステムとしては単純です。なので、ゲームとしては探索に力を入れているものと思っていましたが、この探索が想像よりもあまり面白くありません。

 

↑探索では画像のように食事に使う果物や、船の修理に使う錆などをゲットできる。

 

 

 探索が面白くない最大の理由としては、どこに行っても目を見張るものがないからでしょう。特に昨今のゲームは背景や小物に力を入れている作品が多い気がしますが、このゲームには少しその点において物足りなさを感じてしまいます。

 

 探索する惑星「ソース」の地形は山あり谷ありと凸凹したところも多いですが、それが面白さに繫がっていない点が残念です。場所によってはあっちへ行きたいのに特定のラインに沿って行かなければたどり着かなかったりと少々時間がかかり面倒くさいことも。

 

 他に探索というと、ギミックを操作したり、アイテムを使用したり、頭を使ってパズルを解いたりして先に進むといった要素もありますが、そういった要素も非常に少なく味気ないです。新たな場所に着いた時の高揚感といったものが感じられません。

 

↑探索する惑星「ソース」のマップの一部。細かくエリア分けされているが、島ごとの特色が少ない印象を受ける。エリア移動時に毎回短くないロードが挟まれるのはテンポが悪い。

 

↑こういった少し色合いが異なる場所なだけでも、最初見たとき「オオッ!」と声を出してしまうほどロケーションのバリエーションが少ない。

 

 

 また、この惑星は最初未開の地だという説明が2人の会話でなされていましたが、物語を進めるとすぐに以前に人が住んでいた痕跡を見つけることができます。ここは人の好みが分かれるところだと思いますが、個人的に大変ガッカリした点です。何も勝手が分からない未踏の地でサバイバルをすると思っていたのに、実はコロニー化計画が進行していた土地だったなんて……。

 

 まあ、そのおかげでネストの修理パーツや、ネストを彩るぬいぐるみやおもちゃといったアイテムを手に入れることができますが、本当に人工物が何もない場合のバリエーションの引き出しの少なさを露呈している気がしてしまいました。

 

 

 

 

 

 

3.歯ごたえがあるリアルタイムコマンドバトル

 

 探索は想像以上に遊びがいがなくてがっかりしましたが、逆に全然期待していなかった戦闘面では意外と楽しませてもらいました。

 

 戦闘方式は、リアルタイムで進むコマンドバトルとなっております。基本的な行動は2つの攻撃方法である「ブラスト」と「インパクト」、守りを固める「シールド」と少なめです。攻撃を当てて体力を削りきると相手は気絶するので、その隙に「鎮静化」をすることによって戦闘終了することができます。

 

 とても単純ですが、面白い点はユウとケイの2人を一度に操作するところです。片方は攻撃をして、もう片方は無防備な相方を守るといった戦略が必要となっていきます。シールドも使い続けていると壊れてしまうので、交代で攻撃と防御を変えていくことになり2人の絆を感じられる戦いとなっているのがいいですね。

 

 他にも、攻撃にいたっても相手によって「ブラスト」と「インパクト」を使い分けたり、相手の攻撃の隙をつかないと攻撃が入らなかったり、同じ攻撃方法を選択することでより強力な攻撃になったりと少ない操作方法から色々なバリエーションを生み出しています。

 

 

 コマンド選択はボタンを最後まで長押しをしないといけないうえ、相手の強力な攻撃を喰らうと行動がキャンセルされてしまうため、慣れるまでは思うように動かすことができずに苦戦しました。しかし、慣れてくると相手の攻撃をいなし、こちらの強力な攻撃を畳み込み、一気に相手を鎮静化させるといったことが可能で、上達が実感できるいいシステムだと思いました。

 

 また、戦闘中でも2人はよく喋ります。戦闘がうまくいっているときはノリノリなセリフを言ったりしますし、逆に攻撃が効いていないときはアドバイスをしてくれたり、シールドが切れたことや体力が減ってきたことを逐一報告したりと戦闘に欠かせないスパイスになっています。

 

 通常戦闘曲として「Ready When You Are!」があり、何度も聞いているうちに癖になってくるいい曲だと感じます。ゲームの戦闘曲とは思えない変わった感じが好きですね。

 

●「Ready When You Are!」

 

 

 

 

 

総評 ★★★★☆

 

 成熟したカップルのディストピアからの逃避行、そこからの新生活を描いた一風変わったRPGと言えます。

 ゲームシステムとして目を見張るものは少なく、どの要素もシンプルに仕上げており、終始2人の関係に焦点を当てている点が一番の魅力です。そのため、この世界観や2人の関係に興味を持つことができなければ全く楽しめない作品となることでしょう。

 エンディングまでは16時間、トロフィーコンプリートまでは19時間ほどでした。ボリュームは十分あると感じましたが、探索や採集の楽しさがあればより良かったと思わずにはいられませんでした。