『野ブタ。』『JIN -仁-』再放送ドラマの好調に一喜一憂するテレビマンたち

週刊SPA!

『野ブタ。』『JIN -仁-』再放送ドラマの好調に一喜一憂するテレビマンたち
画像:JIN-仁-(TBS)

 話題作が豊富でいつも以上に注目を浴びていた4月クールドラマだが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、多くの作品が放送延期となってしまった。

 そうした中で、放送予定であったドラマやバラエティ番組の放送枠の穴を埋めるべく過去のドラマの再放送がスタート。『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系、土曜午後10時~)の代わりとして、2005年放送のドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)の特別編が放送。また、2009年放送の『JIN-仁-』(TBS系)の再編集版も毎週土曜・日曜の午後2時から放送。

 他局でも過去のヒットドラマの再放送がされているのだが、驚くべきことにいずれのドラマも平均して高視聴率を記録している。特に『野ブタ。をプロデュース』特別編第1話は11.0%、第2話は10.9%をマークしたほか、昼帯の放送だった『JIN-仁-』も1話11.6%、2話11.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と高い数字を残した。皮肉にも4月クールドラマ『SUITS/スーツ2』(フジ系、月曜午後9時~)の第1話11.1%、第2話8.8%を上回る形となった。

『野ブタ』…“亀と山P”復活と脚本の奥深さで再ヒット

 “コロナショック”による緊急策として放送されたはずのドラマが、新作を超える視聴率をマークしたことを業界関係者やスタッフ、脚本家たちはどのように受け止めているのか? また、再放送ドラマがヒットしている理由と今後のドラマ業界についても聞いてみた。

 キー局の若手ドラマプロデューサーのA氏はこう語る。

「こういう状況なので作品が撮れないという悔しさもありますが、それ以上に再放送ドラマのヒットのほうが悔しいです。確かに今のドラマは予算も少ないですし、主演を担う俳優さんの知名度もそれほど高くない。とは言え、再放送ドラマにあっさり数字の面で抜かれてしまったことで、モチベーションが下がっているスタッフも多いのは事実です」

 こうした悔しい気持ちを抱えつつも、『野ブタ。をプロデュース』の再放送には脱帽したという。

「まず、メインキャストであるKAT-TUNの亀梨和也さんと山下智久さんによるコラボユニット『亀と山P』の復活が、狙ったかのようなタイミングだったことがよい宣伝に繋がりましたよね。そういう意味でもドラマから派生した何か…があれば強いことに気づかされました。今は公式SNSばかりに力を入れてますが、別の派生方法も考えていかないといけない。

 それからキャストの豪華さ。前述の2人に加えて、堀北真希さんと戸田恵梨香さんという2人の“朝ドラ主演女優”が出演していたのもデカいですよね。そして何より、最も感心したのは脚本。『すいか』(2003年)、『セクシーボイスアンドロボ』(2007年)、『Q10』(2010年、いずれも日本テレビ系)などを手掛けた木皿泉さんによる何気ない学園生活の描き方と哲学的なセリフの数々に、思わず惹きこまれてしまいました。

 こう見ると、今回数字を残しているのは普遍的な作品ばかりですが、私としては時代を切り取ったドラマも作りたいので、あまり一喜一憂しすぎずに作っていきたい」

感染症に立ち向かう『JIN-仁-』は共感と勇気をくれる

 ドラマやバラエティ番組を手掛ける制作会社でプロデューサーを務めるB氏にも話を聞いた。

「外出自粛が徹底されており、テレビも見る時間も増加。特にネットに依存していない中高年層でも楽しめる『JIN-仁-』のヒットは納得ですね。主人公がコレラや麻疹などの感染症に立ち向かうというストーリーも新型コロナウイルスと闘う現在の世界とかなり近いモノがあり、共感と勇気を与えてくれている。これはヒットしますよね」

NHKのテレワークドラマに今後の未来が見える?

 また、B氏はテレビドラマの今後についても言及してくれた。

「NHKが『今だから、新作ドラマ作ってみました』(5月4日、5日、8日に放送)という、すべてテレワークで撮影したドラマを放送することには驚きました。テレワークドラマ自体はウチの制作会社をはじめ、どの局も考えていたと思うのですが、このスピード感で放送できるのはNHKならではだなぁと思いました。

 この先もどんな災害やパンデミックが起きるか分からない中で、1~2年前から企画を練っていって、撮影は放送直近で行なうという “今までのドラマの作り方”が果たして正しいのかどうか。これまでのルーティンを変えていかないといけない気はします」

アフターコロナは恋愛ドラマがブームに!?

 脚本家たちは現在どのような心境にあるのか? 近年ではネットで恋愛ドラマなどを手掛けた女性脚本家C氏に話を聞いた。

「ネットで配信している過去のドラマや海外ドラマのアーカイブを一気見する人が増えているという話を聞いて、まだまだドラマは需要があるんだなとうれしく思ったのが率直な意見です。

 1話完結の刑事モノや医療モノの全盛期ですが、アーカイブでは『花のち晴れ ~花男 Next Season~』(TBS系)などの恋愛ドラマや『Mother』(日本テレビ系)といったヒューマンドラマを見ている方もたくさんいるようです。もしかするとコロナで外出自粛を強いられていて、皆さんが恋愛や人付き合いに飢えている影響なのかなと……。アフターコロナは“恋愛ドラマ”が流行りそうな気がします」

 “コロナショック”を通じて新作ドラマが撮影中止に追い込まれ、一方で再放送ドラマがヒットするという異例の事態になった。ここから何を学ぶかによって“低迷した”と言われ続けているテレビドラマが復活することができるかもしれない――。<取材・文/木田トウセイ>

【木田トウセイ】
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。

日刊SPA!3(日) 15:54