東京オリンピック、女子ロードレースから三日後、男女の個人タイムトライアルが行われる。
個人タイムトライアルとは、参加選手が一人ずつスタートし、設定された区間を誰が一番速く走れるかを競う競技。
敢えて個人と付けているのは、世の中には複数人で参加するチームタイムトライアルという競技もあるので(オリンピックには無い)。

ロードレースは、駆け引きやチーム全体の総合力で勝利が誰に転がり込むかわからないところもあるが、個人タイムトライアルは純粋にその日最も強い者が勝つ競技。
だいたい強そうな選手が後から出走して、見る者の感情を煽るのが常。

その個人タイムトライアルが終了すれば、我がオリンピックもお終いとなるので、競技終了後のあれこれも楽しみにして大冒険の準備を済ませた。

2021年7月27日 火曜日

2130頃、自宅出発。
いつものガソリンスタンドで給油し、国道4号を南下。
道の駅ごかで缶コーヒーでも買ったかな、そして圏央道内回りに乗り狭山パーキングエリアで小休止。
中央道へ分岐して談合坂サービスエリアで日付が変わった。

2021年7月28日 水曜日

大月ジャンクションで富士吉田線に分岐し南へ向かう。
富士吉田西桂スマートインターチェンジで一般道へ降りる。
この辺り、裏通を通るの好き。
ローソン富士吉田新屋店に寄ったのは0036、人間の燃料を手に入れていつもの道の駅富士吉田へチェックイン(宿じゃないからモラルは守ろうね)。

あまり記憶には無いが、平日の夜は週末に比べると駐車場は混雑していない。
週末なんぞ、堂々とバーベキューを始める層もいる(この道の駅はそういうことに寛容)。
真夏でも蚊がいないのはありがたい。

寝床を作り、酒を喰らって寝る。

車中泊時は日除け兼目隠しを窓に張り巡らすが、少し隙間はあるので朝日が入る、そしてもれなく早起きモードに強制リセット。

ローソンへ食料調達、そして朝食を簡単に済ませユニフォームに着替えていざ出陣!

この日だったかな、セキュリティの金属探知機で遊ぶため、右膝にニーブレイス(一般的にはニーブレースと表記すること多め)を装着してみた。
それがどんなものかというと、写真参照。

前十字靭帯がぷつりと切れているので、運動するときの必須アイテム。
膝を守るためには、これくらい豪勢にする必要があるし、お値段もそれ相応ではあるものの、整形外科で作れば健康保険も使えるよ。

自転車に乗る時も着けなきゃいけないから、後々必要なるということで旅のアイテムとして持ち歩いていた。
そしてこのニーブレイスは、主にチタンとカーボンでできている、金属探知機はさてどうなる?

0844、道の駅富士吉田を出発。

35分で富士スピードウェイの駐車場に到着、ピットへ続く上り坂や階段では、ニーブレイスで固定された右膝が快適だ。
無防備なまま歩くと、右膝がぐにゃぐにゃぶれて気持ち悪い。
運動時に装着必須な理由がこれで、この外骨格がないと膝の関節が前後にぶれて炎症やらもっと酷い故障やらの原因となってしまう。

さて、セキュリティ到着、荷物を預け金属探知機通過するが、おや、無反応だ。
スマートフォンには敏感に反応するのに、チタンはスルーか。
(それとも使われているチタンはほんの少し?)

セキュリティを通過してからその辺を偵察。
写真はないようだ。

遅番が先に昼食、だったと思われる。1239

ロードレースの決勝日もそうだったが、空席を探すのはなかなか大変、それくらいには人が動いていた。
写真の左上にちらりと見えているアクリルの衝立、日本人は無意味な物に随分と無駄な金を使っていたものだ。

一般公道を走ることのないタイムトライアルでは、ドクターカーもパドック待機。1303

そういえば、オリパラで使われたトヨタ車が中古で売りに出されていたが、ちょっとね、少しだけね、欲しかった。

自転車を載せたチームカーは、もう競技が終わったのかな?


作業に復帰するも、ロードレースよりはのどかな時間が続いた、ような気がしないでもない。

競技を終えた選手と取り巻き、だと思う。1312


秘密基地。


今なら晒しても問題なかろう、極秘事項も写っていないし。

日本チームが参加していないタイムトライアルでは、スタッフもそう盛り上がることもなく粛々と進行していった。

休憩から戻ってきたボランティア仲間、そこには自分語りの爺さんも含まれていたのだが、開口一番
「トップはもうゴールしたんですか」
はっ?
「トップとは?」
と素直に問い返してしまった。

午前中、タイムトライアルの大雑把な仕組みをみんなに教えていたのだが、爺さんは自分語りに熱心で他人の声は届かないらしい(反面教師)。

そこで、なんとか言葉の意味を引き出した親切な他のボラさんが、ルールを丁寧に教えてあげていた。
「最終走者がゴールしてから決まるんですよ」

この日、地元小学生へのお礼状をみんなで書いたのです。
というのも、小学生が育てた朝顔の鉢植えが、コースの脇や正面ゲート周辺に飾られておりまして、その植木鉢をお返しするときにお礼の一筆を添えることになっていたのです。

ロードレース時は、朝顔をどうレイアウトするのか混乱していたが、この日は綺麗に彩られていた。
経験からの反省と修正は、人を成長させるね。

そのお礼状は、A4のコピー用紙に四枚分(四人分)が印刷されたもので、そいつを現場で四等分するのですが、そこで自分語り爺さんが思わぬスキルを発揮!
複数の紙を重ねて折り目を付け、素手で次々と綺麗に裁断していく。
それはもう見事な手捌き!

聞けば、生家が印刷屋で子供の頃に散々やってきたことだそうで、人に歴史あり。

その一方、悪筆なわたくしはお礼状を辞退し、ボランティアの作業に徹することにして、獅子奮迅の立ち振る舞いでピークの忙しさを乗り切った。

競技も終わり、早番の一部はとっとと帰宅。
一般道を使用しない競技なので、交通規制もない。
しかし遅番に一緒に入っていた大学生が、帰りのバスがギリギリになりそうと焦っていた。

この大学生、オリンピックの期間中は沼津の宿に連泊、この日はなんとか最終列車で群馬のアパートに帰りたい(というか宿はチェックアウト済み)のだそうで。
御殿場行きのシャトルバスはギリギリ間に合うかどうか、とにかくそれにかけるしかないが無理そう、と悲壮感を漂わせていた。

袖擦り合うも他生の縁、どうせ道の駅で車中泊する自由の身、グランドフィナーレが終わったら御殿場まで送って行くぜ!
ということで、落ち着いて大団円を迎えることとなる。

全てのスタッフが作業を終えたわけではないが、業務を離れた物たちがピットロードの端に集まるようにアナウンスが流れた。

わらわらと集まる青い一味。1928

そして、ここで再会を果たす人物が現れた。

 

↑この日、小物作りをしていた女性がすぐ近くにいて声をかけてきた。
一瞬誰だかわからなかったが、あの時の!
とは、その場ではならなかった。
周りは騒がしく、ゆっくり会話をする時間もなかったので、思い出したのは少し後のことだった、ごめんなさい。

青い一味がここで何をするのかというと、写真撮影。

コントロールタワーにいるフォトグラファーに愛想を振り撒いてハイチーズ。
余談、日本語のチーズの発音は、最後に口が閉じるので「チー」でシャッターを切るべきだが、英語の発音にすると語尾で口角が上がる魔法の言葉なのです。

そして、富士スピードウェイのオリンピックは終わりを迎える。


さあのんびりしてはいられない、急いで御殿場駅へ向かわねば。
駐車場までの夜道を急ぎ足で移動、荷物を適当にクルマに放り込み発進!

国道246号を南下し道の駅ふじおやまをスルーして順調に御殿場駅に到着。
目的の列車にそこそこ際どく間に合い、大学生は群馬へ向かった。

さて、こちらはこれからのんびり晩飯だが、大学生は飯抜きで帰るのよな、ご苦労様です。

この時間では道の駅も閉まっているので、適当にクルマを走らせて見つけたラーメン屋に入る。

ご飯いらないけど間違えて餃子セット頼んでしまった。2050


ラーメンを美味しく食べ終え、道の駅富士吉田へチェックイン(宿じゃないからな)。
そこでささやかな一人打ち上げ。2212

オリンピックの熱に浮かれた体にハイボールが染み渡る。

翌日の一人旅に想いを馳せつつ夜は更けて行く。

そして旅は続くのです。