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オーナーとのやり取りで私からキツイ言葉を投げた後、その日の接客が終わり、客が帰った事を連絡するとすぐに玄関のインターホンが鳴りました


直接鳴らしてくるのは鍵を持っているオーナー以外にはいない

ドアスコープで確認すると、やはり彼でした

私は沈んだ顔でゆっくりとドアを開けました


「お疲れ様です」

オーナーは閉めたドアを背にして立っていた


彼の顔を直視したくなくて、私は無言で頷きドアから続く廊下の一番奥に後ずさりした

何故オーナーが突然来たのかも勘づいていた


私は言いたい事は山程あったはずなのに、言葉にならず、出て来たのは大粒の涙でした



大人になってから人前で嗚咽するなんて思いもしなかった


オーナーは私とのやり取りで異変を感じて、直接話さなければと思って来たと言いました


客の愚痴についてはこれまでNGの理由以外に言及した事は無かったし、“やめさせる”などという強い言葉も、それまでの私からは出てくる想像もしてなかったと思います


急に愚痴っぽく怒りっぽくなった私を、心配というよりは客に対する意識を改めて欲しいと思ったんでしょう


件の舐め回しクズ客についても、大した事ではないと思っていたに違いありません

だから、「皆さん我慢してるんですよ」なんて言葉が出て来る


「他の人にとっては我慢出来る事でも、私には無理です」

「あの人(舐めクズ)は施術を受けになんて来ていない!」

「私は嫌で嫌でたまらない、本当に嫌な事なの!!」


顔は涙と鼻水と溶けた化粧、眉間にシワを寄せ歪んだ表情、到底見れたもんじゃないし嗚咽しながらだからちゃんと喋れない

でもそんな事はどうでもいい


早く帰らなきゃいけないのに、子どもが待ってる、まだ後片付けも終わってない、何で今なの

頭はぐちゃぐちゃだった


溜め込んでいたものが全部爆発した



「こころさんはうちの大切なセラピストさんだから、辛いならいくらでもお話聞きますから」

「だから俺は今日こうやって来たんです」


…ああそう


「我慢しろだなんて勿論そんな事はないです、無理なお客さんは言ってくれればNGにしますし、……」


無理な客?

ここの99%は無理な客だよ

あんたは会う事もねえし男だから知らねえだろうけど

でも全部NGしてたら客いなくなんだろが


「…、…」


後の話はもうよく聞いていませんでした