一時期ありがた迷惑な客がいた


施術が終わると毎回熟睡している男性

お客様が眠りに落ちることはよくあるのでそれ自体は何の問題もないのだが


起きない



◯◯さん、お疲れさまでした

「……ンゴ〜」


◯◯さーん

「…、…ンゴゴ〜〜…」



普通は眠られていても、ひと言ふた言お声がけすればお客様は目覚めるのだが


何せ起きない



◯◯さーん(トントン)

「ゴ〜…、…」


◯◯さーーん!(ユサユサ)

「…ンゴォ〜〜」


ンゴォ〜〜じゃねえ



◯◯さん起きてー、終わりましたよー(ユッサユッサ)

「……ゴォ〜〜…」


身体を揺らそうが顔をペチペチしようが全く起きない

やっと起きたかと思うと毎回

「トイレ…」


お手洗いに案内すると出てこない

物音もひとつしない


◯◯さーん、大丈夫?

シーン


◯◯さーん!?

何度も呼びかけドアを叩くとやっと出てくる

中で寝てやがった



帰り支度をしてもらおうにも半分寝ていて進まない

冷たいお茶を半ば無理やり飲ませる

肩や背中をポンポンしたり、膝をつついたり

バッグはこれね、忘れ物ないです?


そんな調子なので退室してもらうのに毎回かなりの時間がかかる

この人からの予約は正直有難くなかった



ある日施術後起こしている時に気付いた


彼の顔を見ると上瞼がパチパチと小刻みに開閉している

ごく薄目を開けている時と同じような動き


…コイツ、起きてやがる…



毎回ワザと眠ったフリをしていたのだろう

懸命に声をかけたり身体をトントンしたり、そんな私の様子を楽しんでいたのかも?しれない


ちょっと!起きて!ほらほら!!


私は優しく起こす努力をやめた


ハイ気を付けて帰ってね!じゃ!!


ドアバタン



それから彼は再来していない


もう来なくていいです