吾輩はピピである。
私が逝ってしまって、家族のみんなが悲しんでおるようなのでメッセージを伝える。
そもそも肉体があった頃は声帯の構造が違うから人間の言葉で表現するのは難しかった。しかし今はもう肉体に縛られてないので下僕(進一郎)を使って私の想いを伝えようと思う。
バアちゃん。いつも側にいてくれてありがとう。下僕とめぐちゃんはあまり家にいないので、バアちゃんがいてくれて心強かった。
私は貴方の背中に飛び乗るのが好きだった。
スキを見て背中に飛び乗るとバアちゃんは驚いたあとに嬉しそうな顔をする。
そして、そっとお尻を支えてくれる手。
そんな何気ない日常が好きだった。
あと、病院に一番たくさん連れて行ってくれたね。病院はキライだったが、必要だとは理解していたし、実は病院の行き帰りは結構楽しかったよ。
めぐちゃん。貴方は私にとって母であり、姉のような存在だったな。めぐちゃんは私との接し方というか、距離感のとりかたが絶妙で心地良かった。(その点が下僕はわかっていない。グイグイくるので気持が悪い)
よくソファに座った貴方の膝をジジと取り合ったものだ。
私はもう顔も覚えてないが、母猫の事を思い出すとめぐちゃんの寝床に行ってフミフミする。そうするととても満たされた気持ちになるんだ。足の間で眠るのも好きだったなあ。と言うか、めぐちゃんのことが大好きだったよ。
下僕は....本当にイマイチなヤツやったな〜。
基本的に距離感がつかめてないので、キモいしウザい。まあ、トイレの掃除とかで頑張っていたのは認める。ただやはり、致命的に抱っこが下手やったな。
....でも最後の抱っこ、アレは良かったぞ。
体がラクになったし、すごく気持ちが落ち着いた。家族と別れるのは寂しかったけど、私は自分の生に満足しているし、そのおかげで自分の死を受け入れることができた。
ジジのことはやはり心残りだが、今となってはみんなに託すことしかできない。くれぐれもよろしく頼む。
火葬してもらう前夜、さすがに悲しくて心が乱れてしまったよ。だから嵐のような天候だったはずだ。でも朝にはすっきりした気持ちで天に昇ることができた。
私は星になったのだ。もっと言うと、天空に瞬く星(ほし)であり、この地球(ほし)でもある。肉体はなくなってしまったが私の意識は宇宙に溶け込んだのだ。だからこれからの私はいつも貴方のそばにいるということになる。
バアちゃんが踊りの練習に行っている時は公民館にいるし、めぐちゃんが料理を習っている時は西小倉の料理教室にいる。
下僕がラジコンに行っている時はサーキットで見守っている。物質的には見えないが肉体があった頃以上に貴方のそばにいるのだ。だから悲しむなとは言わないが、少しずつ前を向いてほしい。そして平穏で何気ない日常を大切にしてほしい。そして私のことを忘れないでほしい。
貴方が私のことを忘れない限り、私は貴方のそばにいるよ。 ピピ子
代筆は愚息。