前回までのあらすじ・・・


フランス、ニースのシャガール美術館の学芸員(?)は今日もやる気満々!東洋人なんかにシャガールの良さがわかってたまるかという独自の理論に基づき、SP並みの動きで周囲を翻弄するのであった・・・




シャガール美術館の一室。

何故かシャガールの絵をそっちのけで、フランス人と日本人が対峙していた。


彼は必ず一定の平行線に存在する。

そしてこちらに正面の姿のみを向ける。

二次元か??


まったく手ごわい相手だが目的を達するまでは一歩も引くわけにはいかない。

何か突破口はないかと探しているその時だった。

展示室に1人のおばちゃんが・・・

(あ!おばちゃん。あぶない!)

考えるよりも先におばちゃんは一枚の絵に近づいた。


その瞬間であった。

彼に隙ができた。

2人同時に正面を向け続けるのは不可能だった。

(チャンス!)

シャガールの絵を撮るフリをして素早くシャッターを押した。

ついに捕らえた!

フランス最強の男の横顔。

しかし、おばちゃんとの絶妙のコンビネーションを駆使しても横顔しか撮れなかった。

今回のところは引き分けだ。



シャガール美術館の目玉の一つとしてステンドグラスの部屋がある。

美しい青をベースにしたシャガールデザインの大きなステンドグラスが観れるということで、楽しみにしていたものの1つだ。


ステンドグラスの部屋に足を踏み入れるとそこはコンサートホールになっていて、大勢の観客がいた。

先程までの展示室の人数の10倍以上の人が演奏を聴いている。

ステージではちっちゃな女の子がソロでヴァイオリンを弾いていた。

なんだかすごくうまい。

なかなか居心地が良いので、フランス人気取りで観衆の溶け込んで演奏に耳を傾けることにした。


しばらくキコキコやると大きな拍手。

司会者が出てきてフランス語でもしゃもしゃしゃべった。

彼のもしゃもしゃでホール全体が笑い声に包まれる。

さっぱりわからん。

続いて中等部か高等部の登場ってところだろうか。

上品な感じの女の子が出てきた。

さっきのチビちゃんよりさらに格段にうまい。



ヨーロッパに来てから一番リラックスしている瞬間だ。

シャガールのステンドグラスの部屋で生演奏を聴けるなんて、贅沢だなー。

ステージの照明が明るすぎるけど、ステンドグラスの青は美しい。

フランス的幸福感の一部を感じることができたようなラッキーな偶然だった。




つづく・・・




シャガール美術館から少し歩くとロシア教会がある。

正直、フランスにいたら何でも珍しく感じたけど、ロシア国外でロシアの教会が見られるところは非常に少ないみたいなので立ち寄ることにした。


教会は団地のような住宅街に突然現れる。

てっぺんには例のタマネギのようなやつが乗っていて、なるほどロシアらしい教会だ。

教会としては今まで見たことのない形の建物。

日本ではたまに高速の出口でお目にかかるような形・・・(※注 建物の形としては)

外壁はベースがオレンジっぽく、タマネギあたまが緑だ。

教会としては珍しい色使いだと思うが、考えてみたらフィレンツェのドゥオーモの壁も白基調にオレンジ、緑が使われている。

3色の組み合わせは、日本人から見るとエキゾチックなカラーリングだと思う。



小さな教会だが、中に入るためには入場料がいる。

異国の地でロシアの教会を維持する為には、修繕費用などを入場料でまかなう必要があるのかもしれない。

教会の中は金ピカ。

金色の宗教画がたくさん飾ってある。

イメージはウフィッツィ美術館にあったような金箔のテンペラ画と同じような感じだが、表情、特に目の感じに特徴があるように感じた。

どちらかというと悲しげな印象だ。


教会内は薄暗く、小さめの音量で不思議な音楽が流れている。

外の気候とは違って、教会内は冷たく湿った空気に満たされていた。

どちらかというと、気分的にはちょっと怖いという感じ。

何かミステリアスな感じで、ロシアという国に興味が湧いた。


マルク・シャガールもロシア生まれ。

素人考えだが、シャガールの絵にもロシア的な感性を感じるような気がする。

飛行機からロシアを見た時、広大だけどどこにでも住めるわけではないことがわかった。

厳しい自然の中で育まれた感性から生まれたのは、日本の浮世絵とは違うベクトルで描かれた作品だ。

ロシアに行けば何か自分の中にないものを得られるんじゃないだろうか。

たぶん・・・そんな気がする。



思わぬところで思わぬ思いが芽生えてしまったが、夕方は大通りでお買い物。

スーパーで食品や飲み物を買い、電器屋で3本パックのフィルムを買う。

マンガ売り場には日本のマンガがいっぱい!!

マンガが世界共通語となって有名なんだとは聞いていたけど、予想以上。

フランス人が日本のマンガを立ち読みしている!


考えてみれば自分の今もっている(であろう)正義感とかも子供の頃に読んだマンガの影響が大きいのかもしれない。

楽しいもの、自分が興味を持ってるものからは影響を受けやすい。

逆に興味を持たずに勉強に取り組んでもあまり身にならなかったりする。

そういった意味では日本のマンガが世界を動かしちゃったりもするのだろうか?

ありえなくない話だ。

すごいなあ・・・

一冊手にとってペラペラとめくってみた。




・・・



・・・




読めないぞ!!(日本のマンガなのに・・・)




・・・つづく


早朝。

ホテルのカウンターではフランス人男性がこちらに背中を向けてパソコンをいじっていた。


「ボンジュール」


声をかけるとフランス人が振り返る。

男はジョンレノンがかけていたようなまんまる眼鏡をかけていた。

この丸眼鏡フランスで流行っているのか、パリも含めてフランスでよく見かけた形だ。


「ボンジュー」


軽く挨拶を返すと朝食の準備をしてくれた。

朝食といっても大きめなパンが1個にジャムにバター、それとコーヒー。

なぜかナイフとフォークも付いてくる。


フォークの使いみちはよくわからない。

パンを手で押さえてナイフでパンを切った。

堅いパンにぬるめのコーヒー、朝食はイタリアのほうが良かったな・・・

杏ジャムをつけてパンをかじっていると、さっきの丸めがねが自分のコーヒーを取りにやってきた。

そして笑顔で言う。


「ca va?]



鯖??

よくわかんないけど、「いかが?」ってことか?

なんとも言えない。

自分のボキャブラリーの中で会話として成立しそうな単語といえば「トレビアン」くらいしかなさそうだ。

・・・嫌味にしか聞こえないかもしれない。

パンだけだし・・・汗


仕方ないので、口の中にパンが入っていてしゃべれないというフリをして頷いておいた。

まったく、パンだけで「いかが?」もないもんだ。

パン堅いよ、丸めがね・・・


食堂には誰もいない。

食堂の隅につるされたカーニバルの人形だけがニヤケ顔で見下ろしていた。


結局、このホテルでは2日間の滞在で宿泊客には一度も会わなかった。

1日目も2日目も夜は廊下の電気が消えたまま。

謎のホテルだ。

宿泊客はいたんだろうか?



いくつかの謎を残してチェックアウトすると、まだ外は涼しい。

コートを着ていても暑くないくらいの気候だ。

ニースの次はパリに向かう。

マルセイユまで普通列車で移動して、そこからパリまではTGV(日本の新幹線のような高速列車)だ。


TGVのチケットは既に日本でとってあるけれど、ニース~マルセイユの切符はない。

早朝に出発するのはマルセイユ観光の為。

TGVの時間に合わせたら速い出発だけど、せっかくマルセイユで乗換えなのでちょっと観光したい。

日本から持ってきたトーマスクック時刻表で一本早い列車を調べ、それに乗っていくことにした。


ニースに別れを告げ、いざ港町マルセイユへ!!


マルセイユ一人旅 につづく・・・

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