「旧港」に背を向けて、カヌビエール通り(La Canebiere)という通りをまっすぐ進む。

目指すはロンシャン宮。

左翼がマルセイユ美術館、右翼が自然史博物館となっている左右対称型の宮殿だ。


マルセイユのシンボル、「ノートルダム・ド・ギャルド寺院」など行きたい場所は他にもあるのだが、とにかく時間がない。

「ロンシャン宮」は比較的駅に近いので、どんなところかよくわからないけど行ってみることにした。



「カヌピエール通り」は坂道になっていて、進むほどに上りがきつくなっていく。

それに合わせ人通りもだんだんと少なくなっていき、やがては歩道に1人になった。

「旧港」付近から5分と歩いていないのにすごい人通りの差だ。


ニースの「ロシア教会」の付近でも少し思ったが、人通りの少ない場所は特に犬のフンが多い。

びっくりするくらい多い。

フンを持って帰るという習慣がないのか?

そういえばロココ時代は排泄物は屋外に放流してたというような話も聞く。

道にあっても気にしないのだろうか?

フランスに対するイメージがちょっと崩れる。



ロンシャン宮に到着。

大きくて立派な建物だ。

中心には彫像があってそこから水が流れている。

ローマで見たトレヴィの泉を思い出した。


中心と両側の建物とはパルテノン宮殿のような円柱が建つ回廊でつながっている。

短いけど、回廊を歩くとなんかえらくなった気分。

貴族歩きとモデル歩きで2往復した。


美術館にはプロヴァンス地方で活躍した画家の作品等が展示されている。

見ていきたいところだけれど、列車の時刻が迫ってきた。

もう、モデル歩きをしてる時間もあまりない。

モデル歩きは出入り口のところでやめて、あとは駅に向かって早足で歩いた。




いよいよパリだ。

パリへの憧れは以前からあったのだが、言葉の問題もあり行けずにいた。

楽しみで心が躍る。


足取りは早足からいつの間にかスキップ気味になっていた。

それは、もうすぐパリへ行けるという喜びの気持ち、そして犬のフンを踏みたくないという一心からのことであった。



つづく・・・

ニースに着いてから、もう30分以上の時間が過ぎていた。

ホテルが見つからない。

大きな荷物をゴロゴロと引きずりながら歩くのは通常時の10倍以上疲れる。

先程までの列車の中での楽しかった時間が既に懐かしかった。

「あー、心細いなぁ・・・」

・・・半べそだった。


そもそもよろしくないのはガイドブックだ!

フランスのガイドブックというとパリのことばっかりで、他の地域のページなんかだいたい1ページづつくらい。

パリの地図は別冊付録なのに、ニースの地図のサイズなんかPASMOより小さいじゃないか。

駅前には目印になるようなもんはないように感じるし・・・

「やな感じー!」

と、そんなこと言っていても仕方ないので、誰かに道を聞くしかない。



フランス人は意地悪!そんな噂は昔から聞かされてきた。

(英語で質問すると分かってるくせにフランス語で返してくる。)

その噂とフランス語のとっつきにくさは、今までフランスに来ることをためらわせた原因のひとつだった。

「やだなぁ~・・・」

フランスの指差し会話帳をペラペラめくりながら思った。


日は沈み始めている。

暗くなる前にホテルに着かないとさらに面倒なので、暇そうなじいさんを捕まえてフランス語で話しかけた。

指差し会話帳とホテルの地図を持って「この場所に行きたい」と伝えたので、こちらの意思は通じたようである。

しかし、困ったことに相手の言ってることはさっぱり分からなかった。

会話帳があればしゃべれると思ってたけど・・・

うっかりしてたー!!



じいさんの顔を見ながら口が半開きになっていたかもしれない。

どうやらじいさんはこちらの表情から「ぽかーん」という擬音を感じ取ってくれたみたいだ。

「おまえ、英語分かるか?」

「あ、ちょ、ちょっとだけ・・・」

「ちょっとだけか!?」


英語で話してくれてるじゃん。

話が違うじゃん。

意地悪どころか、じいさんは地図を指差しながら熱心に説明し続けた。

最初の10秒くらいの説明で知りたいことは大体分かったけど、説明し続けた。

そのうち迎えの人が来て早くするように催促し始めたけど、さらに説明し続けた。

(もう、いいって言ってんのになー・・・。)

フランス人って親切なんじゃないか??



じいさんと別れた後、線路を挟んで逆側、駅の反対側に行った。

電車を降りたすぐ後に出た場所だ。

元の場所に戻ったのだ。

その場所には30分以上も迷わされた一番の原因が立っていた。


駅前の案内地図!

わざわざ立ち位置から見える方向とは反対方向を上にしやがって!!

そうかとも思ったけど、ただ上が北だったんだな・・・

地図の上が前方かと思ってまるっきり反対方向へ進んでいたのであった汗

お粗末。


つづく・・・

ホテルは駅のすぐそばだった。

名前はHotel Saint Gothard (ホテル サン ゴター)。

フロントの前には大きな人形が置いてある。

ニースでは2月に世界的に有名なカーニバルが行なわれる。

そのときに使う人形のようだ。



チェックインを済ませて部屋に向かう。

旧式のエレベーターを降りると、廊下は真っ暗だった。

ホテルは衛生的だし、部屋もたくさんあるようだった。

わざと電気を消しているんだろうか?

たまたま電気が消えてるんだろうか?

わからない。

わからないけど、鍵穴を探すのにも苦労したのは初めてだった。



部屋の中は全体的に白がベース。

濃いオレンジやペパーミントグリーンなども使われている。

シーツは青と黄色のチェックだ。

この色使いがフランスっぽい。

バスルームのアメニティの石鹸の箱もペパーミントグリーンとオレンジ。

オレンジ色の珊瑚の絵が描かれていてとてもキレイなデザインだ。


窓の外を見ると隣のレストランのオープンテラスの屋根が見えた。

ビニール張りで、オレンジとダークブラウンのストライプ。

その下ではフランス人の女性が携帯を片手に佇んでいた。

待ち合わせだろうか?

さすがに絵になる。


どちらがいいというわけではないけど、部屋の中にいるだけでも昨日までいたイタリアと今いるフランスの違いを感じられた。

イタリアとフランスはカラーが違っていた。



その部屋はとても静かだ。

ホテルは車が走る道路から離れている。

夜になれば人通りもあまり多くない。

誰かが廊下を歩いているような音、同じ階で扉が開けられた音などはまったくしない。


他に宿泊客はいるのだろうか?

人の気配がまったく感じられなかった。

窓を閉めて電気を消すと、まったくの無音状態になった。

冷蔵庫などの機械音もまるで聞こえなかった。

廊下からの光もないので部屋は真っ暗。

まったくのプライベート空間だ。


この場所では誰も自分のことを知らない。

肩書きも関係ない。

言葉も通じない。


リラックスする反面、寂しい感じもした。

日本国内では感じたことのない孤独だった。

孤独ってこういうことか?

そう感じたのと同時に、どんなときも1人じゃなかったんだということを改めて認識した。




つづく・・・




ニースのシャンプーと石鹸

ホテルのアメニティー石鹸とシャンプーです

デザインが気に入ったのでもって帰ってきちゃった!